転生したようなので妹のために奮闘することにしました

紗砂

闘技大会があるらしい

さて…入学してから約3ヵ月。
私も魔法に使い慣れ、失敗がなくなってきた。

そんな時、明日から何日かかけて校内で闘技大会をするらしい。
その闘技大会で上位5名(補欠含め10人)に入ると学園代表として対校戦に出場するらしい。
ちなみにその代表というのも学年は関係無いらしい。
つまり1年でも出場できるかもしれないという事だ。
私がその出場を目指すのは優勝者に渡されるお金だった。
なんと、20万。
これだけあればお母さんとお父さんの助けにもなると思うのだ。


「ルー、明日は協力いたしますわよ」


闘技大会の1日目は乱闘だ。
私とリマは同じA地区だ。
エリーは残念ながらB地区になってしまった。
この地区事の乱闘では10名ずつ、合計50名が勝ち残る。
50名というのは全校で、だ。
この乱闘、地区ごとになってはいるものの学年が混ざっているため1回戦敗退は1年が圧倒的に多い。


「私、明日は結界魔法しか使わないよ?」

「構いませんわ。
……ルーが敗退したら戦えなくなってしまいますもの」


少し恥じらいながらそう告げるリマは可愛いと思ってしまう。


「じゃあ、協力して頑張ろう!」

「必ず勝ち抜きますわよ」

「お姉ちゃん、リマさん、2回戦では絶対に私が勝つからね!」


3人それぞれの思いを胸に、ついに当日がやってきた。



『さぁ、ついにやってきました!
恒例の闘技大会!!
司会は私、3年放送委員、アンダーが努めさせていただきます!

優勝者には20万の他に、上位5名には対校戦の出場チケットがあります!
今回の優勝者は誰なのかっ!?』


司会者の先輩はノリノリだった。
放送委員って言ってたし…こういうのが好きなんだろうな。


『今回は、なんと!!
国王陛下まで視察にいらっしゃっています!!』


……あぁ、きっとあれだね。
私を監視しに来たんだな。
その証拠に私達、A地区の1年控えの方ばかり見ているし。
ケヴィンはC地区だからね……。
うーん……やっぱりあれかな?
校舎破壊しそうになったのがいけなかったかな?
それとも結界を国中に広げた事?
それか前に教会で治癒の範囲を間違えた事かな?
それとも教室破壊しそうになった事とか?
いや、でもそれは直前で消したし……。
何が原因だろうか?

その頃、来賓席では国王が……。


「頼むからやりすぎないでくれよ……」


なんて神経をすり減らしているとは知るよしも無かった。


『最初は…A地区!!
なんと、この地区には前回優勝者、氷の貴公子こと、3年、レアン・ダルヴィンがいます!』


なんて声を聞きながら入場。
私の隣にはもちろんリマがいる。


『開始!』


その声を聞いた瞬間、私は結界を発動させるための詠唱を開始した。


「やりますか!

『光よ。
全ての闇を照らす暖かな光を今ここに。
私が望むは私達を守りし絶対の防御!
私の魔力を糧に発動せよ』」


私とリマを囲む透明の結界ができる。
結界は私達を守り、全ての攻撃を防いでいく。


「さすがルーですわ。
でしたら…次は私ですわね。

『清き水達よ。
私に力を貸してください。
私の魔力を糧に、波となりて私達の敵を押しのけなさい!』」


そんなリマの声に従うように水は大きなうねりをあげ他の者を押し流す。


『おおっとぉぉぉぉ!?
1年だけでなく、2、3年までも流されていく!!
この魔法を使用したのは……なんと、1年だぁぁぁ!』


残ったのは私とリマ、氷の貴公子さんとあと先輩らしき人達が8人程。
つまり、あと6人で進める。
そして、何よりも私達しか1年が残っていないという事は狙われやすくなるということだ。
だが……結構片付いたと思う。


