充実した異世界ライフを送る......はずだったが

ざん

16話 友情。



   「う......う、ん............」

俺は今サウシャーナのギルドの2階、レオンさんの自宅にいる。かれこれ二時間は経っただろうか、横になって眠っていたレオンさんが気がついたようだ。九尾は事情があるため町外れの木の上にいる。色々と大変なのだろう。

「ここは......私の家か................?」

「う、うわ~~ん、レオンさ~ん、死んじゃったんじゃないかと思いましたよー」(泣)

と、受付のお姉さんエレサさんがレオンさんにしがみついた。

「いてててて!!」

「あ、ごめんなさい!」

「ははは、もう大丈夫だよ...しかし、私はなぜここに......」

周りを見渡して、俺に気が付いたようだ。

「そうか、君が助けてくれたのか...ありがとう。そして、危険な目に遭わせてしまってすまない」

「いえいえ、俺の力じゃないですよ」

「え?」

(あ、やべ!九尾のことは秘密なんだった)

「あーいえ、何でもないです!」

「はあ、それにしてもどうやってあの状況を打破したんだい?」

「まぁざっくり言うと黒龍を倒しました」

「「!!!」」

なんか二人とも驚いたような顔だった。何かやらかしたか?と思いつつも話を続ける。

「一回は逃げたんですけど、やっぱダメだと思い助けに向かったんです。レオンさん殺されかけていたので驚きましたよ」

二人は口を開けてポカーンとしている。

「お前何者だよ......やつは魔王軍の上の方にいるやつで倒せるやつと言ったらSSSのやつしかいないぞ......」

「マジすか」

やっと自分が言ったことを理解した。多分、九尾の力があっただけで殆んど互角だったが、一人でとなるとまず瞬殺されただろうと思った。

「今の話を聞いて決めたぞ、君をD級のままにしておくのは勿体ない、そこでだ、君をA級にしてやろう。急にS級にあげるには国が特例をを出さなくてはいけないからせめてA級に昇格させてあげるよ」

「いいんですか?!」

冒険者ランクには特典みたいなのがある。それはランクが上がるにつれて豪華だ。そこで、翔太はA級になったので、ギルドでの食べ物はすべて半額で買える。などの特典がある。これは、おじいさんから聞いた情報だ。


「エレサ、更新してあげなさい」

「はい!では翔太さんこちらへ来てください」

エレサさんに連れてこられた所はカードを作った1階の奥の部屋だった。

「では、冒険者カードを」

「どうぞ」

そう言われポケットにしまってあったカードを差し出す。それを赤い魔法石よの上に置いた。すると、魔法石が輝きだす。やがて光が収まると、エレサさんがカードをとり、返してくれた。

「これで完了です......翔太さん............本当にありがとうございます」

「え、」

「レオンさんが死んじゃったら私、どうしたらいいか分かりませんよ............うぅ」

「好きなんですね、レオンさんのこと」

「あの人は頼れる人で、優しくて、強くて、本当に私の憧れの人です。そんなレオンさんが私は好きです」

これって......いいや、あまり考えない方向で。

「それなら、レオンさんのそばにいてあげてください、僕はこれからこの町を出ようと思ってます。末長くお幸せに」

すると、エレサさんが顔を真っ赤にして言った。

「はい!」






あれから一時間。俺はお世話になった人達に挨拶に向かった。なぜなら俺はサウシャーナから旅立つからだ。まぁそんなこと言ってるけど、正直そこまで過ごしてないし、あまりこの町に関わってないから挨拶に行くというのはどうかな?って思う。だが、この世界に来て親切にしてくださった人達だ。礼は言わないとだな。それで、一通り挨拶をし終わった俺は、町外れにいる九尾に会いに来ている。

「よう、九尾」

「なんだ、お主か」

「俺はこれからここを旅立つ。黒龍の一件、本当にありがとう。九尾、お前のことは一生忘れない。元気でな」

急過ぎたかな?でもまぁその方が悲しくなくてすむだろう。短いあいだだったが世話になった。

「何を言っておる。ついていくに決まっているだろう」

「え、まじで?だって、会って間もないのに......」

「はぁ......お主は分かっておらんな。一度ともに戦った人間は我々幻獣にとっては契約を交わしたようなものだ、それほどまでに幻獣は人間が憎く醜い生き物と思っていた。お主は我のお気にいりだ、ともに旅をしようではないか」

「九尾......っ!あぁ!!」

これが友情ってやつか。元の世界では普通につくっていたものだが、こんなにも嬉しいなんて。

「これからよろしくな!」

「ふん」

九尾は恥ずかしそうにそう言う。友達、いや、仲間ができるのは嬉しいものだ。そう、これからは九尾とともに旅するんだ。
おっと、忘れてないよ。俺の目的は『魔王討伐』だ。だが、それだけを目的に生きていくのは勿体ない。せっかくの異世界だ、楽しまなきゃ!




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