薬師シャルロット

なつめ猫

幽閉された王女

「……お母さま?」

 私は、ベッドの上で横になった王妃様に手を伸ばす。

「熱い――」

 手のひらから感じる熱がとても高い。
 まるで、風邪を引いたような……ううん、もっと熱が高い――。

「――まさか!?」
「メロウ! メロウはいますか?」

 私の叫びに「どうかいたしましたか?」と、メロウが入ってくると、ベッドの上で倒れている王妃様を見て顔色を変えた。

「王妃様!? アレス! すぐにエンハーサ様を!」

 メロウの驚きの声に、部屋に入ってきたアレスが、「分かった」と言って、すぐに部屋を出ていく。
 目の前で、メロウが必死に王妃様の手当てをしている様子を私は呆然と見ていた。
 どこか現実味がない。
 どこか夢を見ているような――。 

 王妃様が、私のことをシャルロットの魂を補填するために召還したと言っていた。
 それの意味するところは……。

「ハハハハッ……」
「シャルロット様?」

 思わず笑い声が出てしまっていた。
 私の様子に、メロウさんが目を見開いて私を見てくる。

「私は、私は……」

 そう――。
 最初から、私は間違っていた。
 シャルロットの為に、母親である王妃様のために、頑張っていこうと思っていたのに……。

 何のことはない。

 彼女は、自分が死ぬかも知れないから……。
 彼女は、自分が行った私を召還したという罪から逃げるために……。
 彼女は、私へ対して向けた贖罪のために――。
 彼女は、私に謝罪してきたのだろう。

「ふざける……な!」

 私は、今まで我慢して我慢して我慢して我慢して頑張ってきた気持ちが、思いが、努力が全て、すべて――!

「シャルロット様! 落ち着いてください!」
「落ち着いてくださいですって? この女は! この女は! 自分の事ばかりを考えて! 私のことを! 私のことを!」

 私は叫ぶ!
 目の前が怒りで真っ赤になる。
 だって!
 もしかしたら!
 良く考えたら、鉄骨が自分の上に落ちてくる可能性なんて、どのくらいあるのか? あるのだろうか?

 それが、もしかして……。

 私を召還するために、起きた出来事だとしたら――。
 私は、彼女に殺されたことにならないだろうか?
 そんなのは、許せない。
 絶対に許せない。

「シャルロット様!」

 後ろから羽交い絞めにされる。
 振り向くと獣耳のメイドが私の両腕を掴んでベッドから下ろし、王妃から離す。

「ふざけるな! この女は!」

 散々、私が頑張ってきたことを、この女は否定したのだ。
 自分が召還しておいて――。
 私だと知らないときに、私が自殺をしたときは必死に助けて……。

 ――そして、自分自身の娘の人格では無いと知ったあとは、私を懐柔しようとした。
 それは、私のことを――。
 私のことを自分の娘として――。
 そう……。
 私のことを自分自身の慰み者をして使おうとした。

 ――そんな事が許されるわけがない!

「シャルロットを、別の部屋へ」
「わかりました」

 獣耳を持つメイドが、私を抱かかえたまま歩き出す。
 私は必死に抵抗する。
 こんな所に、こんな世界に私を召還しておいて! 絶対に許さない!



 日差しが顔にかかり、眩しさから私は瞼を開けていく。

「ここは……」

 私は、周りを見渡す。
 部屋の中には、クローゼットやいくつかの調度品、そして鏡や私が寝ているベッドが置かれていた。
 ベッドから降りて、窓に近づいて外を見る。

「高い――」

 窓から見た光景は、城を一望できるほどの高さがあった。

「――まさか?」

 すぐに扉へ近づく。
 そして扉を開けると、鉄格子が存在していた。

「……王妃の行った行為を隠すために、私を幽閉したの?」




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