薬師シャルロット
薬師シャルロット(2)メロウside
「ねえ? メロウ、このかいふくのまじゅつって?」
わたしの前でベッドに腰を下ろし見上げながら聞いてくるシャルロットを見て、私は心の中で舌打ちしながら溜息をつく。
そして、笑顔をシャルロットに見せながら。
「よいですか? 回復魔術と言うのは他の魔術と同じで、なにが起きるかを想像し、その痛みを引き受けることを考えて魔法を発動するのです。王妃様が、シャルロット様に使われた魔術は、肉体の蘇生と魔術です」
「にくたいのそせー? にくたいのそせーってなにー?」
退幼香が効き過ぎたからなのか、最近では幼子のような話し方に変わってしまい、思考までも低下しているシャルロットに苛立ちを覚えた。
「痛いっ!」
気がつけば、シャルロットを私は平手打ちしていた。
思わず手が出てしまったことに動揺しながらも、自分は悪くないと考えた。
そもそも、未来の王妃になる私がどうして、こんなゴミみたいな出来損ないに時間を費やさないといけないのか。
クレイクも私ではなく、他の人間にやらせればいいものを……。
「シャルロット様? 何でも人に聞くからいけないのですよ?」
「――うう……うぇぇぇぇえぇん」
幼児まで思考が低下しているのか、私が語った言葉を、この子はまったく理解してくれていない。
本当の使えない!
私は、シャルロットの髪の毛を掴むと床に押し付ける。
「よいですか? あなたは何も疑問に持つことは許されないです。私とクレイクのためだけに生きていればよいのです。わかりましたか?」
「痛い、痛いよ! 離して! ごめんなさい、ごめんなさい」
はぁ……。
本当に、こんな出来損ないの調教など私がやる必要があるのでしょうか?
クレイクも今日、戻ってくると言っていましたが……。
私が目の前で、自分の体を必死に守ろうとして体を丸めて泣いているシャルロットを見下ろす。
あの女――ルアルの娘であるシャルロット。
幼い頃から得体の知れない子供ではあった。
どこか達観としていた印象を持つ娘。
私をどこかで見下すように見ていた子供らしからぬ子供。
それと比べれば、今の泣いている姿の方がよほど子供らしい。
「よいですか? 今、シャルロット様は、悪いことをしたから叱られたのです」
「……わりゅいこと……?」
目の前の、シャルロットは大きな黒い瞳に涙を溜めてポロポロと零しながら両手で涙を拭きながら私に問いかけてくる。
「そうです。私が肉体の蘇生と言ったら、肉体蘇生で覚えるんです。それ以上でも、それ以下でもありません。わかりましたか?」
「――で、でも……よくわかんないから……いたいっ!」
私は、シャルロットの言葉を最後まで聞かずに平手打ちをする。
白いカーペットに赤い血が飛び散るのが目に入った。
どうやら、口の中を切ってしまったようで、鼻血も出している。
「本当に、出来損ないですね。誰が掃除をすると思っているんですか? 貴女は何も考えずに、ただ黙って私とクレイクの話だけを、馬鹿正直に聞いて従っていればいいんです」
シャルロットの髪の毛を掴むと彼女を持ち上げる。
「ふぇぇぇ。いたいよぉ……やめてよ。メロウ」
頬を叩く音が部屋の中に鳴り響いた。
その音が私の鼓膜を揺さぶりハッと気がつく。
「メロウ? あの女の娘なんかに……私の名前を呼び捨てに――」
苛立ちのあまり、両手でシャルロットの首を絞めていた。
彼女の抵抗が弱くなり抵抗しなくなってから私はすかさず指先から力を抜く。
「いけない。この子はルアルの予備なのだから殺したらクレイクに怒られるわ。きちんと調教してお人形にしないと……」
私は、意識を失ったシャルロットをベッドに寝かせると、退幼香を焚いて回復魔術の使い方をセットした魔道具を枕元に置き起動したあと、部屋から出た。
塔を降りていき、木製のドアを開けるとアレスが私の方へ視線を向けてくる。
「シャルロット様の容態はどうだ?」
彼は、小さい頃からシャルロットの警護をしていたからなのか、いつも心配そうな表情をしている。
「大丈夫よ。王妃様と国王陛下の血を引いているのだもの。私たちが心配することはないわ」
「そうか……。それは、良かった。何かあればすぐに俺に知らせてくれよ?」
「ええ、もちろんよ」
私はアレスの言葉に頷き、塔を後にした。
国王陛下が、大森林国アルフから、お戻りになられたのは、それから数時間後。
私は、すぐに国王陛下の部屋へと向かった。
「これは、メロウ殿。こんな夜分にどのようなご用件が?」