「……1年、リタイヤを進めておく」


氷の貴公子さんは静かにそう言い聞かせるように私達に向けて言葉を放った。


「お断りさせていただきますわ」

「私も断ります。
エリーと2回戦で戦うと約束しましたから。
姉としてその約束は守らないといけませんので」


姉としてもかっこ悪い姿は見せられないでしょ?
それにお母さんとお父さんに仕送りするって決めちゃったし。


「……そうか。
ならば、まとめて退場させてやる。

『冷たく凍った水達へ。
私の願いを届けよう。
刹那の時の中、私は全てを凍てつかせる事を望む。
私の魔力を糧とし凍てつけ』」


先輩から放出された魔力が凍り、次第に周りへと伝染していく。


「ルー!」

「…大丈夫。
あの攻撃じゃあ、この結界は破れないから」


でも…あの魔法、利用させて貰うとしようか。
私は薄く笑みを浮かべ、少しだけ凍った結界を無理やり広げ先輩方を押し出した。
それにより落ちた人数は5人。
残りは避けてしまった。
だが、1人。
残念ながら氷の貴公子さんに氷漬けにされてしまった。

氷漬けされたとしても表面だけなのですぐに溶かせば問題ないだろう。
……死ぬほど寒く、同時に熱いだろうが。


『決まったぁぁぁ!!
残ったのは……やはり強かった!
氷の貴公子、レアン・ダルヴィン!!
そして、同じく3年Sクラス、カルア・テルンデール!
2年、サルナ!
そして…な、なんと!!
1年が2人も残っているぞ!?
リマーニ・レスタロクとルシャーナ!
以上の5人が2回戦に進出だぁぁぁ!!』


名前が呼ばれるとリマも私も俯く。
これは中々に恥ずかしい。

そして、司会の先輩が拳を上に上げると同時に周りにいた人達が歓声を上げる。
この周りで見学しているのは私達生徒だけではなく、家族や地域の人もいる。
そして、私は見つけた。
2人ではしゃいでいる、実の両親を。


「あ…あ……う、嘘……」


そんな声が私の口から漏れる。
久しぶりに見た両親は私が勝ち残った事を自分の事の様に驚いていた。


「……ルー?
どうかしたんですの?」

「あ……うん。
何でもない……」


私は笑って誤魔化すがリマは鼻で笑ってあしらった。


「嘘おっしゃい。
さっさと言いなさいな。
私達はその……ゆ、友人…なのでしょう?」


恥ずかしそうにリマは顔を赤くする。
そんなリマに私は思わず抱きつきそうになるがグッと我慢をして退場した。


「……で、一体何なんですの?」

「…ん……。
私の、私とエリーのね両親がいたの…。
2年ぶりだったから……」

「…2年?
1年ではなくて?」


そう。
私はまだ、あの事をリマに話していない。
……話さないといけないのは分かっている。
だけど……。
この関係が変わってしまうのが恐ろしく怖かった。


「……ねぇ、リマは、さ……。
私の称号、気にならない?」

「気にならないと言ったら嘘になりますけれど…ルーが言いたくないのであれば聞きませんわ」


それを聞き、私はいつか、ちゃんと言おうと決めた。


『勝者、昨年3位、ネクスタ!
3年、レクサス・カルヴィン!
3年、マラル・レーラン!
3年、アミラ!
そして…2、3年を押しのけ、残った最後の1人は…1年、Sクラスエリアス!!』

「よし!!」

「やりましたわ!」


エリーの勝利に私達は2人ではしゃぐ。
幸いこの控え室には私とリマの2人しかいなかった。


「ルー、エリアスさんを労いに行きますわよ」

「うん!
エリーを目一杯褒めてあげないとね」

『今年の1年は何なんだ!?
1年3人がおかしいのか!?
…次の試合はC地区!
初め!!』


私達3人がおかしいって……。
色々と文句はあるけど仕方ない。
それよりも今は…エリーだ。


「あ…お姉ちゃん!!」

「エリー!!
お疲れ様、まずは突破おめでとう!
さすが私の妹!」

「ルー、他の方の邪魔になっていますわ。
移動いたしましょう」


……そして移動したのは私の控え室。
…先ほどもそうだったがなぜ私の控え室なのだろうか?
エリーとかリマの控え室でもいいと思うんだが。


「リマ、確か明日の試合までは自由時間…だったよね?」

「えぇ、その通りですわ」


なら、充分時間はある。
……決めた。
行こう。


「リマも着いてきてくれる?」

「当たり前ですわ」


ありがとう、と笑うと私はエリーに説明を始めた。


「…エリー、お母さんとお父さんに会いに行こう?」

「…え……?
お母さんと、お父さん…?
でも……」

「大丈夫、さっきね、お父さんとお母さんがいるの…見てたから」

「っ……行く!」


エリーは泣きそうなほど、目を潤ませて私の服を掴んだ。
…エリーは泣きそうになると必ず私の服を掴む。
そこは今でも変わらない。
私はそんなエリーの頭を撫でて3人でお母さんとお父さんの元へ向かった。


