転生したようなので妹のために奮闘することにしました

紗砂

魔族襲来

私はイラの前に出るとすぐに結界を貼った。
周囲の確認をしてからエリーに頼む。


「エリー!」


エリーは私が声をかけただけで理解したらしく素早く動きだす。


『…イリス、面倒だし全員纏めて消しちゃおう?』

『それもそうね』


私はそんな2人の声でピタリと動きが止まった。
そして、ふふっふふふっ……と笑い始める。
それにエリーが気付いたらしく慌て始めた。


『やばい!
お姉ちゃんが怒った!』


とでも言っているのだろう。


『なによ、あの人間』

『……さぁ?』


魔族はそんな声をこぼしていた。
そんな時、私はリオの力が解放されるのを感じていた。


『行きなさい!
私の子供達!』

『憂鬱の王が命じる。
全ての者に夢を見せろ』


すると、下級から上級の悪魔達がリリスのもとから出てきて皆に襲いかかる。
そして、バアルの詠唱に答えるように私達に夢が見せられる。
その夢は憂鬱の悪魔というだけあってか私達にとって憂鬱になりそうな事ばかりを見せてくる。

そんな夢を、私は片手で払った。
すると、パリンッというガラスの割れたような音の後に元の風景が戻ってくる。
そして、エリーやリマ、イラに先輩…皆が傷つけられたところを見て、私は詠唱を開始した。


「リオ力を貸して。

『我、憤怒の悪魔の契約者にして巫女の称号を持つ者なり。
我の怒りに触れし者へとその罰を与えよ。

我が力は天地を揺るがし大いなる力なり。
絶望は失われ全ては光の雨と化す。

我が願いはただ1つ。
全ての者の平穏とその身の安全のみ。

我の怒りは我が大切な者を傷つけんとしたこと。
我が魔力と怒りを糧に発動せよ!』」


一気に魔力が持っていかれ、脱力感に襲われる。
思っていたよりも魔力を持ってかれ膝をつきそうになるのをぐっと堪える。

少しして、大きな炎が上がり雷が落ちる。
それを横目に皆の無事を確認する。
何人かは怪我を負っていたがそれ程大きな傷は無かった。

これならば簡単な治癒魔法を広範囲に広げるだけでなんとかなるだろう。
とは思うものの……魔力が足りない……。
…少し休むか…。


「っ……ルー、シャ?」

「イラ…大丈夫そうで良かったです」


イラが顔をしかめて私に近づいてくる。
一体どうしたのだろうか?


「悪い…。
俺も戦えたはずなのに全部ルーシャに任せちまった…」

「イラ、それは間違いです。
あれではまだ倒せていませんから…っ…」


そう。
先程から感じてる魔力は、紛れもなくあの2人の魔族のものだ。
リリスが呼び出した魔族は倒したものの…本体を倒すまでには至らなかったのだ。


「なっ……」

「すいません…もう、魔力が残ってないんです…」

「俺の魔力を使…」

「イラ、私は全属性です。
イラは何属性ですか?」


私はイラの言葉を遮った。
魔力を分け与えるのは同属性同士でしか出来ない。
つまり、だ。
全属性の私ではイラの魔力とは合うことはない。


「っ……。
俺は三属性だけだ…」


イラが悔しそうな表情をした。
そんな時、エリーが走ってきた。
そして……。


「お姉ちゃん!
許可、出たよ!」


と。
そんな声に私は笑みを零す。
そして、イラに話しかけた。


「イラ、魔力に関してはもう大丈夫そうです。
問題は何段階まで許可が出たか…でしょうか?」

「お姉ちゃん、最大二段階までだって!」


二段階なら問題ないだろう。
それを使い切る頃には最初の5000は回復しているだろうし。

思っているよりも簡単に許可が出た事に驚きつつも私は魔力の解放を始めた。


『魔力第一段階解放』


一瞬、魔力が減ったがそれもすぐに回復する。
魔力の解放により私の魔力は跳ね上がるが、急激に増えた事が原因か体に痛みがある。
まぁ、封印前よりと比べると全然いいのだが。


