努力は才能、才能は堕落

ゆーD

第14話



「ひとつ言う。今からお前達に教えることを少しでも俺で実験しようとしたらすぐさま帰る。いいな?わかったな?」
「「「「「「えぇ・・・・・・」」」」」」
「えぇ・・・・・・じゃないっ!!!」
 なぜこんなことを言っているのかというと先程このSクラス生徒は加減を考えず俺にアホみたいに魔法を打ってきた。
 上手く避けてはいたけどあれに当たったら致命傷だぞ・・・・・・。しかも途中から楽しんでボコボコと何も考えずに魔法を放っていたせいで他の生徒はもう梓と琴里さんくらいしかいない。

「まずだな?人に魔法を打つとき手加減をしろ。わかったな?いいな?
 それとな?力量差を考えろ?例え一人がどれだけ強くてもこれだけの優等生がかかってきたらたまったもんじゃない。わかったな?
 それとな?━━━━━━━━━━━━━━」

 と俺の怒りは説教という題名の元続くのだった。



「そしてこれから本題に入るけどみんなのデバイスをみて自分の使いやすいやつを選んでるのは数人かな。
 それ以外は無理して自分に合わせようとしている感があって強くなりたいならおそらくそのデバイスじゃこれから努力したとしても伸び代はたかが知れてるな」
「でも僕が使ってるものは剣型の中でも最高品質だよ?しかも自分の持ちやすいように色々変えているし振りやすいようにもしてる。個人的にはかなり使いやすいよ」
「まぁそれは慣れだろうな。慣れれば多少は問題なく扱える。
 まぁ俺が言いたいのはそういうのではなくて武器の中でも種類があるだろ?その話だよ。
 藤堂は今長剣を使ってるだろ?お前の適正は確実に斧だよ。
 筋肉の付き方からもそうだし背丈、どの魔法が得意か色々と見方って結構あるんだよ」
「でも斧を使ったらスピードが落ちてしまう。
 確かに力は斧の方が強いだろうけどその分圧倒的にスピードが落ちる。
 僕は力で押し切るタイプじゃなくスピードで圧倒していくっていうプレースタイルなんだよ」
「まぁそうだな。けど今まで鍛えてきた分格段に動けるはずだよ。
 あの斧にも剣と同じく種類がある。
 想像しているのと同じく先端だけが武器のものもあれば全体が武器になっているものもある。無論柄もな?
 だけどそれだけじゃない。
 剣と斧を掛け合わせたものもあるし斧と杖を掛け合わせたものもある。
 剣で慣れてしまったというなら剣と斧のソードアックスを使えばいい。
 ただこれは今までの剣の数倍は攻撃の選択肢が広がるうえに手先、体の動かし方が特徴的だから慣れるまではかなり大変だけどな」
「攻撃の手数が多くなるならやるしかないよ」
「そうか」
 攻撃の選択肢が広がると言った瞬間に瞳に力が宿ったのでやはり最近伸び悩みがあったのだろうと感じた。
 それほどまでに力を求める理由は未だにわからないが。

 しかしこのクラスの大きな問題は━━━━━
「加藤、お前はなんで力任せな戦い方をしてる?」
「そんなの決まってんだろ、おれは力で押し切るタイプだ」
「いや違うね、お前は根っからの支援魔法タイプだ」
 周りがざわつく。まぁこのガタイで力押しタイプでないのは驚くのも当然か。
「か、勝手なこと言ってんじゃねえよ・・・・・・」
「勝手?さっき藤堂に頼られたときに無詠唱で瞬間的に自分に魔法かけたときに俺は目を少し疑ったんだよ。
 それで無詠唱ゆえに威力も少し落ちているはずなのに支援に回っていた権藤と片江の魔法は受け付けてない。
 つまり支援に徹し集中して魔法を使ったこの二人よりもお前が片手間で自分に掛けた魔法の方が優秀なんだよ。
 しかもその支援魔法最近やり始めたばかりだろう?
 元から力は強かったんだろうがそれでも支援魔法の方が圧倒的に伸び代があるし極めれば最強だぞ?
 なにせ自分にまで最強の支援魔法がかかるんだから。
 今の力任せなやり方はいつか限界が来る。そのときに支援魔法があればどうだ?
 手数が増えるうえに仲間の底上げもできる。
 これほど最適なものはないと思うぞ?」
「いや、俺もそんなことわかってんだよ。
 いつか限界が来るというよりはもう限界を迎えかけてる。
 だから最近支援魔法を試しに使ってみたら案外自分にフィットしてな。
 だが今まで力押しできた分俺が支援に回ると考えると少し躊躇っちまうんだよ」
「その気持ちはわかる。今までは自分が前に出て支援してもらっていたんだから。
 だけどその支援がないとどうだった?
 その戦いは熾烈を極めたはずだ。
 支援魔法があって熾烈を極めた戦いは通常状態だとほぼ100%勝てないものだ。
 確かに支援魔法は前衛側から比べると馬鹿にされることが多いし見下されることも多い。
 しかしそんな支援魔法がないと勝てるものも勝てないんだよ。
 今のスタンスを崩したくないのならさっきみたいに自分に支援魔法をかけるだけじゃなくて周りにも支援魔法を掛けながら前衛で戦えばいい。
 ただそれは大きな視野が必要になる。
 支援魔法がきれたばかりの味方にすぐさま魔法をかける必要があるからな。
 これにはフィールド全体を常に見渡せるほどの大きな視野が大切なんだ。
 加藤みたいにすごいセンスがあればできるはずだがそれには今までの大雑把なところを直していかないとな。
 大切なとこを見落として仲間を失うことだってあるからそういうときに後悔するものは少ない方がいいに決まってる」
「あ、あぁ。そうだな・・・・・・。俺、やってみるわ」

 今いった二人は戦ってみて分かったことだけ言ったが実際はもっと大きな問題があるはずだ。
 他の生徒にも必要なことは教えていく必要があると思う。
 それほどにこのSクラスの生徒は力を欲している。
 

 ただ。このクラス一番の問題は。
「健介、少しいいか?」
「あぁもちろん。ただ俺のスタイルのことだったら少し離れて話さないか?」
「当たり前だ。聞かれたくないこともあるだろうし」



 というわけで今俺たちは裏実技訓練施設の休憩所に来ていた。
 普段は賑わっているそうだが1年Sクラスが魔法を乱発したせいで俺と健介しかいない。

「健介なんでなんだ?」
「俺が支援魔法をなんで使ってるかって話か?」
「あ、あぁ・・・・・・わかってたのか」
 遠回しに聞こうと思っていた分出鼻をくじかれた。
「もちろんわかっているよ。なにせ俺のことは俺が一番よく知ってる」
「じゃあなんで健介は支援魔法を使ってる?
 その圧倒的な攻撃センスはこのクラスダントツはおろか学校でも指で数えられるほどしかいない」
「大虎にそこまで言ってもらえるのは嬉しいね。
 でもこれは俺自身の枷でもあり償いでもある。
 すまないがこのことは皆には言わないでほしい」
「わかった。誰でも事情があるし気にすることじゃない、それじゃ戻ろうか?」
「おう、大虎ありがとうな」
 そういう健介は少し嬉しそうだった。

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