俺の妹が知らぬ間にネットでグラドルやってたんですけど

青キング

第18話家族にグラドルが居るって、すごいことなんだな。

グラビアファンのRIRUを勧めてきた友達に、妹と母の親子グラビアの写真集を無理矢理貸された。
もう見たよ、とは口が裂けても言えず受け取ってしまった。
でも妹が職業としてグラビアを始めたことの実感を得られた。
遠くにいってしまった気がする。同じ屋根の下で暮らしてるのにな。
不意に部屋のドアがノックされる。
「兄さん、入っていい?」
なんとか聞こえる声で妹が断ってきた。
兄の部屋を訪ねるなんていう珍しい妹の行動に、疑問を覚えつつも許可した。
ドアを開けて妹が入ってくる。仰向けになっていた俺はベッドから身を起こす。
「兄さん……」
「なんだよ?」
真っ直ぐに俺と対面した妹は、どこかしら躊躇している口振りでその先を言えずにいる。
「何か用でもあるのか?」
妹は悩む様子を見せてから頷いた。
「見てもらいたいな、って」
「何をだよ?」
「ええと、その……」
またも言葉に詰まり、視線を外す。
「み……」
「み、なんだ?」
「みず……ぎ」
「みずぎ? なんだそりゃ、って早まるな!」
案に相違した単語に、俺は動転し立ち上がり後ろの壁まで後ずさる。
「ダメ、かな?」
「ダメだ!」
「なんで?」
「なんでって、あれだよあれ」
「あれって?」
「くそっ、察しろよ! 我が妹!」
「あれ、でわかるわけないじゃん! 抽象的すぎ!」
声を荒らげたら、癇癪を起こして怒鳴り返してきた。
しばし睨み合ったが、馬鹿馬鹿しくなり俺は張り合うのをやめた。
「こんなことで喧嘩するのも馬鹿馬鹿しい」
妹も引き下がった。
「ほんとだよ、馬鹿馬鹿しい」
どちらからともなく俺達は笑い出した。
妹がジャージのニットワンピースの裾をつまんで言う。
「水着になってもいい?」
「いいぜ」
どうってことはない。ブログ画像や写真で見慣れてる__うん待てよ? ってことは生では見るのは初めて__か。
俺は息を呑んだ。
「どうかな?」
藍色のモノキニの水着で蠱惑的な姿を目の前に、唐突に俺の肉欲が敏感に刺激されてある種の恐怖を感じ腰を抜かす。
要するにムラムラしてるわけだ。相手は妹なのに。
「兄さん?」
腰を抜かして壁に持たれて座る俺を、妹が膝に手を置いた中腰で顔を覗き込んでくる。
両腕に必要以上に実った胸が柔らかそうに挟まれている__否、挟んでいる?
ようやく思考が通常に帰ってきた。妹はわざとこんな姿勢をとってるんだ。違いない!
「おい、あざといぞ」
「わざとしてるの、バレちゃった?」
俺は頷く。
妹はへへへ、と照れ笑いを浮かべた。
「さすが兄さん、立ち直りが早いね」
「当然だ」
正直、危ないところだった。あれで垂れた髪が俺の顔にかかってたら手を出さない保証はなかった。
それを感づかれないように、極力見栄を張ろう。
「やったね、ドキドキしてる兄さんが見られて良かった」
「……そうかい、そうかい」
無邪気に喜んだ妹に、ふてくされ気味に返した。
と、ドアの外で足音が聞こえて止まった。
「りくと、入るわよ」
断りの答えも待たず、母が部屋に入ってきた。俺と妹を交互に見て嫌にニコッと笑った。
「ちょっと待っててね、りくと。お母さんも着替えてくるから。絶対逃げちゃダメよ?」
意味深に釘をさして、母は急ぎ足で去っていった。
妹が中腰から上体を起こして、小さく笑い言った。
「兄さんはこれから私のファンだよね?」
「いいや」
俺は否定した、『これから』じゃない。
「俺は最初からお前の、RIRUの大ファンだ。それは揺らがな……」
「はーい、りくと。お母さんも自慢の水着に着替えたわ、ほら見て見て」
最後の言葉を遮られた。
俺は母に辟易して、不満な目を向ける。
「母さんまで、嫌がらせか?」
「どう、りくと?」
パレオか、悪くない。むしろ感嘆したいくらいだ。くびれはないけど、パレオの布から覗く素足がこの上なく綺麗でそそられる。
「……悪くないな」
「ふふっ、りくとは素直だわ」
母はさも嬉しそうに顔を綻ばせた。
俺はふと気づく。二人のグラビアアイドルを同時に見られていることに。そして査定している。俺だけの特権だ。
それができるなら、この二人に振り回されるのもいいかもしれない。
そんなことで妹のトップグラドルへの道を支えていけるなら、な。



          

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