邪神使徒転生のススメ

黒イライ

25.収納

 王都ラグゼナーダに出発するまでの間二日目と同じように《迷宮ミゴン》で魔法石を稼いだ後模擬戦をする、ということを繰り返していたらあっという間に出発の日になった。

 「……よし、まあこのぐらいかな。」

 一週間程過ごした自分の部屋を片付けていた。といっても所有物はあまり無いから基本は掃除をやっていた。
 来た時よりも美しく、だな。よく学校とかで行ってた野外活動とかで言われたな。

 「…シェイはちゃんと片付けられたかな…?」

 前に見た時は部屋の中が大惨事になってたからな。どうやったらあんなに散らかせるんだよ……。
 ていうかあんな荷物最初会った時持ってなかったよな?何かの魔法かスキルか?いや、スキルにそれっぽいの無かったしな……。まあ後で聞けばいいか。

 「とりあえずシェイの所行ってみるか。」

 片付けもしかしたら手伝えるかもしれないし。まあ終わってたらそれはそれでいい。



 「シェイー、マヤだけど、入ってもいいか?」

 扉をノックして少し待つと扉の向こうから返事があった。

 「…マヤ?どうぞ。」

 「お邪魔しまーすっと、おっ、部屋片付いてるんだな。」

 一週間ぶりに入ったシェイの部屋は存外に片付いていた。

 「…むぅ、何。その反応は。失礼な。」

 シェイは少し頬を膨らませて不機嫌そうな顔を浮かべた。

 「悪い悪い。でもこの前のあの惨状を見てたから仕方ないと思うのだが。」

 「…確かにあの時は少しだけ散らかってたかもしれないけど…。私だってやればちゃんと出来る子。」

 少し、だけ。

 「……色々言いたいことはあるがまあとりあえず置いとこう。準備出来てるなら早く下に行こう。メヤさんに挨拶しないとだろ。」

 「…うん、分かった。」

 シェイも一週間お世話になった部屋にさよならを告げ、一緒に下に降りる。
 ちなみにシェイに訊いていたことだがシャワーのある宿は珍しいらしく、シャワーがある宿は大分お高い所らしい。



 「一週間少しでしたがお世話になりました。」

 「…お世話になりました。」

 「いいえ〜、私も久しぶりに楽しい時間を過ごさせてもらったわ〜。ありがと〜。」

 メヤさんはいつも通りのほんわか笑顔で俺達の挨拶に答えた。

 「これは私からのほんのお礼よ〜。」

 そう言うとメヤさんは二枚の黒いカードをそれぞれ俺達に渡してきた。

 「メヤさん、これは…何ですか?」

 「…これは、収納魔法が付与されてるカード、ですよね?」

 「さっすがシェイちゃ〜ん、詳しいわね〜。」

 「…私も一応持ってますし。」

 するとシェイがローブのポケットから赤色のカードを取り出した。

 「収納魔法…ってことは物とかを入れられるってことか?」

 「…うん、これにはある程度の荷物なら入る。これがあれば旅は便利になる。」

 なるほど…。シェイはこれに自分の荷物を入れてたから荷物持ってなかったんだな。

 「…それにしても、黒いカードなんて私見たことない。一応触れば収納魔法ってことは分かったけど…。」

 「ふふっ、それはそうよ〜。だってこのカード私の自作だもの。このカード、シェイちゃんが持ってるカードよりもーっといーっぱい物が入るわよ〜。」

 「…私が持ってるカード、この世界で一番収納量があるやつなんですけど…。」

 うーむ、シェイの表情から察するに収納量やばい程入るんじゃないか?シェイ大分呆けてるし。

 「いいんですか?そんなすごいカードを俺達にあげても。」

 「別にいいわよ〜。私が魔法を付与する魔法で収納魔法をカードに付与しただけだから〜。」

 「…ありがとうございます、これがあれば大分楽に王都まで行けると思います。」

 「ありがとうございます、メヤさん。またこの街に来た時はここに泊まりますね。」

 「うんうん。それは嬉しいわね〜、楽しみに待ってるわ〜。二人も《金龍祭》楽しんで来てね〜。」

 笑顔のメヤさんに見送られ俺達は宿を後にした。



 「…それにしてもこのカード、本当に私のやつよりいっぱい入るみたい。」

 「そんなの分かるのか?」

 「…うん。このカード他にも少しだけ触ったことあるけどメヤさんから貰ったこのカードは魔力の流れがものすごく複雑。こんなの誰にも真似出来ない。」

 そんなにすごいものなのか。俺は生憎あいにくそういうことは分かんないからな。

 「この収納カードって珍しい物なのか?」

 「…うん、大分珍しいよ。収納魔法は発動するのに普通の魔法と違って適性があるみたいだから使える人は限られてるよ。収納魔法以外にも適性がある魔法はあるよ。私は昔の知り合いがどこがで手に入れたのを貰ったの。」

 うーん、そんな珍しい物をぽんぽん人に渡せるメヤさんって…不思議な人だな。







 「ふふっ、あ〜楽しかったわ〜。マヤくんとシェイちゃん、面白い子達だったわね〜。」

 魔夜とシェイが宿を出て行った後メヤは台所で一人言を呟いていた。
 すると────

 『もー、二人と話してみたいからって好き勝手してー!最後の収納カード、ちょっと反則級じゃ無かった?』

 何も無い虚空から声が響いてきた。

 「ふふっ、まあ別にいいじゃないの〜。減るもんじゃあるまいし〜。」

 『むー、まあもう渡しちゃった物は仕方ないからね、別にいいけど…。』

 虚空から聞こえて来た声は少し拗ねたような声を出した。

 「も〜、拗ねないでよ〜。」

 二人は仲の良い姉妹のような雰囲気で会話を成り立たせていた。

 「これからどうなるか楽しみね〜。次はどうやって会おうかしら?ふふっ、楽しみだわ〜。」

 『あんまり変なことしないでよ…そんなに影響与えなくても大丈夫だと思うからさ…。』

 メヤは小悪魔のような笑みを浮かべ、虚空から響く声は呆れた様な声を出していた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品