いじめられっ子は、異世界で幸せに
6
「……。座学は完璧のようね。でも、魔法はどうかしら?」
「魔法、ですか?」
 あの後、ほかの教科でもテストをしてみたが、どれも満点だった。
 ルクレシア学園への入学試験は、座学の他に、どうやら魔法というものもマスターしないといけないようだ。
「そう、魔法よ。家で魔法を使うのは危ないから、外に出ましょう。」
 草原に来た。
 (わぁ……!!綺麗な空気、ここなら魔法、上手にできるかな…?)
 
「じゃあ、魔法を発動して見せるわね。……《風の乙女の吐息は、私の頰を優しく撫でる》…」
 緩やかな風が吹いた。
(これが…魔法……!)
「すごいです……!どうやってするのですか?」
「ふふ。コツを掴めば簡単よ。風よ吹け、って強く思いながら、詠唱するの。」
「分かりました。やってみます。…《風の乙女の吐息は、私の頰を優しく撫でる》…。」
(風、吹いてください……!お願いします!)
 思いとは裏腹に、風はなかなか吹かない。
 やはり、考えながら詠唱をするのは少し難しい。
 しかし…こうすればどうだろうか?
「まぁ、私も最初は一週間かかったし、当然よね。エリーも一週間頑張りなさ…って、え!?」
「…《風の乙女の吐息は、わたしの頰を優しく撫でる》…。…できた!!」
(言葉のひとつひとつに思いを込めるようにしたら、できた!!)
「エリー……もしかして、貴女……。」
「……なななな、なんですか??」
(もしかして、わたしの正体がバレた!!!?)
 背筋に冷たい汗が流れる。
 正体がバレたらそのときはそのときだ!なんて考えていたけど、こんなに早くバレてしまうなんて……。
「貴女……天才?」
「……へ?」
「今まで、勉強のことになると逃げてばかりで、まったくしたことがなかったのに、いきなりできちゃうなんて……。もしかしたら、ルクレシア学園への入学も、夢ではないかもしれないわね。」
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