邪神使徒転生のススメ

黒イライ

39.殺し屋

「ここが王都のギルドか…デカイな」

「そうですね…。大きいですね」

流石に地球にある高層ビル程ではないけど、この王都の中でも頭(?)二つ分ぐらいは突き抜けてデカイ。

「…二人とも、見て」

シェイがギルドの入り口を指差していたので見てみると、大きな人だかりが出来ていた。

「何だ、あれ?」

人だかりの中心を見ると男と女の二人組がいる。そしてその周りを男七人が取り囲んでおり、取り囲んでいる男達は全員武器に手をかけていた。

「何だか危な気な雰囲気だけど、大丈夫か?」

囲まれてる二人組の内、男の方は細身で派手な金髪を持ち蒼い眼をしていた。女の方も男と同じく金髪で蒼い眼をしていた。

「…まあ見てなよ。大丈夫だから」

シェイが少し肩を竦めながら、見るように促す。

「あら、兄様。私の目の前に何か映っているのですが」

「アリア、こいつらは虫だよ」

「そうですよね。私達にぶつかっておきながら謝りもせずに通り過ぎようとする可笑しな虫ですね」

少女が嗜虐的な笑みを浮かべて言葉を発する。取り囲まれていた男女は会話から察するに兄妹のようだ。というか、虫って…随分と口が悪いな。

「はァ?てめえらがぶつかってきたんだろうがッ!!調子乗ってんじゃねえ!」

そう言うと男が剣を抜いて飛びかかった。

「あらあら、野蛮ですね。剣の使い方もお粗末です。期待外れですね」

少女が嘆息しながら剣を全て避ける。

「もっと本気で来なよ。これじゃあ準備運動にもならない」

兄と思われる少年も男四人の攻撃を全て躱していた。

「くそっ!何だこいつら!ちょこまかと動きやがってッ!」

男達は一太刀も浴びせることが出来ていなくてイラついてる様子だ。

「兄様、こんなヤツら、相手にするだけ時間の無駄ですよ」

「そうだねアリア。さっさと片付けよう」

二人が話した次の瞬間。七人の男全員が地面に倒れた。

「速いな、あの二人」

シェイの速さに慣れてるから少し感覚がおかしいが、一応見えた。一般人には見えなかったんじゃないか?
あの二人はとても速い。あの一瞬の内に、まるでダンスでも踊るかのように男七人の意識を確実に奪っていた。

「私、あんまり見えませんでした」

ミレイアはあまり特訓はしていないからあの二人の動きは追えなかったようだ。

「あら、あれは…。兄様兄様、あそこ」

「どうしたんだい?………ああ、久しぶりに見る顔だね。行こうか」

兄妹はこちらの方をチラチラ見ながらこの場を離れていった。何だったんだ?

「…二人とも、ちょっと着いてきて」

「え?あ、ああ」

「は、はい!」

シェイは少しギルドを離れた路地裏に入っていった。

「お久しぶりですね。シェイヴァル」

「久しぶりだね」

そこには先程問題を起こしていた兄妹がいた。

「…久しぶり」

シェイって、案外知り合い多いんだな。鬼族だから友好関係も少ないかと思ってたんだけど。この二人は普通に人間みたいだし。

「じゃあ、行くよ」

「行きますよ」

「…はいはい」

次の瞬間、二人とシェイの姿が消え、風が巻き起こった。

「うわっ!」

「きゃっ!」

突如起こった風に俺とミレイアが思わず顔を伏せる。少し収まってきたかと思い顔を上げると、二人がシェイに向かって何度も攻撃を仕掛けていた。

「どうなってんだよ……これ」

兄妹が四方八方からそれぞれの武器や魔法を使い攻め立てる。だが、二人の巧みな連携による攻撃をシェイは見事に全部捌き切っていた。やっぱシェイすげえな。俺だったら十秒持ったらいい方だな。

「…ほい、お終い」

シェイは二人が作った小さな隙を逃さず額にデコピンを食らわせる。

「いったーいっ」

「痛いなあ」

二人が額を押さえながら言う。

「…マヤとミーちゃん、ごめんね。慌ただしくて」

「いや、まあいいけど…状況説明を要請する。俺とミレイアがついていけない」

もう何が何だかだ。ミレイアは口開いてポカンとしてるし。

「…ごめんごめん。ほら、二人とも自己紹介してよ」

「失礼しました。わたしはアリア・アーネット。よろしくお願いしますね。私のことはアリアと呼んでくださいな」

「僕はクリア・アーネット。よろしく。僕はクリアでいいよ」

二人は意外にも礼儀正しく挨拶してきた。さっきまでの男達とのやり取り見てたら結構キツめの性格かと思ってた。

「私はミレイア・ネーデといいます。よろしくお願いします」

「俺は天魔魔夜。今はシェイとミレイアと一緒に旅してる」

「あら、シェイヴァル、一緒に旅してくれる方なんていらしたのね」

アリアが口に手を当てて少しからかうような感じで問いかける。

「…うん、まあね。二人とも優しいし私にも分け隔てなく接してくれるから助かってる」

そもそも鬼族とか俺にとってはどうでもいいことだしな。分け隔てなくもなにもない。

「そう、それは良かったわね」

アリアが少し微笑んでシェイの言葉に返す。

「あの、シェイさんとお二人はどのような関係なのですか?」

ミレイアが俺が聞きたかったことを聞いてくれた。

「ああ、そう言えば言っていなかったね」

「…この二人は、暗殺ギルド《クローサス》のトップ。この兄妹は三年前から私を殺しに来てる殺し屋だよ」

なるほど、殺し屋か。それなら急に戦闘になるのもおかしくないか。……………ってんなわけあるか!!

「何でシェイは殺し屋と仲良くしてんだよ…」

「…まあ、色々あったんだよ。その内話してあげる。今も殺しに来てるのは変わらないよ」

「そうねえ。シェイヴァル、強過ぎて全然殺せないんだもの。もうかれこれ三年目よ」

「最初に仕掛けた時、軽くあしらわれたのは応えたなぁ」

「…ふっふっふっー、私に敵うものなどこの世に存在しないのだー」

「冗談風に言ってますけど、洒落になってませんよね…」

ミレイアの言葉に、シェイ以外の三人が同意を示したのだった。

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