悪役令嬢に成り代わったので奮闘しました。だからって貴公子と呼ばれるとは思わなかったんです
年末のパーティー
何故か年末のパーティーはあっという間に来てしまった。なんでだ!?と思ったが、よく考えたら私の誕生日自体年末に近いのだ。
パーティー会場までは父上と母上と馬車で行く。ルカは先に行って王子たちに挨拶しているらしい。そこで王子達に私も紹介されるのか。
玄関前まで行くと父上と母上が待っておられた。お二人とも私を見つけると微笑まれた。私もお二人が目に入り思わず顔が綻ぶ。
「お待たせ致しました。父上、母上。」
教えられた通り、紳士の礼をする。母上の笑う声が聞こえて顔を上げる。母上はとても幸せそうな顔をしていた。
「立派ですよ、クリストファー。パーティーではアレクサンドル殿下にも会うのでしょう?失礼のないようにね。」
「心得ております。」
そう答えると安心した様に笑みを深める母上。誰もが認める淑女。私が立派な息子となる事で母上を守ることが出来る。
そう思うとこの世界でクリスティーネに成り代わってしまったとしても、生きる意味が与えられている様で安心した。
少しは罪悪感がある。この身体は私の為じゃない。クリスティーネは、ほんの少しの可能性でも、女性としての幸せを掴めたかもしれない。
その可能性を踏み潰したのが私だ。だからせめて、クリスティーネとクリスティーネの周囲の人間だけでも守りたい。家族が不幸になってしまうのは嫌だ。
私が息子になったあの日から、父上は申し訳なさそうな目で私を見る。けれど父上が謝る事でもない。
全ては私の判断だから。罰せられるのは私だけで良い。
「旦那様、そろそろお時間かと。」
使用人の一人に促され、私達は馬車に乗り込んだ。
談笑という名の情報交換を楽しむ当主。美しく着飾り、それこそが権力の象徴ともいえる様に堂々と佇む貴婦人。これからの家の存続の為と、父の真似事をする令息、令嬢。
遠くから見れば、その真意は分かりやすいものだ。今から自分もあの渦の中に紛れ込むのだが。
外交長官の父を持つ私は、家の名に恥じぬ様振る舞う。ただ、私はこの様な貴族の殆どが集まる場は初めてである。父上と母上は私からすぐに離れて、馴染みの者達と話をするだろうから、私は一瞬、どこの者かも知れない。
その予想は的中した様で、父上も母上も近くにいない私の家柄を判別する手段は無いのか、皆チラチラこちらを見るものの声はかけて来ない。
「あの御令息は一体‥‥」
「見たことがない御顔だが」
「しかし、堂々としてらっしゃる。」
ヒソヒソと自分の事を話す声が聞こえる。というか見過ぎではないだろうか。このパーティーの目的が令息、令嬢の交流とはいえ、これはいくらなんでも‥‥。
その時、見知った黒髪の少年がこちらを歩いて来た。ルカだ。
「やぁ、ルカ。久しぶりだね。」
ルカは忙しかったのか、家に来る頻度が低くなりつつあったから、懐かしい感じがした。
「悪い、少し立て込んでてな。にしても凄い注目だな。」
「見慣れていない者だからね。仕方ないだろう。」
その答えに、ルカは納得していない様に顔をしかめた。
彼の様子に首を傾げると、ため息を吐いてこちらを見た。
「お前の容姿が人目を引いてるんだ。」
断言されて、思わずたじろぐ。でも落ち着いて考えればクリスティーネは吊り目の美少女だったし、男性となれば中性的な美少年へと変わるだろうな。
「それはそれは、光栄だな。」
なんておどけて見せればまたため息を吐かれた。そんなに呆れる事ないじゃないか。
「馬鹿言ってないで、殿下方の所に案内するから着いてこい。」
手を強引にひかれ歩き出す。人混みを掻き分け少し人が少なくなったと思えばそこには美しい金髪を持った少年と遠くからでも分かる程の艶のある茶髪の少年がいた。
パーティー会場までは父上と母上と馬車で行く。ルカは先に行って王子たちに挨拶しているらしい。そこで王子達に私も紹介されるのか。
玄関前まで行くと父上と母上が待っておられた。お二人とも私を見つけると微笑まれた。私もお二人が目に入り思わず顔が綻ぶ。
「お待たせ致しました。父上、母上。」
教えられた通り、紳士の礼をする。母上の笑う声が聞こえて顔を上げる。母上はとても幸せそうな顔をしていた。
「立派ですよ、クリストファー。パーティーではアレクサンドル殿下にも会うのでしょう?失礼のないようにね。」
「心得ております。」
そう答えると安心した様に笑みを深める母上。誰もが認める淑女。私が立派な息子となる事で母上を守ることが出来る。
そう思うとこの世界でクリスティーネに成り代わってしまったとしても、生きる意味が与えられている様で安心した。
少しは罪悪感がある。この身体は私の為じゃない。クリスティーネは、ほんの少しの可能性でも、女性としての幸せを掴めたかもしれない。
その可能性を踏み潰したのが私だ。だからせめて、クリスティーネとクリスティーネの周囲の人間だけでも守りたい。家族が不幸になってしまうのは嫌だ。
私が息子になったあの日から、父上は申し訳なさそうな目で私を見る。けれど父上が謝る事でもない。
全ては私の判断だから。罰せられるのは私だけで良い。
「旦那様、そろそろお時間かと。」
使用人の一人に促され、私達は馬車に乗り込んだ。
談笑という名の情報交換を楽しむ当主。美しく着飾り、それこそが権力の象徴ともいえる様に堂々と佇む貴婦人。これからの家の存続の為と、父の真似事をする令息、令嬢。
遠くから見れば、その真意は分かりやすいものだ。今から自分もあの渦の中に紛れ込むのだが。
外交長官の父を持つ私は、家の名に恥じぬ様振る舞う。ただ、私はこの様な貴族の殆どが集まる場は初めてである。父上と母上は私からすぐに離れて、馴染みの者達と話をするだろうから、私は一瞬、どこの者かも知れない。
その予想は的中した様で、父上も母上も近くにいない私の家柄を判別する手段は無いのか、皆チラチラこちらを見るものの声はかけて来ない。
「あの御令息は一体‥‥」
「見たことがない御顔だが」
「しかし、堂々としてらっしゃる。」
ヒソヒソと自分の事を話す声が聞こえる。というか見過ぎではないだろうか。このパーティーの目的が令息、令嬢の交流とはいえ、これはいくらなんでも‥‥。
その時、見知った黒髪の少年がこちらを歩いて来た。ルカだ。
「やぁ、ルカ。久しぶりだね。」
ルカは忙しかったのか、家に来る頻度が低くなりつつあったから、懐かしい感じがした。
「悪い、少し立て込んでてな。にしても凄い注目だな。」
「見慣れていない者だからね。仕方ないだろう。」
その答えに、ルカは納得していない様に顔をしかめた。
彼の様子に首を傾げると、ため息を吐いてこちらを見た。
「お前の容姿が人目を引いてるんだ。」
断言されて、思わずたじろぐ。でも落ち着いて考えればクリスティーネは吊り目の美少女だったし、男性となれば中性的な美少年へと変わるだろうな。
「それはそれは、光栄だな。」
なんておどけて見せればまたため息を吐かれた。そんなに呆れる事ないじゃないか。
「馬鹿言ってないで、殿下方の所に案内するから着いてこい。」
手を強引にひかれ歩き出す。人混みを掻き分け少し人が少なくなったと思えばそこには美しい金髪を持った少年と遠くからでも分かる程の艶のある茶髪の少年がいた。
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