国王陛下がいる部屋の前に通じる通路には、4人ほどの近衛兵が立っている。
その者たちは私と国王陛下の関係を知らない。
「シャルロット様の容態についてのご報告よ。クレイク国王陛下もシャルロット様のご容態については、お気にかけていらっしゃると思って――」
「そうでしたか! メロウ殿は職務外であっても、そこまでシャルロット様の事を……」
「ええ、もちろんです。シャルロット様は、私にとっても大事なものですから」
私は、笑顔を作りながら道をあけた近衛兵の間を通って、国王陛下の部屋に通じる通路を歩く。
「まったく、私を誰だと思っているのよ。私は大森林国の――」
国王陛下の部屋扉前に立つと、私は何度か扉をノックした。
「誰だ?」
部屋の中から、クレイクの声が聞こえてくる。
「メロウよ」
「入れ」
クレイクの声を聞いた私は部屋の中に入る。
そこには裸でベッドの上に座っているクレイクが居た。
「めずらしいな、こんな時間にくるなど……何か問題でも起きたのか?」
「ええ、シャルロットのことだけど。王妃と同じに隷属の指輪を使わない? 一々、質問してきて苛立つのよね」
「そんなに退幼香が効いているのか?」
「効き過ぎくらいね」
私は、肩を竦めながら言葉を紡ぐ。
「そうか……。隷属の指輪は希少なのだが致し方ないな……」
「それと、帝政国との婚約の話だけど……」
「それなら、向こうからもハイエルフの血を引いているのは希少だから、ぜひといい条件を提示されているのだが?」
「それだけど……ね……。シャルロットだけどルアルから回復の魔術が使えるって言われたらしいのよ?」
「それは、本当か?」
「ええ、間違いないわ」
私の言葉にクレイクは笑みを浮かべる。
「そうか! そうか! 実験は成功していたのか!」
クレイクは上機嫌で自分の膝を叩くと私へ熱い視線を送ってきた。
「それなら帝政国に嫁がせるよりも、回復魔術師として利用した方が価値があるな」
「ええ、それと……」
「分かっている。回復の魔術師は短命だからな。ルアルは、もう使い物にはならないが……」
クレイクが私の手を掴むと引っ張りベッドの中へと誘ってくる。
「そうだな――。回復の魔術が受け継がれるとは思わなかったが……シャルロットも子が成せる年になったら……」
「実の娘を? 酷い人ね」
「お前が、それを言うのか?」
彼が私の衣服を脱がせていく。
「それよりも、どこまで調教は進んで……」
私はクレイクの唇に人差し指を当てる。
「必要ないわ、だって……帝政国に嫁がせる必要なんてないんですもの。隷属の指輪を使って人格を封印してお人形にすれば問題ないでしょう?」
「たしかにそうだな――なら、本当に回復の魔術が使えるかどうかルアルで実験をさせてみるか? 成功すれば母娘揃って回復の魔術師ということで使えるからな」
「それは、いい案ね!」
私は、クレイクの唇にキスをしながら言葉を返した。
わたしの前でベッドに腰を下ろし見上げながら聞いてくるシャルロットを見て、私は心の中で舌打ちしながら溜息をつく。
そして、笑顔をシャルロットに見せながら。
「よいですか? 回復魔術と言うのは他の魔術と同じで、なにが起きるかを想像し、その痛みを引き受けることを考えて魔法を発動するのです。王妃様が、シャルロット様に使われた魔術は、肉体の蘇生と魔術です」
「にくたいのそせー? にくたいのそせーってなにー?」
退幼香が効き過ぎたからなのか、最近では幼子のような話し方に変わってしまい、思考までも低下しているシャルロットに苛立ちを覚えた。
「痛いっ!」
気がつけば、シャルロットを私は平手打ちしていた。
思わず手が出てしまったことに動揺しながらも、自分は悪くないと考えた。
そもそも、未来の王妃になる私がどうして、こんなゴミみたいな出来損ないに時間を費やさないといけないのか。
クレイクも私ではなく、他の人間にやらせればいいものを……。
「シャルロット様? 何でも人に聞くからいけないのですよ?」
「――うう……うぇぇぇぇえぇん」
幼児まで思考が低下しているのか、私が語った言葉を、この子はまったく理解してくれていない。
本当の使えない!
私は、シャルロットの髪の毛を掴むと床に押し付ける。
「よいですか? あなたは何も疑問に持つことは許されないです。私とクレイクのためだけに生きていればよいのです。わかりましたか?」
「痛い、痛いよ! 離して! ごめんなさい、ごめんなさい」
はぁ……。
本当に、こんな出来損ないの調教など私がやる必要があるのでしょうか?
