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薬師シャルロット

なつめ猫

婚約なんて聞いてない!

 部屋の中を見渡す。
 ベッドや調度品については、綺麗な細工が施されている。
とても囚人のような扱いでないのは分かる。
 ただ、部屋の中を歩きまわった結果、分かったのは窓と入り口に鉄格子が嵌められているということだけ。
 それと本棚がない。
 これは……私に知識をつけさせないため?
 王妃から渡された回復魔術が書かれた本も部屋の中にはないし……。

「うーん、秘密の出入り口も存在してない……」

 ベッドの下まで隅々とチェックし壁を、トントンと叩きながら石鑑定職人さながらの仕事で壁や床を調べていく。

「石鑑定職人って……」

 心の中で思ったことを思わず、自分の口から出した言葉で突っ込みを入れる。
 そして調べた結果――。

「部屋の中にはドレスやドロワーズなどの下着類、そして……」

 私は、備え付けられているテーブルの上に何冊かの本を置く。
 そこには、この世界の文字で貴族のマナーやルールなどが書かれた本に、この国の歴史や成り立ちが書かれた本。
 そして、周辺国――特に帝政国と呼ばれる巨大国家のことが書かれた本を見つけた。

「それにしても引き出しの中に入っているとは……」

 問題は、羽ペンやインクもないこと。
 さらには、ペーパーナイフのような刃物が置かれていなかった。
 おそらく脱獄用の物は全て置かれていないのだろう。

 とにかく、今、出来ることというか……今後、やる事と言ったら――。

私に全てを説明して満足そうに倒れた王妃を回復魔術で復活させてから、この体に執着していたようだから、目の前で自殺してやるくらいだろう。
 そうすれば、少しはこっちの溜飲もさがるってものだし……。

 どうせ、一度、死んでいるのだ。
 一度、死んでいれば二度、三度死のうがたいした差はない。

 そこまで考えたところで、扉のほうから鍵が開けられる音が鳴った。
 そして、身構える前に扉が開きエルフ耳を持つメイド――メロウが部屋に入ってきた。

「シャルロット様、お加減は如何でしょうか?」

 こんな所に閉じ込められて、お加減も何も無いと思うけど……。
 でも、ここは情報収集が大事。

「ここから出たい!」
「それは、クレイク国王陛下が許可を出しておりませんで……」
「どうして、お父さまが?」
「それは、シャルロット様が、王妃様が倒れたところを見て、精神的に不安定になったからでございます。あの時のシャルロット様は、まるで別人のようでしたので……。クレイク国王陛下様は、シャルロット様が落ち着かれるまで、この部屋に居られるようにと仰られておりました」
「……」

 私はメロウさんの言葉に無言で返す、
 ただ、彼女の話を聞いていて、いくつか疑問に思った点があった。
 それは、王妃が私をこの世界に召還したことについて、まったく触れていなかったこと。
 そして、いまの発言から国王陛下が関わっている可能性も低いことだけど……。

「それでお母さまは?」
「王妃様は、ご無事で御座います。ですから、ご安心ください。それと――シャルロット様には、とてもいいお話があります」
「いいお話?」
「はい。本来で御座いましたらクレイク国王陛下、シャルロット様のお父さまより直接、お話があるはずだったのですが……」

 私は首を傾げる。

 ――一体、彼女は何を言いたいのだろうか?

 言葉を一旦、切ってまで……。
 そこまで重要な話?

「クレイク国王陛下は、アルフ大森林国へ向かっています」
「アルフって……」
「はい、エルフ達の王国であり王妃様の故国でもあります。代々、エルフは回復魔術を使える者が多いので――」
「そうすれば、お母さまは助かるのですか?」
「はい! ですからシャルロット様は、安心してください。先日、婚約が決まりました帝政国へ嫁ぐために、王族と貴族としてのマナーやルールに周辺諸国との国家間情勢を学んでいただければと思います」
「――え!?」

 何? それ初耳ですけど!?

「ご不安になられることは分かりますですが、ご安心ください。嫁がれる際には、このメロウも着いて参りますので!」
「……」

 どうも理解頂けていないよう。
 どうして、私が……本物のシャルロットでも無い私が婚約って話になっているのかなのに……。
 この国の王族、見ず知らずの他人である私に、どこまで迷惑をかけ続ければ気が済むのか!




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