『…あの女を消し去りなさい、子供達』

『皆もリリスに協力~』


私の魔力が解放されるとすぐに2人は行動に出た。
私はといえば治癒魔法と風を混合させていた。


「さーて、魔力も回復したことだし…。

『聖なる光と気高き風よ。
私は望みます。
全ての者の回復を。
光は風に運ばれ全てを癒す光の風となりてこの街へ降り注ぐ。

さぁ、優しき風よ。
この光を運んで。

全ては私の魔力を糧に発動される』

と。
こんな感じでいいかな?」


意外と上手く発動したため私は思わず笑みを深めた。
皆の傷が癒えた事を確認するとすぐに攻撃に入る……事はなく、取り敢えず距離を取っておいた。


「ルーシャ、魔力が…」

「封印していたのを解放したので大丈夫です」

「お姉ちゃん、私がお姉ちゃんを守る!
お姉ちゃんには指一本、触れさせないから!」


エリーはどこからか剣を取り出し魔族に向かって構える。
言葉通りに私を守るように前にいた。


「ありがとう、エリー。
でもエリーの身の安全を第一に考えて。

イラ、属性を教えてください」

「あ、あぁ…。
俺の属性は、闇、土、無だ」


土と無、か…。
無の種類によってってところかな。


「俺の無属性は『全なる盾』だ。
効果はその名の通りだが…魔力の消費が激しい」


キツいな……。
だが、私の予知と合わせれば……うん。
大丈夫な気がしてきた。


「わかりました。
私の無属性が予知なので最低限の魔力で大丈夫でしょう」

「おう!」


そこで遅れたとしても奇跡の手で治せるだろう。


「ルー、私も居ますわよ」

「リマ!
リマ、確か強化の結界、貼れたよね?」

「えぇ。
誰を中心にいたしますの?」


誰が1番って言ったら…エリー、だよね。


「エリーで。
私は予知を発動すると隙だらけになるから…」

「承知しましたわ。
任せてくださいまし」


さすがリマ。
頼りになる。

私は目を1度閉じてから予知を発動させ、目を開く。
すると私の目は銀色に輝き始める。
そして、この日はいつもとは違い何か違和感があった。


『ルシャーナ、これを見ているという事は既に私は消えたのだろう。
ルシャーナよ。
良くぞここまで成長してくれたな。
今のルシャーナであればこれも扱えるだろう…』


そんな声が聞こえてきた。
少ししてから私の中に無理矢理力が割り込んできた。
そのあまりにも膨大な力に私は膝をついた。


「ルー!」

「お姉ちゃん!?」

「っ…ルーシャ!」


私を心配している声が聞こえてきた。
その声で私は力を無理矢理押さえつけ、立ち上がった。


「だ、大丈夫」


そう言ってから再び予知を発動させた。
すると、今までとは異なりスっと内容が頭の中に入ってくる。
いつもならばもっと抵抗があったのにも関わらず、だ。
しかも魔力の消費量も大分減っている。


「これなら……もっと先まで見れるかも…」


魔力消費量と抵抗のせいで普段ならば2分が限度だが…これならばもっと先まで見れそうな気がした。
私はそんな感に従いもっと先まで見ようする。
やはり、というべきなのだろうか?
最大5分にまで広がっていた。


「イラ!
30秒後に範囲をリマ中心に1メートルでお願いします!」

「おう!」

「リマ、2分後に最大出力で強化をかけて。
私はリマの魔法を強化する」


私はそう言うと一旦後ろに下がった。
そして…。


「『自由を尊びし風よ。
巫女の称号を持ちし私の前にその気高き姿を。
その者、我が友にして偉大なる風の女王なり!
全てはあの日の約束に従いここにその身を現したまえ』」


