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薬師シャルロット

なつめ猫

攻撃魔術がつかえない!?(後編)

「どうかしたのか?」

 私が、頬を膨らませて不機嫌そうにしていると魔王さんが、私を見下ろしながら話かけてきた。

「なんでもないです!」

 町の様子とか色々と見られると思っていただけに、少しだけお怒りモードです!
 そして、魔王さんは手を繋いでいないもう一方の手で自分の頭を掻いて困っている様子。
 前々から薄々と感じていたけど……。
 魔王さんって女心が良く分かってない?
 私は小さく溜息をつく。
 これは一度、確認しておく必要があるかもしれない。

「魔王さん、ちょっと質問があります!」
「質問? ふむ……。答えられる範囲でよいなら何でも答えよう」

 何でも答えようと言っているわりには、答えられる範囲とつけているのは矛盾しているのでは? と思わず突っ込みを入れたくなったけど、それは後に取っておくことにしようっと。

「魔王さんは、奥さんとかいるのですか?」
「――ん? どうしたというのだ。急に、そんな話を持ち出してきて……」
「魔王さんは、奥さんとかいるのですか?」
「…………」
「魔王さんは、奥さんとか――」
「分かった、わかった。妻はいないぞ? 何度も聞くこと重要なことなのか?」
「はい! かなり重要です!」

 私は元気よく答える。
 なるほど、つまり魔王さんには妻はいないと――。
 だから女性への配慮が足りないと。

「次の質問です! 彼女さんとかはいるのですか? 付き合っている異性とか! 魔王さんってすごい良物件ですよね? 魔王さんですし!」
「魔王の何が良物件かは知らないが、魔王になってから千年近くになるが、異性と付き合ったことはないな――」
「ふむ……」

 なるほど、つまり魔王さんは、魔王さんであり、つまりはどーてーって奴ですか。

「つまり、一度も異性と付き合ったことがなくて、男性としては不能だということですか?」
「言っている言葉の意味はよく分からんが、男だぞ?」
「そう言った意味ではないのですけどね」

 なるほど……。
 だいたいの魔王さんの遍歴は理解した。
 つまり魔王さんは千年間彼女がいない童貞さんであり、女性への対応が上手くできない朴念仁ということ。

「あれ? 魔王軍って女性はいないのですか?」
「居る訳がないであろう? 人間の国では女騎士や女魔術師などと言うものが軍に居るらしいが。体の作りが男とは違うし、何より女特有の問題もあると報告は受けている。そんな不確定な状況下で、無理な行軍がある軍事に参加させるなど、愚行も良いところだろう?」
「――そうなのですか……」

 あれ? 思ったより魔王軍の仕事の内容でホワイトだったりする?

「さて、そろそろ攻撃魔術の修練を行うぞ?」
「あ、はい……」

 魔王さんが、私から離れると前方を指差した。

「この8年以上、魔術の行使に必要なのは全部教えたが、覚えておるか?」
「はい。魔術発動に必要なのは、魔術発動時の明確なイメージ。つまり構成と、その結果で得られる魔術結果を明確に描けるかどうかです!」
「うむ――。それでは……」

 魔王さんは、指差した先に土で作られた人形を生み出す。

「クリエイト・ゴーレム……」

 私は、目の前に生み出されたゴーレムを見ながら言葉を紡ぐ。
 すると魔王さんは頷きながら。

「うむ。それでは、ここからが問題だ。攻撃魔術を発動させるためには対象を如何にして破壊するか、捕縛するかを想像しなければならない。分かるな?」
「はい――」

 魔王さんは、私が返事したことに気がつくと、手から巨大な火の球を生み出し、魔王さん自身が作り出したゴーレムを焼き尽くしていき、ただの土くれに変える。

「さて、私が今なにを思ったのか分かるか?」

 私は頷く。

「土に含まれていた粘度を炎の魔術で焼き尽くして結合力を弱めた……そうですよね?」
「ふむ……、私は土で作ったゴーレムを焼くことで強度を落とそうと考えていたのだが……まぁ、よい。お主は、幼き頃から時折、千年生きてきた我でも知らぬ言葉を口にする。いまだに汝の真価が我には測り知れぬ」

