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薬師シャルロット

なつめ猫

回復魔術師(3)

 朝日が、部屋の中を照らしてくる中、私はゆっくりと目を開けた。
 そして、その時が来るのをゆっくりと待つ。
 しばらく、待っていると扉がノックされる音が聞こえてくる。

 朝早くから6歳の子供が起きているとは思えないことから、私が返事をせずに待っているとドアノブが回る音と共に扉が開けられる音が室内に響き渡った。
 部屋に入ってきた人は、まっすぐに窓に向かうとカーテンを開け「シャルロット様、もう朝でございますよ?」と語りかけてきた。
 私は、少し間を空けてから寝ていたふりをしながら、布団から出て「おはようございます」と言葉を返した。

 早く起きていたのには訳がある。
 王妃様が言っていたメロウさんに言えば、会えるという言葉。
 それを、そのまま取っていいのかどうかは別として――。

 王妃様の言葉から、ずいぶんとメロウさんに信頼を寄せているように見えた。
 そして、アレスさんに、何気なくお母様とメロウさんは仲がいいですよね? と聞いたところ帰ってきた答えは、お母様が嫁ぐときに連れてきたエルフらしく、隣国のエルフが治める国アルフの王女様で嫁ぐ時に、不自由がないようにとメロウさんも動向してきたそうで、つまり彼女はずっとお母様に仕えているということ。

 つまり、メロウさんが見たことは、そのままお母様に伝わってしまうかもしれない。
 もし、私が何か問題を起こして、王妃様に見限られたら――ううん、私が実の娘ではないということが分かったら、きっと心優しい彼女は傷つく。
 だから、寝ぼけておかしな事を言わないように事前に起きることにした。
 幸い、朝起きるのは得意で苦ではない。

 私は、メロウさんに視線を向ける。
 すると彼女が朝食の準備に取り掛かって忙しいようで――。

「メロウさん、何をしているのですか?」

 彼女が、食事に手のひらを向けて何やら小さな言葉を紡いでいるのが、とても印象的でつい話かけてしまった。
 すると、彼女は私のほうを見てきて「ようやく、私を見て話かけてくれましたね」と、子供に言い聞かせるように、やさしく語りかけてきた。
 彼女が言った言葉の意味は分かる。
 私は、昨日、メロウさんにひどいことを言った。
 だから、きちんと謝らないといけない。

「……あ、あの……」

 問いかけられた彼女は、ふと動きを止めると振り返りジッと見てきた。
 仕事が忙しいだろうに彼女は決して急かそうとはしない。
 きっと、それは私が出した答えを待っているからだと思う。

「――昨日は、ひどいことを言ってしまって本当にごめんなさい!」
「いいのですよ? 昨日は風邪も引いていたのですよね?」
「――え?」

 私は首を傾げる。
 そして、メロウさんに言われた言葉の意味を考えると思い当たる節がいくつもあることに気がついた。
 たしかに体はだるく、熱い。
それに、体もふらつく。

「王妃様からお話は伺っています。ですが、回復魔術を受けたとしてもすぐに体力が回復することはありませんし、万能ではありません。ですから、今日は一日、ご自愛ください」
「――で、でも!」

 ここで、はっきりとしておかないと今後の関係に問題が起きてしまう。
 謝罪するときは、きちんと謝罪することがマナーであり――。

「シャルロット様、傍付きのメイドをしているのです。遣えている主の体調不良を見落としていたなど――。本来であれば、私の方こそ罰せられなくてはなりませんでしたのに……」
「そ、そんなことないです――」

 私は彼女の謝罪の言葉に動揺してしまう。
 いくらなんでも、何でもメイドのせいにするのは良くないと思ったから。
 でも……。
 それが、この世界で当たり前のことなら、その謝罪は受け入れないといけないのだろうか?
 普段のシャルロットが、どのような対応をしていたか分からない以上、下手に勘ぐられるような行動は控えた方がいいと思う。
 だからこそ――。

「わかりました。今日は、一日休んでおきます」
「はい」

 私の言葉にメロウさんは、微笑みながら頷くと、朝食の用意を始めた。
 そして、朝食を食べたけどスープもパンも野菜も、まったく味がしない。
 まるで砂を齧っているみたい。
 それでも、変な顔をしたら王妃様に話があがってしまう。
 それだけは避けないといけない。
 たった一人の味方を落胆させたら、私には生きている存在意義が無くなってしまうから――。

「とてもおいしいですね」

 私は、味も何もしない野菜スープを口にしながら笑顔を作りメロウさんに語りかけた。



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