「…お母さん、お父さん!」

「ルーナ!エリー!」

「ルーナ、エリー……元気そうで安心したわ…」

「ふぇ……お母、さん……お父、さん……!」


私達家族は人目を気にせずに抱き合った。
…2年ぶりの再会は予期せぬ事だったが物凄く、嬉しく感じた。
そのあたり、転生しても私は子供なのだと感じさせられる。


「お母さん、お父さん……何でここに……?」

「あぁ……神官様…デスタナート様が旅費を負担してくださったんだ…」

「アンリが……?
後でお礼を言わないと…だなぁ……」


アンリには大きな借りを作ってしまった。
アンリはきっと気にするなと言うだろうな、などと思うがそれでもちゃんと言わなければいけないだろう。


「ルーナ、エリー……2人で話して決めたのだけど…私達は王都で暮らすわ。
2人で宿を切り盛りしていくつもり。
だから…これからは会うことが出来るわ…」


それは、私達にとって何よりも嬉しく、喜ばしい事だった。
手紙を書くだけしか出来ない。
家族なのに…会うことすらも出来ない。
それが辛かった。
私はただ、家族と暮らしていければそれだけで良かったのだから。


「ところで……そちらの方は?」

「あ…えっと、私の友人のリマ。
専攻の属性が一緒なんだ」

「お初にお目にかかりますわ。
私はリマーニ・レスタロクと申します。
ルーとは仲良くさせていただいておりますわ」


リマが自己紹介をすると両親は慌てだした。
それどころか青ざめてしまった。
そのせいかリマは何かやっただろうかと不安げに私を見ていた。


「き、ききき貴族様!?
あ、あなた、ど、どどどうしましょう!?
ルーナが…ルーナが貴族様と…!?」

「ハッハッハ…………ルーナ、冗談だと言ってくれ………」


「お母さん、お父さん、現実。
それと、リマはそういうのあまり気にしないから大丈夫だよ」

「普通は物怖じするものですわ。
ルー、あなたがおかしいだけですわよ?
……まぁ、貴族と平民なんて仕事内容と量が異なるだけでそれ以外はあまり変わらないと想うのですが……」


地味に貶された……。
……私、変かな?
まぁ、前世が貴族だったしなぁ……。
それに今は巫女だし……。


『…ルーシャ!!』

「えっ…?」


リオの慌てた声に私は間抜けな声を出した。
リオが結界を貼ったのが分かった。
そして、ドォォォォォンと盛大な音がした。
それに伴うように地面が揺れる。


「な、何!?」
「キャッ…!?」
「何だ!?」
「あなた!?」
「お姉ちゃん!」


それぞれ、不安そうに声をだし、周りにあるものへ捕まる。
お父さんはお母さんを守るよう、私はエリーとリマを守るように抱きしめた。


『ルーシャ、マモンだ!
マモンが起きた!!』


マモン…それは、七つの大罪の悪魔の1人、強欲の悪魔では無かっただろうか?
だが、なぜ今……?


「キャァァァァ!」


お母さんが叫んでいた。
私はここにいる大切な者を守るために結界を貼った。



「『光よ。
全てを守りし光をここに。
全ての闇を照らし、包み込む、暖かな光よ。
私は願うは救いと守りの光。
私達の絶望の淵から救いし希望の光。
私の魔力を糧とし、この場にいる者、その全てを守る絶対の盾となり壁となれ!』」


ドッと魔力が無くなる喪失感に襲われる。
だが、それをグッと堪え結界を貼ることだけに意識を向けた。

すると、すぐに地面の揺れから解放され、落ち着いた。
結界が貼れたようだ。


「…リマ、少しだけ……休んでいい、かな?」

「っ……ルー!
あなた…最上級結界を!?」


……残念ながら、それは違う。
私が使ったのはその上、王級結界だ。
そのせいか少しだけ、魔力が足りない。
……1回戦でも上級、使ったしなぁ……。

そんな事を考えながら私は眠りについた。


「……シャ、ルーシャ」

「……ん、リオ……?」


どうしてここにリオがいるのだろうと頭を巡らせる。
そして、行き着いた答えは……。


「…また、あの場所?」

「……うん。
ごめん、ルーシャ。
でも、どうしてもここじゃないといけないんだ……」

「エスカリオスを叱らないであげて欲しい。
私は、マモン。
マモン・ジスベクトール」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品