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薬師シャルロット

なつめ猫

異世界転生(3)

 男性は、「シャルロット?」と、語りながら近づいてくる。

 私は思わず、一歩さがってしまう。
 目の前で「どうしたのだ?」と、首を捻っている男性は、とても身長が高い。

 メイドをしているエルフよりも二周り以上は、背丈があると思う。
 それに横幅も鍛えているからなのか、服の上からも分かるほど筋肉が盛り上がっていて、とっても大好物です! じゃなくて……。
 つまり圧迫感があるわけで――。
 知らない男性に近づかれるのは、ちょっと恐い。

「ふむ……何も覚えていないというのは本当のようだな? シャルロット、私がお前の父親だよ?」
「お父さま……?」

 私の言葉を聞いた男性は小さく溜息をつくと眉間に皺を寄せたあと、「メロウ、これは一体どういうことだ?」と、エルフのメイドに問い詰めた。

「陛下。シャルロット王女様と中庭で散歩をしておりましたところ、シャルロット王女様が誤って湖に落ちてしまい……急いでお助けしたのですが――」

 私の父親に説明をしていると途中で言葉を切って私の方を見てきた。
 どうして彼女が私の方を見てきたのか分からない。
 でも、何か言い難いことを言おうとしているのだけは分かった。

「目を覚まされましたところ、私のことを覚えていなかったのです。ですから、陛下への報告を早めにしたのですが……」
「嘘偽りはないだろうな?」
「はい。間違いありません」
「そうか――。シャルロット、本当に大丈夫なのか?」

 父親と語った彼は近づいてくると、私を軽々と抱き上げて――。
「リー・ステイル・アルス・レメイル」

 目の前の男性が言葉を紡ぐと、空中に文字が浮かびあがっていく。
 空中に浮かんだ黄色い文字を見た後に、「何か魔物や悪魔に取り憑かれたと言ったことはないようだな。魂の色もシャルロットと同じであるし」と、一人呟いてきた。

 どうやら目の前の父親である男性は、私が何かに取り憑かれていたと思っていたらしい。
 疑惑は晴れたようだけど――。
 これから、どうすればいいのか……思いもつかない。

「魔術で調べたかぎり、体にもおかしな場所は見当たらないな。もしかしたら記憶が混乱しているのだけかもしれんな」
「アレス!」
「ハッ!」

 部屋の扉が開くと、プレートメイルを着込んだ男性が部屋に入ってくる。



 しばらくすると、アレスと呼ばれていた騎士が戻ってきた。 
 後ろからは、頭の上に犬耳を生やした男性が、付いてきている。

「陛下。お待たせしてしまい申し訳ありません。すぐに診察いたします」
「陛下、それでは失礼いたします」

 そう言うと、アレスさんは部屋から出ていった。

 陛下? 陛下って……。
 今、私の父親のことを陛下って言っていたよね?
 ――と、いうことは……。
 私の父親って国王陛下!?

 つまり、私は王女?

 もしかして、何不自由なく暮らせたりしたり?
 で、でも! 私の正体がバレたら大変な事になるのかも知れない。
 なるべく私の、日本から転生したということは隠さないと――。

「それでは、陛下。シャルロット様の、ご容態を確認させて頂きたいと思います」
「うむ……」

 陛下が許可を出したのなら診察を拒むことはできない。
 拒んだ時点でおかしいと思われてしまう。

「それではシャルロット様、少しお手を……」

 私は仕方なく、主治医の指示に従って手を差し出す。
 犬耳薬師の手に触れると、フニッ! という感触が伝わってくる。
 よく見ると、それは肉球であった。
 しかも手がまんまるい……。

「し、シャルロット様、悪戯しないでください」
「――ハッ!」

 気がつけば犬耳薬師の手を触りまくっていた。彼は一度、咳きをすると「陛下、シャルロット様には、どこも異常は見られません」と父親である陛下に答えていた。

「それは何よりだ。エンハーサ、ご苦労であったな」
「もったいなきお言葉、それでは、失礼致します」

 王宮薬師エンハーサさんが部屋から出ていくと部屋の中にはエルフ耳のメイドさんと父親と私だけが残された。

「メロウ、体と魂と魔力に異常が無いのだ。しばらくは娘をしっかりと見ておいてくれ」
「かしこまりました」

 父親の言葉にエルフ耳メイドは、おもむろに立ち上がると頭を下げた。

「シャルロット、しばらく休んでいなさい。何かあれば、メロウに言うのだよ?」
「はい。お父さま」



 結局、私の扱いは記憶喪失ということで話がついた。
 よくわかんない! と話をしていたら勝手に解釈してくれたけど良かった。

 でも記憶喪失となってよかった。
 下手に勘違いされたら王家の威信に関わると幽閉されたかもしれない。
 ただし、問題が一つだけ残っていて――。

 この世界の文字は、日本語くらい複雑だったこともあり中々覚えることが出来なかった。
 ただ、一つだけ嬉しいことがあり、この世界には魔術と呼ばれるものが存在していて、王家には代々、強い魔術師が生まれるらしい。
 ちなみに私も強い魔力をもっていたらしく、大抵は国の歴史に名を残すような強い魔術師になれるとかなれないとか――。

 そんなある日、父親である国王陛下が部屋に入ってくるなり「シャルロット! 魔術適正を確認するぞ!」と話かけてきた。





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