努力は才能、才能は堕落

ゆーD

第17話『研修旅行編』


 学園の生徒全てがこの砂浜を去った後、奴らに向けて振り返った。

「いったい何のつもりだ?随分敵視されてるようだが」
「へっ、わかんねえならそれで十分だ。クソ雑魚。
 運良くお前だけが俺たちのことに気づけたらしいからな?
 この学校で俺たちに殺される一人目にしてやるよ」
「偉そうにしてるが自分が負けるということを考えないのか?ちなみに俺は運良く気づいたんじゃなくて普通に背後からの殺気に気付いただけだ。
 まぁこの島にどう来たかは知らないがな」
 黒のローブを着た男が5人。このリーダー格の人間は簡単にローブを外し顔を晒しているが馬鹿としかいいようがない。
「今死ぬんだからそんなこと知る必要はねぇよ!
 しかもお前一人で俺たち5人に勝てるとでも思ってるのか?所詮は学生の考えといったところかよ!」
 そういうと後ろの奴らと同じく笑い始める。

「お前らに魔法を使う必要も無いな」
「いいたいことはそれだけか?やっちまえっ!」

 大虎は背中に隠し持っていた長さ10cmほどのナイフを4本出すと敵が魔法を放出する前にリーダー格と思われる人物以外の頚動脈を投擲で切り裂いた。
 大虎は予備動作なしで指でコインを放つようにナイフを弾き出し、抵抗する間もなく倒した。

 リーダー格の黒のローブはそれに驚き、そして恐怖し逃げようとするがその判断は大虎を相手にした時点で遅かった。

 大虎は縮地を利用し一気に距離を詰めるとリーダー格の頭をがっしりと掴み地面に押し付けた。
 元から逃がす気はないためロープ型の魔力を放出して縛り上げる。
 
「それで?何が狙いだ」
「・・・・・・っ!言うわけねえだろ・・・・・・」
 大虎は躊躇いなくナイフを相手の太ももに突き刺す。
「ぐあああああああああ!!」
「わかったら早くいえ、時間が惜しい」
「な、なんも知らねえんだ!ただボスがお前を殺れって命令してきたからっ!」
「所詮はテロリスト集団の末端ってことか。
 それでお前の組織はなんだ?」
「い、言えねぇ・・・・・・」
 大虎は問答無用でナイフをさらに深く突き刺す。
「ぐああああああああっ!!や、やめあああああ!」
「わかったら早く言え」
「・・・・・・『黒炎』だ・・・・・・」
「・・・・・・『黒炎』だと?・・・・・・わかった。それじゃ逃げてもいいがボスに手を引けとでも言っておけ。
 2日チャンスを与える。それ以降は自分で判断しろ」
 そう言い立ち去る大虎だが内心は違った。

『黒炎』。それは一時期誰もが恐れたテロ集団の名前でテロ組織というよりは傭兵団と言った方が近いのか屈強な戦士らが一挙に集結している組織だ。
 しかしそれは一年前に討伐隊が出て壊滅させられたはずだ。
 それが何故か存在していることを不可解に思いつつも一年でもしも屈強な戦士を集められているのならばかなり厄介な組織になってしまうため本気で殲滅作業に出なければならない。
 

 先程までの黒のローブがいたところから少し離れ大虎は偵察型詮索魔法『偵察機エクレルール』を使う。
 この魔法は文字通り魔力を飛ばすだけで敵の居場所を掴む有能魔法だ。
 ただ魔力量が多くないとすぐに魔力切れを起こすうえに雨の日や霧が深い日は魔力の痕跡が消え使えない等もあるため使える場面は限られてくるが現状最強の偵察魔法はこれしかない。

 大虎は『偵察機』を島全体に広げ人間の反応、魔力の痕跡、船や魔導機具の探知を中心に行った。
 すると大きな集団が8つあるのが確認できた。
 一つは第一高校の宿。それ以外は恐らくテロ組織のものと考えられる。
 そしてこれからあと二つは増えると考えると9つものテロ組織と相対することになる。
 大虎自身は問題ないがこちら側は学生で人を殺すのは躊躇われ、人を殺す術もない。
 そうなると理事長頼りになるのかそれとも学園の先生が頼りになるのか。

 とりあえず『偵察機』を解くと大虎は汗を拭き木の幹を背に休息をとる。
 消費魔力が激しい魔法を島全体にまで広げそして探知するものを増やしていったことで莫大の魔力と集中力が持っていかれた。
 そして大虎が今この状態でいられるのはこの魔法も闇光で改良され効率があがっているからである。
 本来であれば魔力が枯渇し今頃気を失って倒れている頃である。

 大虎は少しの休息を挟んだ後すぐさま宿に向けて走り出したのだった。


 宿に着くとそこは宿というよりは高級ホテルというのがふさわしい雰囲気で金の装飾はもちろんのこと大理石やシャンデリア、高そうな壺までも置いてある。
 
 その宿の一室である部屋の前に今大虎は来ていた。
 美瑠香が言っていた呼び出しを貰い、部屋の前までは来ていたがテロ組織の話をするべきかとても悩ましいところだ。
 こんな話信じるかわからないうえにこの研修旅行の裏の目的がはっきりしていない以上あまり踏み込めないのが現状でこの話をして揉み消されでもしたらどうしようかと考えていた。

