勇者の冒険(仮)
税の取り立て
今日は収穫祭が行われる。
この時期は収穫が最も多い時期でそれを祝う祭りのようだ。この日はこの地を治める領主も参加し、豪華な料理をふるまってくれるらしい。なんと太っ腹な領主なのか。
村人のほとんどが農作業などの仕事をしている中、俺はとくにやることがないので村を見て回ることにした。
村の真ん中では、祭りの準備がなされていた。そこには、村では見ない顔の人たちがおり、その中に村長の姿もあった。
祭りでは、村人全員がテーブルに向かって食事をするというわけではなく、村の中央広場付近には布が敷かれ、そこに座って食事をするようだ。
そして、広場の中央には、綺麗な薪が積まれていた。イメージとしては、キャンプファイヤー のような感じだ。祭りのときはあそこで火を灯すのか。
「よう、ケイスケじゃねーか」
様子を見ていると、村長が話しかけてきた。その隣には立派なコートを身にまとった男性がいた。
「あぁ、紹介します。こちらは旅人で先日お話しした村を救ってくれたケイスケという者です」
村長は、傍らにいる男性に俺を紹介していた。口調から察するに、村長よりも立場のある人に間違いない。
「ほう、彼が……」
そう言って、俺を上から下まで観察するように見る。見た目は丈夫な布の服に安物のズボンと特に旅人らしい姿ではなかった。
「こんにちは、ケイスケといいます。村を訪れてしばらく経ちますが、あいさつもせずにすいません」
俺は礼儀だと思い、一応謝った。というかこの人が誰な のかも分からないけど。
「いや良い。ときに、君はゴブリンの襲撃から村を救ってくれたそうだな。感謝する。この地域を治める領主として礼を言わせてもらう」
領主を名乗る男は深々と頭を下げてきた。
「い、いいですよ。俺も無我夢中でしたから。どうか頭を上げてください」
領主というのは村長よりも偉いというくらいしか分からないが、きっと領主が頭を下げるなんてめったにないんだろう。隣の村長も驚いていた。
「君には、村を救ってもらったからな。しかし、いくら旅人といえどもこれ以上の滞在は税を払ってもらわねばな。もう少しここに居るつもりなのか?」
急に領主の目つきが鋭くなる。
「そ、そうですよね。えっと、しばらくはこの村に居させてもらいたいので税を払いま す」
「私の領地では、収穫を一部を収めるか、数年の兵役の義務を課している」
げッ。俺、農業とかやってないし、数年も兵役なんて嫌だな。この村から離れなくちゃいけなくなる。
「えーっと……」
ケイスケは困ったように考え込んでいると、領主は閃いたと言わんだばかりに手の平を叩き、提案してきた。
「そうだ、君は魔物と戦えるそうだな。実はな、我が、領地には昔からダンジョンが出現していてな。それを攻略してくれれば、税の免除をしても良い」
領主はニヤニヤと俺を見た。最初からこれが狙いだったのではないだろうか。
昔からあったということは今まで部隊を出しても攻略できないくらい強い魔物がいるのだろう。俺にできるのかな。
さらに悩み続ける俺を見て、領主は 続ける。
「そういえば、君は村長の娘と仲が良いそうだな。もし、このまま税が払えずに村を出たら、彼女も悲しむのではないかな? それに彼女を連れて村を出ようにも私の許可が必要だ」
領主はわざとらしい口調で話し始めた。
これはダンジョンに行かないという選択肢はないだろうな。エルザとはまだそういう関係ではないが、急に出ていったら彼女が悲しむのは確かだ。
「わかりました。ダンジョンを攻略しましょう! その代わり、税の免除の件おねがいしますね」
「約束しよう。後ほど、村長を通して詳しく話そう。村長、この間の件だが……」
それから、二人は事務的な話をする。どうやら、俺の話は終わりのようだ。
「とにかく、二つ目のダンジョン攻略だな。目標があるとやる 気が出るな。がんばろう」
俺は、自分に気合いを入れた。
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