 魔王さんの言葉に、私はドキッとしながらも表情を変えることはしない。
 ここで下手なことを言えば、また面倒なことになりそうな気がしてならないから。

「さて――」

 小さく呟きながら魔王さんは、先ほどと同じようにクリエイト・ゴーレムの魔術を使い2メートルほどのゴーレムを作りだした。 

「やってみよ」
「はい!」

 まずは、魔術を発動させるための想像をする。
 火というのは、可燃物を燃やす結果であり、そこに必要なのは燃焼に必要な物質と、その物質を燃やすための燃料。
 つまり、ガソリンを燃やす行為、その物が燃焼に必要な物質。
 そして酸素こそが物質を燃やすための燃料。
 そこさえ抑えておけば――。

 右手を頭上に掲げる。
 そして、イメージどおり巨大な炎の球を作りだす。
 頭上を見上げると、直径3メートルほどの紅色の炎が生み出されていた。
 あとは、これをゴーレムに当てるイメージを描き放つだけ!

 頭の中で、ゴーレムが焼き尽くされていき粉々になるイメージを……。
 そこで、頭の中でお父さまに腕を刺されたイメージが思い浮かぶ。

「――あ、あれ……?」

 次々と、虐待されていた記憶がフィードバックしてきて……。
 頭が痛い……。
 割れるほど……、頭が……。

「いやっ……。いやっ……。いやあああああああああ」

 恐怖が、痛みが、悲しみが一気に心の中に広がっていき――。

「シャルロット!」

 魔王さんが慌てた様子で、私の腕を掴むと同時に引き寄せて抱きしめる。
 そして私の体に結界の魔術を展開すると、同時に上空の紅の炎の塊が、私目掛けて着弾し、炎は魔王さんごと焼き尽くしていく。

「魔王さん!」
「だ、大丈夫だ。それよりも、これは……くっ――」

 炎が消えると同時に、魔王さんは片膝をついてしまう。

「まさか、これほどの威力があるとは――。だが、これでは……」

 煙が散っていくと同時に、ガラスが割れる音が――結界が砕けた音が聞こえてくる。
 それと同時に、嗅いだことの無いような嫌な匂いが漂ってくる。
 ようやく魔王さんの姿が、きちんと見えるようになった途端、私は「ヒッ!」と小さく呟きながら一歩下がってしまった。

「魔王さん、その姿は……」
「気にすることはない。咄嗟とは言え、我のマントを焼くとは中々であったぞ?」
「――で、でも……」

 魔王さんの姿は、体中、炎の魔術を受けた影響で焼け爛れていて。
 それは、全部、私が魔術を失敗したからで……。

「この程度の傷、1年もあれば完治する。問題ない」
「――で、でも……」

 私は、回復魔術を発動させようとすると、魔王さんは、私の腕を握り締めてきた。

「人間の短い命を使うことはない。これは我の不注意である。言ったであろう? 部下の失態は上司の責任だと。我は汝の国を仮初とは言え治めている王であるぞ? その王が部下の失態を部下に取らせるなど、笑い話にもならんわ」

 魔王さんは、威厳のある言葉で私を諭してくると。

「とりあえずは、汝は心の傷が癒えなければ攻撃魔術を使うことは叶わぬであろう。今回は、そのことが分かっただけで良かったではないか?」
「……ごめんなさい……」
「よい、我が許す。この話はこれで終わりである。これからは身を守るためには武術や剣を習った方が良いのかも知れぬ」

 私は魔王さんの言葉に頷くことしかできなかった……。


 

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コメント

  • コーブ

    ここでトラウマ参上!!強敵だぜ(>_<)

    0
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