「おい、神木いつまで部屋の前にいるんだ?早く入れ」
「・・・・・・あ、ああすみません。気づいていたんですね」
「仮にもこの学園の教師だからな」
 大虎の担任の教師は水樹香織。かわいいと言うよりは綺麗な顔立ちをしていてスタイルは恐らくこの学園一と言っても過言ではないだろう。メリハリのついた体に端正な顔立ちをしているうえに無駄な色は一つもないほどに綺麗な金髪を下ろしており、とても扇情的だ。
 可愛らしい名前とは裏腹に男っぽい性格をしていて現に今もワイシャツ一枚に黒のパンツを履いているだけでその強調された胸に目が嫌でも引き寄せられる。
 「・・・・・・それで話をする前に神木。なぜお前はそんなに悩んでいる?」
「先生はこの研修旅行の裏の目的についてご存知ですよね?」
「・・・・・・入れ。それは今私が話をしようとしていた内容と遥かに近い」
「分かりました・・・・・・」



「先生、この研修旅行でいったい何が起こるんですか?」
「この学校の人数比に気付いているか?」
「2、3年生の人数は少ないのに1年生の数がやたらと多いってことですか?」
「ああ、その通りだ。ただそれだと教える生徒に対して教員側の負担がものすごいことになるし身につかない生徒も多い。それで今回のことが実行された」
「それはテロ組織に依頼してこの場所を襲撃してもらうことですか?それで恐怖した生徒は今後立ち直れないでしょうし退学者及び停学者は増えることになり学園の意向にも沿っていると思います」
「テロ組織?こちらが依頼したのはこの国の軍だ。
 確かに襲撃に関しては間違っていない。ここを襲撃してもらう。そうなれば今お前が言った通りになるだろうしな」
 大虎は少なからず感心していた。
 確かに軍に頼めば被害は少なく命令に忠実になってくれるうえに生徒への恐怖心も埋め込めることが出来る。
 それは理想的だろうしやり方としても確実だ。
 となると、先ほどのテロ組織は一体・・・・・・。
「それで先生が僕を呼び出した理由とは?」
「あぁそれなんだがお前には一切の手出しをしないでほしい。お前の素性は大雑把ではあるが学園長から聞いた。となるとお前ほどの実力では襲撃された部隊が壊滅しかねない。依頼したのはこちらなのに追い返した挙句兵士は殺されていますでは洒落にならないからな。
 だからお前には先に話しておく必要があった。これを頼むためにな」
「・・・・・・それはいいですが、先生には質問があります」
「なんだ?」
「この研修旅行の目的も理解していますし、学園長が何故こんなことをするのかも理解しているつもりです。
 しかし、この島の状況を考えれば手だし無用というのは納得できません」
「・・・・・・どういうことだ?」
「襲撃予定の軍はこの島に到着されていますか?」
「いや二日後の予定だからまだのはずだ」
「それではこの島に現在七つのテロ組織集団があると思われます。それはご存知ですか?」
「は?それはどういうことだ。しっかり説明しろ」
「分かりました。砂浜からこの宿に帰る前、5人の男にけしかけられました。そいつらを拷問しても大した情報が得られなかったため偵察機エクレルールを島全体に使用しどれほどの勢力が隠れているかあらゆる手を使って調べました。
 その結果大きく分かれている集団が八つあり一つはここの宿、もう一つは別の海岸、山の中などさまざまな場所に散開していてとても一つの勢力とは思えません。
 つまりこの島には現在七つのテロ組織があると考えられます」
「その男達は軍の兵士だったのではないか?」
「僕の人となりを聞いているのではあればわかるはずですがあれは軍の動きではありません。それだけは確実に言えます」
「わかった。こちらで対応しておこう」
「いえ、先生。テロ組織の殲滅作業、僕にやらせてもらえませんか?」
「な、何を言っている!仮にもお前はここの生徒だろう!」
「結局僕は手出し出来ないんでしょう?
 それに先生が対処できるレベルではないです」
「・・・・・・お前ならできる、とでも言いたいのか?」
 香織はその目を細め少なからず殺気をぶつけるがそれに害した様子もなく大虎は話を続ける。
「お前ならというのは確実とはいえませんが確実にあと二人いれば可能です」
「その二人というのは?」
「僕の所属しているところにいるメンバーです。ちなみにですがもうこの島には呼んであります」
 大虎は『偵察機』を使用した直後闇光専用の特殊コードを用いて連絡を交わしていたのだ。
「・・・・・・はぁ、お前を止めてもその二人は行動を起こすのか?」
「ええ、もちろん。ですがこの二人が動いて僕が動かないということはないのでご安心を」
 そう言いつつ体の内から出る殺気は恐らく止めても無駄であろうということが証明されていて香織はため息を吐くしかなかった。
「何がなんでもというわけなら止めないがお前の本職は今学生だ。それを心に秘めておけ。後戻りできないような行動は控えろ」
「分かりました。可能な限り善処します」
 その言葉には信憑性など皆無だろうと香織自身は感じるのだった。
 

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