いじめられっ子は、異世界で幸せに

藤色

3


 少しキツめの顔立ちの美人に引っ張られて行くと、リビングに着いた。

 そこには、もう一人男の人がいた。優しそうな顔の人だ。

 そして、テーブルの上には、パンやシチューがあった。


「あの、だから……。」
「さ、朝食食べるわよ!」

 (さっきから思ってたけど、この人、人の話し聞いてくれないなぁ……。)

 
 少しキツめの顔の女の人と、優しそうな顔の男の人は、朝食を食べ始めた。


 「どうしたんだい、エリシア。ご飯、食べないのかい?」

 優しそうな男の人が、そう口を開く。


「あの、わたし、エリシアさんじゃないんですけど……?」
「まーだそんなこと言ってるの?…いいから早く食べなさい。お腹空くわよ。」
「だから違いま…「ほら、あーん。」「もごもご……」

 (無理やり食べさせられた…けど……。)

 「美味しい、です……。」
「ふふ、最初からそう言えばいいのよ。」

 久しぶりにまともなご飯を食べたので、思わずそう口にしてしまった。

 しかし、ふと我に返る。

(わたし、エリシアさんじゃないのに……。こんないいもの、食べちゃっていいのかな?エリーさんじゃないってバレたら、どうしよう…?)

「どうしたんだい、エリシア。急に青ざめて。どこか具合が悪いのかい?」
「な、なんでもありません……。」

(と、とにかくバレないようにしなきゃ!!)

 わたしの正体がエリシアさんではないことを隠そうと必死になって考えていると、不思議と食事も喉を通った。

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