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薬師シャルロット

なつめ猫

揺れ動く動乱(3)

「それで、どうすればいいのでしょうか?」 

 メロウやクレイクにされていたことを思い出して体を震わせていた私を、やさしく抱きしめながらお母さんが、魔王さんに語りかけている。
 すると、彼は顎に手を当てながら、「ふむ……。とりあえずは、茶番を演じるのが良いのかも知れぬな」と、答えていた。
 お母さんは魔王さんの言葉に「茶番ですか?」と、聞き返した。
 魔王さんは、小さく頷くと。

「うむ。外部の圧力、各国の軍隊については、我が魔王軍が何とかすることは可能だ。ただ、問題は内部からの切り崩しだな」

 お母さんは、魔王さんの言葉に小さく溜息をつくと「そうですね」と小さく溜息をついていた。
 私は、この世界の貴族としての知識が乏しい。
 きっと、長く異世界で王族として暮らしてきたお母さんには、私が知りえない多くの知識があるのだろう。

「そうね――。クレイクが抑えていた貴族が反乱を企てるかも知れないわね」
「そうであろう? 貴族と言うのは自分勝手な生き物であるからな。治世が安定しているときならば牙を見せぬだろうが、大事な時に国王が不在となれば牙も剥くかも知れん」

 私は、二人の話を聞きながら信じられない気持ちでいっぱいで……。
 自分が暮らしてきた国が大変な状態なのに……。
 それなのに、反乱を企てるなんて信じられなかった。

「ふむ……。そこの王女よ。汝は、この世界の貴族がどういったものか理解してはおらぬようだな? その幼少では仕方ないのかも知れぬが……。それにしても――」

 魔王さんは、そこまで話をしたところで一瞬、考えた素振りを見せると私の方へと視線を向けてきた。

「よく聞くがよい。現在、汝の父親である国王は国同士の取り決めを破っているどころか、自分の妻と娘を国のため、自分のために奴隷として使おうとしていたのだ。そして、そのことを国民と、他国の人間が知ってしまった。ここまではよいな?」

 私は、魔王さんの言葉に頷く。
 それは、知っているけど……。

「そして、回復魔術というのは実用レベルで使える人間が汝と王妃、聖女だけに限られている。そして人間というのは病に伏せる存在である。つまり……汝と王妃を手に入れるために大国は軍隊を動かす可能性があるということだ」
「私のために?」
「そうだ。それに……普段は他国を侵略するにも大義名分が必要であるが……」
「あるが?」
「我がここにいる……」
「魔王さんが……」

 そこまで言われたところで、ようやく私は理解した。
 つまり、魔王さんが言いたいことは……。

「合点がいったようで何よりだ。我を討伐するために、周辺諸国は軍を侵攻させることが出来るのだ。それも、我を倒すという大義名分を掲げてな。中身は、おそらく汝とルアル王妃を手にいれるためだろうがな」
「そんな……」

 私は、体を縮こませる。
 いくら、18歳の精神が支柱にあると言っても、何ヶ月も虐待を受け続けてきた恐怖と絶望は、早々に消えるものではない。
 記憶は、恐怖として痛みとして時折思い出すかのように鮮明に浮かび上がってくる。

 体を震わせていると、魔王さんが近づいてきて、片膝をついて私の左手をやさしく取ると、手の甲に接吻してきた。

「気に病むことはない。この魔王が汝と王妃を必ず守り抜いてみせよう」
「……ま、まおうさん……」

 彼は私に笑いかけてくる。
 その笑みに、心臓の鼓動が少し早くなった気がした。 
 そして、彼は立ち上がると。

「そこでだ! この問題を打開する方法が一つだけある」
「一つだけ?」

 私は、魔王さんの言葉を復唱してしまう。

「うむ。表面的にクレベルト王国は魔王領に編入させてもらおう。さすれば、実質的には我が、この国の支配者となるわけだ。さすがに魔王たる我に反旗を翻す愚か者はおるまい! いれば粛清対象にすればいいのだからな」
「そうですか……」
「そう悲観する必要もあるまい。あくまでも表面的であるからな。我が表に立ち汝らを守ろう。国の基礎が出来るまでは我が矢面に立ち、基礎が出来上がった暁には、アレスが我を追い出すような形にすれば、問題なく支配体制の移行が出来るであろう。ただ、問題はルアル王妃と、シャルロット王女の回復魔法の件であるが、さて、どうしたものか……」




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