勇者の冒険(仮)

あべこー

準備は大事


「うーん」

目を覚ますと、見知らぬ天井で一瞬どこにいるのかわからなくなった。
 しかし、昨日のできごとを思い出した。

「ここは……、そういえば俺死んだんだっけ。それでここは異世界の村長宅か」

今の自分の状況を確認し、体を起こす。
今日はダンジョンの調査へ行くつもりだ。どうせ、村にいたってやることもないしね。
それにもし、攻略できれば、エルザにいいとこ見せられるし!
俺は自分のモチベーションを上げつつ、村長宅を後にする。エルザの「がんばってね」という言葉をもらいたかったがどうやら仕事 に出かけたようだ。というかこの世界の人は朝が早すぎる。俺もそこそこ早く起きるほうだが、皆夜明け前に起きるのが普通のようだ。
服装は昨日から借りている布製の服を着て出かけた。俺が着てきた私服はジーパンだったので冒険には向かないだろう。

俺は森へ行く前に事前準備をすることにした。まずは商人を訪ねる。

「いらっしゃいませ、どのようなご用件ですか」

「ここには何がおいてあるんですか?」

「今、手元にあるの赤ポーションしかありませんね。基本的に我々、行商人は村で注文を受け、都市へ行き商品を仕入れてくるので、小物の商品しか手元においていないので す」

なるほど。そういうシステムなのか。

「赤ポーションは体力を回復する道具ですか?」

「体力……というか傷を回復するものでございますね」

ふむ。なんとなくHPを回復するポーションのイメージがあったけど、だいたい合っているようだ。この世界のHPは隠しパラメータのような扱いになってるのかな? 魔物にダメージを与えて倒しているからにはHPは存在するはずだ。


「それを3個……」

と言いかけたが、忘れてた。お金なんてないぞ。困ったな。
商人は3個と聞いて、代金を答えた。

「30個 で、30cです」

30cか。そのcという単位はステータス画面で見たことがあった。
ステータス画面を見ると、1000cと表示されている。これは持っているお金のことだったのか。
俺は30cと念じると、手のひらに銅貨が現れた。
お金もアイテムや呪文と同様に念じれば取り出せるのか。手に持っていた硬貨を手渡し赤ポーションと交換した。

俺は商人から離れ、赤ポーションを『収納』した。
あ、そういえば今着ている布の服って装備品に入らないんだな。ステータスに表示されないってことはそうだ。きっとアイテムボックスにも入らないんだろうな。装備品と一般の服とではなにが違うのか。
俺はエクスカリバーをアイテムボックスから取り出し、 腰に差す。

村を後にすると森へ向かった。
森の奥地へ向かう道中、様々な魔物と出くわした。
どうせ、ウサギだのウルフだのと変わり映えのしない魔物ばかりかと思えば、

【コボルト:レベル6】

という見たことのない魔物が出てきた。犬の顔で身体は人間のような姿をしていて尻尾もあった。
俺はちょうどいい相手と思い、呪文の練習をすることにした。
まずは、『イグニス』を唱えると手のひらから火の塊が飛び出て、相手にぶつかった。
しかし、まだ倒れず、こちらに向かって来た。
さらに力を込めて『イグニス』を使うと今度は先ほどよりも火力の強い炎が飛び出た。< br>コボルトは断末魔とともに消え去った。
呪文の威力はある程度コントロール出来るようだ。

今度は『アクア』も使ってみたが、これは水が出るだけだった。とても魔物相手に使うことは出来ない。
最後に『サーチ』を使ってみると、頭の中で何か入力を求められた。
俺は、コボルトと念じると頭の中で対象の位置情報が浮かんできた。自分を中心としてレーダーのようにどれくらい先にコボルトがいるのかがわかった。
これは使えるな。敵を避けて通ることもできるし、逆に魔物を狩るときにも使える。


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