クレイクも今日、戻ってくると言っていましたが……。
私が目の前で、自分の体を必死に守ろうとして体を丸めて泣いているシャルロットを見下ろす。
あの女――ルアルの娘であるシャルロット。
幼い頃から得体の知れない子供ではあった。
どこか達観としていた印象を持つ娘。
私をどこかで見下すように見ていた子供らしからぬ子供。
それと比べれば、今の泣いている姿の方がよほど子供らしい。
「よいですか? 今、シャルロット様は、悪いことをしたから叱られたのです」
「……わりゅいこと……?」
目の前の、シャルロットは大きな黒い瞳に涙を溜めてポロポロと零しながら両手で涙を拭きながら私に問いかけてくる。
「そうです。私が肉体の蘇生と言ったら、肉体蘇生で覚えるんです。それ以上でも、それ以下でもありません。わかりましたか?」
「――で、でも……よくわかんないから……いたいっ!」
私は、シャルロットの言葉を最後まで聞かずに平手打ちをする。
白いカーペットに赤い血が飛び散るのが目に入った。
どうやら、口の中を切ってしまったようで、鼻血も出している。
「本当に、出来損ないですね。誰が掃除をすると思っているんですか? 貴女は何も考えずに、ただ黙って私とクレイクの話だけを、馬鹿正直に聞いて従っていればいいんです」
シャルロットの髪の毛を掴むと彼女を持ち上げる。
「ふぇぇぇ。いたいよぉ……やめてよ。メロウ」
頬を叩く音が部屋の中に鳴り響いた。
その音が私の鼓膜を揺さぶりハッと気がつく。
「メロウ? あの女の娘なんかに……私の名前を呼び捨てに――」
苛立ちのあまり、両手でシャルロットの首を絞めていた。
彼女の抵抗が弱くなり抵抗しなくなってから私はすかさず指先から力を抜く。
「いけない。この子はルアルの予備なのだから殺したらクレイクに怒られるわ。きちんと調教してお人形にしないと……」
私は、意識を失ったシャルロットをベッドに寝かせると、退幼香を焚いて回復魔術の使い方をセットした魔道具を枕元に置き起動したあと、部屋から出た。
塔を降りていき、木製のドアを開けるとアレスが私の方へ視線を向けてくる。
「シャルロット様の容態はどうだ?」
彼は、小さい頃からシャルロットの警護をしていたからなのか、いつも心配そうな表情をしている。
「大丈夫よ。王妃様と国王陛下の血を引いているのだもの。私たちが心配することはないわ」
「そうか……。それは、良かった。何かあればすぐに俺に知らせてくれよ?」
「ええ、もちろんよ」
私はアレスの言葉に頷き、塔を後にした。
国王陛下が、大森林国アルフから、お戻りになられたのは、それから数時間後。
私は、すぐに国王陛下の部屋へと向かった。
「これは、メロウ殿。こんな夜分にどのようなご用件が?」
国王陛下がいる部屋の前に通じる通路には、4人ほどの近衛兵が立っている。
その者たちは私と国王陛下の関係を知らない。
「シャルロット様の容態についてのご報告よ。クレイク国王陛下もシャルロット様のご容態については、お気にかけていらっしゃると思って――」
「そうでしたか! メロウ殿は職務外であっても、そこまでシャルロット様の事を……」
「ええ、もちろんです。シャルロット様は、私にとっても大事なものですから」
私は、笑顔を作りながら道をあけた近衛兵の間を通って、国王陛下の部屋に通じる通路を歩く。
「まったく、私を誰だと思っているのよ。私は大森林国の――」
国王陛下の部屋扉前に立つと、私は何度か扉をノックした。
「誰だ?」
部屋の中から、クレイクの声が聞こえてくる。
「メロウよ」
「入れ」
クレイクの声を聞いた私は部屋の中に入る。
そこには裸でベッドの上に座っているクレイクが居た。
「めずらしいな、こんな時間にくるなど……何か問題でも起きたのか?」
「ええ、シャルロットのことだけど。王妃と同じに隷属の指輪を使わない? 一々、質問してきて苛立つのよね」
「そんなに退幼香が効いているのか?」
「効き過ぎくらいね」
私は、肩を竦めながら言葉を紡ぐ。
「そうか……。隷属の指輪は希少なのだが致し方ないな……」
「それと、帝政国との婚約の話だけど……」
「それなら、向こうからもハイエルフの血を引いているのは希少だから、ぜひといい条件を提示されているのだが?」
「それだけど……ね……。シャルロットだけどルアルから回復の魔術が使えるって言われたらしいのよ?」
「それは、本当か?」
「ええ、間違いないわ」
私の言葉にクレイクは笑みを浮かべる。
「そうか! そうか! 実験は成功していたのか!」
クレイクは上機嫌で自分の膝を叩くと私へ熱い視線を送ってきた。
「それなら帝政国に嫁がせるよりも、回復魔術師として利用した方が価値があるな」
「ええ、それと……」
「分かっている。回復の魔術師は短命だからな。ルアルは、もう使い物にはならないが……」
クレイクが私の手を掴むと引っ張りベッドの中へと誘ってくる。
「そうだな――。回復の魔術が受け継がれるとは思わなかったが……シャルロットも子が成せる年になったら……」
「実の娘を? 酷い人ね」
「お前が、それを言うのか?」
彼が私の衣服を脱がせていく。
「それよりも、どこまで調教は進んで……」
私はクレイクの唇に人差し指を当てる。
「必要ないわ、だって……帝政国に嫁がせる必要なんてないんですもの。隷属の指輪を使って人格を封印してお人形にすれば問題ないでしょう?」
「たしかにそうだな――なら、本当に回復の魔術が使えるかどうかルアルで実験をさせてみるか? 成功すれば母娘揃って回復の魔術師ということで使えるからな」
「それは、いい案ね!」
私は、クレイクの唇にキスをしながら言葉を返した。
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