悪役令嬢に成り代わったので奮闘しました。だからって貴公子と呼ばれるとは思わなかったんです
使用人達
朝、前世の記憶を取り戻してからは誰に起こされずとも勝手に起きる様になった。まぁ、前世では目覚まし時計の二、三分前に起きるという絶妙な事をこなしていたから。
もう見慣れた自分の肩よりも短い髪。前よりもずっと整えやすく、一人で整えているとユーリに絶望された。あの時の彼女の崩れ落ち方は未だに覚えている。
「もう私は必要ないのですか‥‥?」
何言ってるんだと思ったが、私の髪を整えるのも彼女の仕事。あまりやられると仕事を取られてしまって辛いだろう、と少し控える。
今日も剣術、礼儀作法、ダンス、座学の全てを学ぶ。仕方ないのだ。今年度末までの期間ならこうするしかない。しかし、思いの外順調である。
ダンスは立場が逆になるだけであって大部分は変わらない。礼儀作法は少々異なるが、女性ほど細かいこともない。座学だって前世とはまた違う分野を習うのは楽しい。まぁ、国語や数学、理科は前世の方が発展していたが。
何よりも順調なのは剣術。これは前世に理由がある。私は女子校に通いながら、居合い、弓道、柔道と習っていた。お陰で自分で言うのもなんだが女子校ではかなりもてはやされた。
クリスティーネの体は細い。力もないし、武器を持ち上げるまではかなり大変だった。しかし持ち上げる事が出来て仕舞えばこっちのものだ。
例え体が反応しなくても頭は鮮明に覚えている。剣術は派によって変わる。私の剣術は居合いが素なのでルドルフの剣術とはまた違う。しかし、ルドルフは新しい剣術見つけたような感じがすると喜んでいた。
結果、何とか間に合いそうなのである。
「それにしてもおじょ‥坊っちゃまの剣術は変わってらっしゃいますね。」
「幼い頃、本で読んだものだ。遥か遠い国の剣術らしい。というか"坊っちゃま"が呼びづらいならクリスで構わないぞ。」
従者としてのルドルフは、燕尾服を綺麗に着こなし、物静かで初対面の人間には冷たい印象すら与えることもある。
しかし、騎士としては別だ。剣術を教えてくれる時の彼はよく喋り、熱血的な所もある。そして不器用だ。だから呼び方一つ変えるのすら戸惑っている。
「申し訳ありません。御心遣い感謝します。」
彼はそう言ってふわりと微笑む。鍛錬でかいた汗を首に巻いた布で拭う彼はさながら爽やかな好青年である。だが私は忘れられない。彼が燕尾服を着ている間、まるで鉄仮面の様に表情が無かったことを!
私はクリスティーネとして、幼い頃の記憶が無いわけではない。これまでの間に、クリスティーネはどれほど横暴だったのかはよく把握している。
今となっては私は別人になったと言われ、どの使用人とも仲が良いが、最初はユーリとこのルドルフ以外には嫌われていた。まぁ秘書はまた別になるけれど。
本当に‥‥ルドルフがどうしてここまで私を、クリスティーネを慕い、尽くしてくれるのか分からない。
いつか、知れると良いな。
もう見慣れた自分の肩よりも短い髪。前よりもずっと整えやすく、一人で整えているとユーリに絶望された。あの時の彼女の崩れ落ち方は未だに覚えている。
「もう私は必要ないのですか‥‥?」
何言ってるんだと思ったが、私の髪を整えるのも彼女の仕事。あまりやられると仕事を取られてしまって辛いだろう、と少し控える。
今日も剣術、礼儀作法、ダンス、座学の全てを学ぶ。仕方ないのだ。今年度末までの期間ならこうするしかない。しかし、思いの外順調である。
ダンスは立場が逆になるだけであって大部分は変わらない。礼儀作法は少々異なるが、女性ほど細かいこともない。座学だって前世とはまた違う分野を習うのは楽しい。まぁ、国語や数学、理科は前世の方が発展していたが。
何よりも順調なのは剣術。これは前世に理由がある。私は女子校に通いながら、居合い、弓道、柔道と習っていた。お陰で自分で言うのもなんだが女子校ではかなりもてはやされた。
クリスティーネの体は細い。力もないし、武器を持ち上げるまではかなり大変だった。しかし持ち上げる事が出来て仕舞えばこっちのものだ。
例え体が反応しなくても頭は鮮明に覚えている。剣術は派によって変わる。私の剣術は居合いが素なのでルドルフの剣術とはまた違う。しかし、ルドルフは新しい剣術見つけたような感じがすると喜んでいた。
結果、何とか間に合いそうなのである。
「それにしてもおじょ‥坊っちゃまの剣術は変わってらっしゃいますね。」
「幼い頃、本で読んだものだ。遥か遠い国の剣術らしい。というか"坊っちゃま"が呼びづらいならクリスで構わないぞ。」
従者としてのルドルフは、燕尾服を綺麗に着こなし、物静かで初対面の人間には冷たい印象すら与えることもある。
しかし、騎士としては別だ。剣術を教えてくれる時の彼はよく喋り、熱血的な所もある。そして不器用だ。だから呼び方一つ変えるのすら戸惑っている。
「申し訳ありません。御心遣い感謝します。」
彼はそう言ってふわりと微笑む。鍛錬でかいた汗を首に巻いた布で拭う彼はさながら爽やかな好青年である。だが私は忘れられない。彼が燕尾服を着ている間、まるで鉄仮面の様に表情が無かったことを!
私はクリスティーネとして、幼い頃の記憶が無いわけではない。これまでの間に、クリスティーネはどれほど横暴だったのかはよく把握している。
今となっては私は別人になったと言われ、どの使用人とも仲が良いが、最初はユーリとこのルドルフ以外には嫌われていた。まぁ秘書はまた別になるけれど。
本当に‥‥ルドルフがどうしてここまで私を、クリスティーネを慕い、尽くしてくれるのか分からない。
いつか、知れると良いな。
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