私の詠唱が進むにつれ周りには風が巻き起こる。
それはだんだんと強く、広がっていく。

私の詠唱が終わると風はピタリとやみ、それから少ししてゴウッという音と共に懐かしいその姿が見える。
少し白みがかった緑の髪に大きな金の瞳。
その少し白みがかった髪は光のさしているようにも感じ、より彼女の美しさを引き立たせる。


『ふむ…。
ようやく我と契約を交わす気になったか。
待ちくたびれたぞ』


現れるなりそう告げたシルフィーに私は見事に固まった。

つまりはそう言うことだ。
すっかり忘れていたとも。

あれだけ色々とあったのだから仕方ないと思うのだがきっとシルフィーは許してはくれないだろう。
さて…どうするか…。

そんなことを考えているとシルフィーは盛大に溜息を吐いた。


『ふっ…お主は変わらぬな……。
お主はいつも大事な事ばかり忘れる…。
だが、そんなお主の事を愛おしいと感じる我も我だな…』


懐かしむように、だが寂し気に言うシルフィーに私は何も言えなくなる。


『ルーシャ、我と契約を交わすきはないか…?』


私はその言葉に何も答えられなかった。
何故ならシルフィーの表情を見てしまったから。
悲し気な表情をするシルフィーは先程よりも悲痛さが増していることに気付いているのだろうか?

…いや、きっと気付いていないだろう。
私はそんなシルフィーの表情を見て胸が締め付けられるような感覚におそわれた。

それは当然だろう。
私にとってシルフィーは家族であり、大切な友人であり、仲間でもあったのだから。
そんな大切な存在がこんなにも悲痛そうな表情を浮かべているのだ。
平気な顔をしていられるわけがないだろう。

だが、何も言わない私に何を思ったのかシルフィーは無理に笑みを浮かべたような苦しい表情になる。


『……いや、お主が我と…』


どうせ、『我と契約など…』などという自虐的な事を言うのだろうと判断した私はシルフィーの言葉を遮った。


「シルフィーは私の事、まだ家族であり、友人であり、仲間だとおもっている…?」


するとシルフィーは目を見開いた。
きっと私の記憶が失われていない事に気付いたのだろう。
そしてシルフィーは自嘲するように笑みを浮かべた。


『お主、記憶があったのだな…。
よくよく考えてみれば我を呼び出す詠唱はお主との約束の証であり、我とお主をつなげるもの…。
なぜ気付かなかったのであろうな…』


少し間をおいてからシルフィーは私のとイに答えた。


『我はお主の家族であり、友であり、決して裏切る事のない仲間である事を我が命、我が名において…風を統べし女王としてお主に誓おう。
この誓いは破棄される事のなき、永久とわの誓いとなろう』


と。
私はそんなシルフィーの誓いに乗せるように誓いをたてた。


「私はシルフィーの家族であり、友人であり、大切な仲間でいる事をルシャーナという名、私の命において…巫女として誓う。
この誓いは決して破棄される事のなき誓いとなろう」


という誓いをたてた。
2人で笑いあっているとはと思い出した。

…もうとっくに2分を過ぎているのではないだろうか。


幸いだったのはシルフィーの風により両者の攻撃が通らない事だろう。


「ルー!!
こちらからの攻撃ができませんわ!」


というリマの声に私は叫んだ。


「3分後に消えるからそれまで魔力の回復に努めて!」


と言いつつも私は聖属性で矢や槍を作りだし打ち込んでいく。


『ルーシャ!
火属性の最上級が発動されるぞ!』


というシルフィーの声で私は久しぶりとなる水の最上級を打ち込むべく一旦攻撃を中止した。
そして詠唱の前に魔力を練りつつシルフィーに語り掛ける。


「シルフィー、もし私がこの攻撃を防ぎきれなかったら…」


そんな事を口にしつつも私はそれ程プレッシャーを感じてはいなかった。
なぜならば、万が一私が失敗してもシルフィーが防いでくれると信じているからだ。
それが例えシルフィーの弱点ろなるような属性だったとしても…だ。

私は何があろうとシルフィーを信じている。
だからこそ、こんな無茶ともいえるような事が出来るのだから……。


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