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薬師シャルロット

なつめ猫

エスケープ・プリンセス(1)

「……でも、彼は魔族なのよ? 人だけでなくエルフやドワーフ、獣人などとも敵対しているのよ?」
「それでも!」

 私は、否定的な意味合いを込めて頭を振るう。
 お母さまの言いたいことは分かる。
 私が何の身分もない王族でもない普通の一般市民である身分なら問題はないのかもしれない。
 でも、私は国を治める王家の第一位王位継承権を持つ王女であり、多くの種族との問題を抱えている魔族の国と仲良くすれば、それは他国への不信感へと繋がり将来的に必ずしもプラスにはならない。

「シャルロット」

 お母さまは、座ると私と目線を合わせてから頭を撫でてくる。
 私の名前を呼んだ声色には、戸惑いの色合いが含まれているように見えた。

「貴女が、魔王に惹かれていたのは見ていて分かったわ。だからこそ、貴女の魔術指導を彼にはしてほしくなったし、彼から提案があっと時も一度、断ったの。でも、貴女の魔術は、この世界の在り方を利用する魔術とは異なったの。だから、魔王に任せたのだけど……」

 お母さまは多くの言葉を私に投げ掛けてくるけど、その中の大半は私の頭を素通りしていく。
 私が魔王さんに惹かれている?
 そんなこと……あるわけが……。

「大丈夫?」
「だ、だいじょーぶ」

 両手を頬に当てる。
 頬が真っ赤に火照っているような気が。

 お母さまが心配して私を見てくる。
 どうして、そんなに顔で私を見てくるのか……。

「どうしたの?」
「ううん、何でもないのよ? あら? シャルロットは、私の話をきちんと聞いていたのかしら?」
「……うん! 聞いていたよ!」

 私が魔王さんに惹かれているという会話だよね。
 ……私は、私はどうしたいのだろう。
 どうしても答えがでない。
 私の立場からしたら、魔王さんと仲良くしたらいけないのは分かる。
 だけど……。
 怪我を治してあげたいけど、魔王さんはやらなくていいって、寿命が縮むからって言っていた。
 考え込んでいると、王宮薬師のエンハーサさんが息を切らせて走ってきた。

「王妃様! こんな所にいたのですか?」
「あら? 見つかってしまったわね」
「――え?」

 いま、お母さまは何と?

「ハァハァハァ。いくら回復の魔術でお目覚めになられたと言っても、体への負担はあるのですから――」

 私は、息せき切らせているエンハーサに「そうなの?」と、問いかける、

「はい、いくら回復の魔術が万能で御座いましても、体力までは回復いたしませんので……」
「そういえば……」

 お母さまに回復の魔術をかけて命は取り留めたけど、殆ど部屋から出た姿を見たことがない。
 もう、8年以上経つのに、いまだに体力が回復していないということは……。
 回復の魔術は万能でもない?
 ううん、体力も回復するように想像すれば……想像すれば……。
 体力って何?
 肉体を蘇生するのとまた違うの?
 うーん……。

「……そこで、体に良き薬草を処方しているのです」
「そうなの……」

 ……まったく知らなかった。

 いつも、お母さまは私に優しくしてくれるのに。
 いつも、お母さまは私を気にしてくれるのに。

 私は、いつも自分の事ばかりで、自分の事だけで手一杯で、そこまで気が回っていなかった。
 魔王さんが居ないなら、少しでもお母さまに元気になってもらいたい。

「エンハーサ、私にも手伝いをさせてほしいの!」
「シャルロット様!?」

 エンハーサが私の言葉に、驚いていたけど。
 どうせ、魔術の練習もない。
 だから――。

 お母さまの薬作成を手伝いたい。




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コメント

  • コーブ

    成る程!!此れが薬師への分岐点な訳ね~♪フムフム

    0
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