努力は才能、才能は堕落

ゆーD

第19話『研修旅行編』


 宿に戻った大虎は夕飯を食べているところだった。
 学校が用意したうえにこんな豪華なホテルのようなところから出る料理ということもあって大層な食事が用意されている。
 その中でも特に美味な料理がこの小籠包。
 中の肉汁が透けて見えるほど薄い皮に食欲そそる香り。
 ひとくち食してみると濃厚な肉汁が口の中いっぱいに広がり鼻の奥そこまで味が広がる。
 肉汁の量がとても多いためこぼさず食べるにはレンゲが必要だろう。
 皆、高級肉にばかり目をくらませそちらばかり食べているがこの小籠包は今日食べた中での最高の逸品だ。
 バイキング制のため元ある席からすぐに補充できるようにとこの席に変えてもらったほどである。
 しかし皆は先程も言ったように高級な肉ばかり意識しているためなるべく席を肉から遠ざけたくないらしく大虎は一人でこの席に移動してきたのである。
 様々な文化の料理が用意されているためその区画が用意されているのが原因でもある。
 日本料理はもちろんのこと中華、イタリアン、アメリカン、コリアンなど様々な料理がある。

 大虎は中華の区画にいるが料理の部類としては目新しいものではない。普段食べないような高級品を皆食べているためこの区画には人が少ない。
 とはいえ、この学校自体金持ちが多いため普段とあまり変わらない食事をしたいという生徒も多いのだろうが。

 そのようなことを考えていると目の前にコック姿の壮年の男が座る。

「なんでコックやってるんですか、お義父さん」
「お?やっとその呼び方に慣れてきたのかな?それよりどうだここの料理は?」
「ここの料理は正直この中で一番美味しいと思ってます。確かに最初は高級肉や他の高級食材で作られた料理に目がくらみましたけどこの料理食べてからはずっとここにいますね」
「そうだろうそうだろう!」
「やたらと機嫌がいいですね・・・・・・」
「なんてったってこの料理はこの私が作ったものだからね」
「・・・・・・え?!料理できたんですか!しかもこんな上手に!」
「まぁ男の嗜みだよ。そんなことより一つ話しておきたいことがあるんだがいいかな?」
「あ、はい。大丈夫です」
「香織ちゃんから話を聞いたのだがあれは事実なのか?」
 その声は低く強く周りに聞かれたくないがためだったが体内から溢れ出る殺気のおかげで台無しになっていたため大虎は慌てて静寂シュティレをかける。
 これで多少のことがない限りこちらの様子には気づくことが出来ないようになった。
「事実です。僕自身が確認をしましたから」
「それでテロ組織の名前はわかったのか?」
「・・・・・・分かっているのはひとつだけですがかなりの大物です。『黒炎』がいます。ただ名前が同じだけかもしれないし仮に元の『黒炎』でも戦力は大幅に落ちていると考えます」
「『黒炎』だと・・・・・・?それはでも私たちの部隊で殲滅したはずでは?」
「はい。しっかりと報告は入っているので情報としては確かだと思われますし魔法も使用して虚偽の発言があるかも確認もしたため事実かと思われます」
「・・・・・・そういえば最近壊滅寸前だった『黒炎』に新メンバーが3人入って勢力を取り戻したと誰かが噂していたのを思い出した。戯言かと思い無視してしまったがもしかしたらそういうことかもしれない」
「3人?もしかしたらまた例の件かもしれません」
「・・・・・・これで何人目だ?さすがに庇いきれんな」
「『黒炎』のテロということにて3人とも始末します。強さ的には大したことありませんので」
「はぁ・・・・・・。一応今回任務を担当する他の二人にも伝えておくように」
「了解しました。ただしただの3人ではないのも事実です。そのため多少音が出てしまううえに地形変動もあるかもしれません。そこのところを学園でお願いできますか?」
「うむ。今回私は今夜で帰らなければならないのでな、香織ちゃんに伝えておこう」
「ありがとうございます。作戦決行は深夜になります」
「・・・・・・あぁせっかく内容が決まったところ申し訳ないんだが今夜はやめてくれ」
「今夜なにかあるんですか?」
「ここだけの話今夜に軍の組織がやってくることになっている。緊張感を持ってこの島に入ってくると仮定するならば今夜に行動を起こすと勘づかれる可能性が高い」
「軍が到着するのは2日後と聞きましたがそれは偽の情報ですか?」
「いや偽の情報というわけではないよ。まず小隊が今日きてから2日後に大隊という流れだ。大隊と言っても量的には100人いない程度だとは思うがね」
「それでその部隊の名前はなんですか?」
「『妖焰』だよ。今後の勉強になるならば少しでも強い部隊を見せた方がいいからね」
「な、なんでそんな厄介な部隊送り込むんですか」
「なんてったって強さだけなら『闇光』の次に優秀な部隊だからね?これから魔法士になる生徒がいるなら参考にしてもらいたい」
「確かにあの部隊は戦闘だけなら優秀ですが外見が・・・・・・」
「ああ・・・・・・実は私も同じことを思っていてね・・・・・・。確かに強い。強さだけなら超一流だ。しかしなにせ皆揃って外見がヤクザ過ぎる」
「僕は初めて見たのが結成時でしかも事務所でしたから疑いませんでしたがあれが顔合わせのしたことが無い戦場だったらどうなっていたことやら・・・・・・」
「まぁ確かに外見は恐ろしいが内面は真逆だからなにか事件が起こることはまずないだろう。しかし仮にここにテロリストが到着した場合のみ対処してもらおう」
「僕らのことは伝えないということですか?」
「あぁ、なにせ彼らはああみえて『闇光』のことを尊敬している。いや崇拝と言っても過言ではないだろう。その『闇光』が動くというのに自らが動かないというのは納得出来ないのではないか?」
「あはは・・・・・・そうなんですかね?」
 確かにそうではあるのだが崇拝されていると言われてそうですねと答えられるほど大虎の神経は太くない。
 ましてあのいかつい集団に崇拝されているというのは本当に世界最強のヤクザの集団になってしまううえにそのボス扱いは洒落にならない。
 しかし『妖焰』では優しすぎて脅しにならないのではないか・・・・・・。


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