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薬師シャルロット

なつめ猫

思いの欠片(3)

 上手く演技が出来るとは思っていなかった。
 それでも、一ヶ月もかけて本物のシャルロットに近づけるように考えて意識して振舞ってきた。
 それに言葉遣いも、話を聞いて近づけたのに……。
 どうしたら――。

「シャルロット? どうかしたの?」

 王妃様の問いかけに、何でもないと体全体で現すように私は頭を振る。

 どうしよう……。
 どうしよう……。
 どうしたら……いいのか……。
 妙案がまったく浮かばない。

 考え事が纏まらず、どうしたらいいのか分からない。
 だから、私は抱きしめられている王妃様の手を振りほどいて逃げようとすると、しっかりと王妃様に抱きしめられて身動きを取れなくされた。

「シャルロット、今の貴女に私の言葉が理解できるかどうかは分からない。でもね、私は貴女が、とても苦しんでいるというのは分かるの」
「おかーさま?」

 王妃様の言葉は、スッと私の心の隙間に入ってくる。
 でも、それは……。
 それは、とても残酷な言葉で……。

 俯いてしまった私を抱きしめながら、王妃様は「メロウ、少し部屋から出ていて頂戴」と、部屋の扉近くにたっていたメロウさんに話かけた。すると彼女は「かしこまりました」と、発すると頭を下げてから部屋を出ていった。

 メロウさんが部屋から出ていくのを確認すると、王妃様は、視線を私に落とすと「シャルロット、貴女は私に何か隠しているわよね?」と語りかけてきた。

「わ、わたし……」
「いいのよ? 貴女は……本当は誰なの?」

 彼女の言葉に、私の心臓の鼓動は高く律動を刻んだ。
 だって、それは……。
 私が彼女に、もっとも隠しておかないといけないことだったのだから。

「わたしは、おかーさまの娘です……」

 何とか、この場を乗り切らないといけない。
 そう、その後、手段を考えて――。

「それなら、どうして……そんなに苦しそうな顔をしているの? どうして、そんなに悲しそうな顔をしているの?」

 目の前で、私を抱いている女性は、前世の私と殆ど年齢が変わらないように見えるのに、全てを見透かしたかのように、私に語りかけてくる。

 彼女は、私が言葉を発すると、とても悲しそうな表情をする。
 それは、私が本当の娘では無いと理解しているからだろう
 だから、彼女はハッキリとさせたいのだ。
 私の口から――。
 私が何者であるのかを。
 実の娘がどうなってしまったのかを知るために――。
 そうとしか考えられない。

 ――でも、真実を告げるということは、私が赤の他人であるという事を教えることに他ならない。
 そんなことをしたら……。
 王妃様は、とても悲しむ。
 もう、シャルロットが居ないということを教えるということは、体調が悪いと言われている彼女の負担にならないだろうか?

 それよりも――。
 後ろ盾を失ってしまったら私は……。

 ――でも、それでも……。

 彼女が――。
 実の娘であるシャルロットの母親である王妃が、真実を望むのなら伝えるべきかも知れない。

 でも、誰かに失望されるのだけは恐い。
 もう二度と、私のせいで誰かが不幸になるのだけは嫌だ。
 そう、私が生まれてきたせいで、前世でも両親に迷惑をかけて不幸にさせたのだから。
 私が生きてさえいなければ――。

 ううん、生まれてさえ来なければ――。
 誰も傷つくことなんてなかったのに!

「シャルロット、あなたは魔術が使えるのよね?」
「――!?」

 必死に、どうしたらいいのか考えていたところで、王妃様は、私が、誰にも話していない秘密を言い当ててきた。
 魔術が使えるのが分かったのは昨日の夜だったのに、どうし……て?

「お、おとーさまは……私に魔術の適性はないって……」
「嘘はいけないわよ? 昨日の夜に、私があげた熊のぬいぐるみを部屋の中で浮かべていたわよね?」
「――ッ!」

 演技を忘れて思わず息を呑んでしまう。




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