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薬師シャルロット

なつめ猫

睡魔には勝てなかったよ

 とりあえず魔術の練習をしな……いと……。
 色々と考えていると、瞼が下がってくる。

「やばい……」

 左腕を抓りながら、これから、どうしたらいいのか考える。
 それでも……抗えない睡魔が……。



「シャルロット様、よく眠れましたか?」

 メロウさんの声が聞こえてきて、私は瞼を擦りながら目を開けていく。
 まだ、眠い……。
 今、思えば幼児のときに襲ってくる睡魔というのは、やばかった記憶がある。
 耐え切れない睡眠への欲求。
 体が欲しがってしまう原始的な要求。

「絶対に睡魔になんて負けないからっ!」
「シャルロット様?」
「な、なんでもないの……」

 あまりにも自分の不甲斐なさを感じていたあまり、つい、どこかで聞いたようなフレーズが言葉として零れてしまっていたけど……。

「ねむい……」

 まだ、頭がふらふらする。
 ところどころ意識がはっきりしない。
 気がつくと何時の間にか寝てしまっていたり、ご飯を食べたあとすぐに寝てしまったりと……寝てばかりじゃない!

「シャルロット様、如何ですか?」
「ふにゃ……」

 椅子に座らされていた私は、鏡に映っていた自分の姿を見る。
 白いロリータゴシックのようなドレスを身に纏っていて、大きな白いリボンで肩口まである黒い髪の毛を纏められている様相は、まるでお人形のようで――。
 これが自分じゃなければ、褒めているところだけど。

「いいとおもう」

 私は、たどたどしく子供らしく言葉を口にする。

「それは、よう御座いました。それでは今日は、シャルロット様の未来の旦那様のお話をいたしましょう」
「――あんまり……」

 興味は無いと続けて言おうとしたところで、「興味があるんですね!」と、メロウさんが話かけてきた。
 どう聞いたら、あんまり興味があると聞き間違えるのだろう?
 謎は深まるばかり。

「それでは、シャルロット様」

 メロウさんは、私を抱き上げると、椅子の上に下ろしてティーカップに入っている紅茶を差し出してきた。
 私は、仕方なくティーカップを両手で持ったあと、紅茶を口に含む。
 メロウさんの入れてくれる紅茶は、味覚障害になるまではおいしかったけど、今では水を飲んでいるようにしか感じない。

「きょうはねむいの!」

 私は、椅子から降りると「シャルロット様!」と語りかけてくるメロウさんの横を抜けてベッドに向かう。
 そして襟首を掴まれてしまい……。

「おやすみなさい……」
「はい、おやすみなさいませ。シャルロット様――」

 寝巻きに素早く着替えさせられた私は、ベッドで横になりながら目を閉じる。
 未来の旦那の話なんて、私が聞いても意味はないし、余計な時間。
 だったら魔術の練習に時間を費やしたほうがいい。
 だって王妃の寿命があと、どのくらい残っているかなんてわからないし。
 早めに魔術を習得しないといけない。
 だったら、寝たふりをしてメロウさんが部屋から出て行った後に、私は……私は……わたし…………。



「――ハッ!」
「どうかなさいましたか? シャルロット様?」

 メロウさんがカーテンを開けたことで差し込んできた日光をまともに受けて私は目を覚ました。
 おかしい……。
 あのあとの、記憶がない!?

「えっと……わたし、どのくらい寝ていたの?」
「はい、夕食時に起こしに来たのですが、良く寝ていましたので……」

 つまり……今は、翌日の朝? 朝なの?

 そう言われれば小鳥が鳴く声も聞こえてくる気がするようなしないような――。

「なんということ……」

 目を瞑って物事を考えていたら、そのままぐっすり子供のように寝てしまうなんて……。
 魔術の練習が全然できなかった。

「それでは朝食に致しましょう」

 メロウさんが用意した食事を見たら、おなかがグーッと鳴った。

「ささっ、シャルロット様」

 寝巻きのまま、椅子に下ろされた私は、テーブルの上に用意された食事を食べていたら、また眠くなってきたけど、頑張って食べきった。

「あたまがふらふら――」
「さあ、シャルロット様、お昼寝の時間ですよ?」
「うん……」

 私はベッドの中に入ってすぐに寝て――。



「いけない!」

 気がつけば部屋の中は暗く、カーテンも閉まっていた。
 そして部屋の扉を開けてメロウさんが部屋に入ってきた。

「シャルロット様、ぐっすり寝ていたようですので――」

 どこかで聞いたことのあるようなセリフが聞こえてくるけど、私の心は震えていた。
 一日が、食べて寝ているだけで過ぎていく子供の世界のやばさに……。
 このままでは、魔術の修行どころではないということに。


 

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コメント

  • コーブ

    小豚になってしまふ(笑)

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