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薬師シャルロット

なつめ猫

国王陛下からのプレゼント

 こっくりこっくりと頭を前後に揺らしながら、私は食事を取っている。
 とっても眠い……。
 夢うつつのまま、毎日が過ぎていく。

「シャルロット様、大丈夫でございますか?」
「――ん……。大丈夫です」

 私は半分寝ながらメロウさんの言葉に答える。

「最近は、陽射しも柔らかく眠りを誘う季節ですから、眠くなられましたら、寝られて大丈夫ですよ?」

 メロウさんの言葉に私は否定的な意味合いを込めて頭を振るう。
 今日こそは魔術の修行をしようと決めたのだ。
 だから――。

「そうそう、シャルロット様のために良い御香をクレイク国王陛下様が送ってきてくださったのです」
「御香?」
「はい。ご用意いたしますね」
「べ、別に、いらないよ……」

 私が断ったのに「国王陛下様が送られてきたものですから、一回だけでもどうですか?」
と、メロウさんが手際よく用意していく。
 まぁ、御香はアロマみたいなものだから、もしかしたら、この眠さを何とかできるかもしれないし……試してみるのもいいかもしれない。

 それにしても眠い……。
 6歳の子供だから、体が睡眠を欲しがっているだけかも知れないけど。
 それに、たしかにメロウさんの言うとおり、此処最近は陽射しもきつくなくなってきて、温度も湿度も、とても快適で眠気を誘うような気候でもあるし。

「ご用意できました」
「はやっ!」

 もう、最初から用意していたのでは? と思うくらい用意が早かった。
 しばらくすると、御香が漂ってきた。
 吸ってみると、甘い香りが鼻腔を刺激してきて、瞼が重くなって……思考もおぼつかなくなってくる。

「どうやら、シャルロット様は、ずいぶんとお疲れのようですね」
「おつかれ……? わたし、つかれているの?」
「はい! ですが、これだと貴族の勉強もままなりませんね」
「べつに……」

 半分ほど瞼が落ちてきたところで、メロウさんが私を抱き上げてベッドに寝かせてくれた。

「そうですね、実は良い魔道具があるのです」
「まどーぐ?」
「はい、何でも寝ている間に色々な勉強が出来る魔道具らしくクレイク国王陛下様が送ってきてくださったのです」
「そうなの?」
「どうでしょうか? 使ってみませんか?」
「うーん……」

 睡眠学習装置みたいな物なのかな?
 でも、睡眠学習装置って効果がないって聞いたような気が聞いてないような……。

 ……でも、この世界は魔術があるような不思議があふれている世界だし、もしかしたら寝ていても効果はあるかもしれない。

「やっぱりいいー」

 私は、何かを聞きながら寝ていると寝付けないからとりあえず断ることにした。すると「シャルロット様」とメロウさんが私の額に手を当ててきた。

「きっとクレイク国王陛下は、少しでもシャルロット様に多くのことを学んでほしいと思ってご用意してくださっていると思います。ですから、シャルロット様もお父さまの気持ちを無碍にされませんように……」
「……う、うん……」

 そう言われると、断りにくい。
 一応、庇護を受けているわけだし……。
 まぁ殺されないよりはマシかなとも思うし……。

「わかったの」
「シャルロット様は、本当に聞き分けが良い子ですね」

 メロウさんは私の頭を撫でてくる、
 別に、メロウさんのためでも何でもないし……。

「どんな、ないよーなの?」
「はい、一応……そうですね……シャルロット様は、記憶が混濁しているということでしたので、まずはご自分をきちんと、シャルロット様と認識してもらうというのは、如何でしょうか?」
「……それっていみあるの?」
「はい! とても重要なことですよ? シャルロット様にはとくに重要なことです!」
「――う、うん……。そこまで、言うなら……」

 私が許可を出すとメロウさんは、20センチ四方の透明なガラス箱を取り出すと枕元に置いて中に水晶球を入れて何か詠唱を唱えていた。
 それから、しばらくして「私は、クレベルト王家第一王女シャルロット・ド・クレベルトです。それ以外の何者でもありません」という音が聞こえてきた。

「へんなの……」

 私の名前は、あかつき綾香あやかなのに……。
 あれ……。
 急に眠くなって……。


「おはようございます。シャルロット様、良くお眠りになられましたか?」
「うん、すっきり」

 いつもは起きている時に、思考に霧がかかっているような感じがあった。
だけど、アロマの効果があったのか、目覚めがハッキリとしている。
 まぁ、問題は睡眠学習装置がなんの役に立ったのか分からなかったことくらい。 

 だって、「私は、クレベルト王家第一王女シャルロット・ド・クレベルトです。それ以外の何者でもありません」みたいな音声をずっと流されていても、私は、18年間もあかつき綾香あやかとして、長年、周りからの苦情や妬みなども本を読むことでスルーしてきたから……別人の名前を言われても「あっ、そう!」くらいにしか思わないわけで……。

「シャルロット様?」
「どうしたの?」
「いえ……あれ? おかしいな?」

 私が首を傾げるとメロウさんが、何か困った表情をしているのが、とても印象的で……何かを隠しているような感じがする。

 そのとき、私の脳裏に天啓のような物が降りてきた。
 そう、今までの、メロウさんの行動を鑑みて、おかしいと思っていても眠くて気がつかなかったこと。

 ――それは!

「メロウ、安心してください。私は、クレベルト王家第一王女シャルロット・ド・クレベルトです。それ以外の何者でもありませんから」
「シャルロット様!」

 感極まった表情で私を抱きしめてくるメロウさんに、私は内心溜息をつく。
 そうだよね。
 せっかく用意した学習装置が、まったく役に立たなかったら、そりゃ不安にもなるよね。
 まぁ、少しくらいはサービスしておけばいいかな。
 さて! 今日は、やけに思考がスッキリとしているから魔術の修行ができるよね!

 これもアロマを用意してくれたクレイク国王陛下とメロウさんのおかげかな?





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