転生したようなので妹のために奮闘することにしました

紗砂

入学したらしい


入学式は無事終了し、私達生徒はそれぞれの教室へと向かう。
クラスはFからSまでの6段階で成績順に分けられている。
1学年130人とされていてFからAまでが20人ずつ、Sが10人の構成となっている。
私とエリーは文句なしのSクラスだ。
……あとで聞いた話なのだが私とエリーだけ実技の点数が以上に高いらしい。
私はある意味でと言われてしまったが。
私の場合は高いというよりも破壊したというイメージの方が強いらしい。
そんな事もあってか入学式では校長にこんな事を言われてしまった。


『今年の生徒は異常な生徒が1人いるようですが…』


なんて言われた時は誰の事だろうなぁ…なんて思ってたのだがそのあとに続いた言葉で嫌でも分かった。


『試験で会場を破壊する非常識な生徒にならないよう……』


とか、絶対私しかいないだろう。
…私だってやりたくてやったわけじゃないのに。
そして、隣のエリーからの視線が痛かった……。


「お姉ちゃん、もう何も壊さないようにね?」


実の妹からそんな事を言われた時は泣きたくなった。

教室に入るとすでに7人が来ていた。
私達の他にあともう1人来ていないらしい。
とりあえず私とエリーは自分の席につくことにした。
席は成績順らしく私の後ろはエリーだった。

暫くたわいも無い事を話していると最後の1人が入ってきた。
…その最後の1人はケヴィンだった。
私はつい顔を顰めてしまうがケヴィンはそれに気付いた様子もなく微笑んでいた。


「ルーシャ様と同じクラスになれて光栄です」


…前世の記憶があるんだから筆記試験だけでは確実にBクラスになれる。
あとは魔法が使えればAクラス、中級以上使えるのならば大抵はSクラスに入れる。
ならば、家庭教師がついている私やケヴィンにとってそのくらい当たり前の事だろうに。


「何度も言っていますが私に敬称は不要です」

「ルーシャ様……」

「席についてください」


先生、いいタイミングで入ってきてくれた。
私は心の中でグッと親指を立てる。
だが……その人物を見て固まった。


「俺は王宮からの特別講師でSクラスの担当になったタナトス。
宜しくね!
って事で、成績上位の奴から順に自己紹介をして」


タナトスが特別講師なのは知ってたけどまさかSクラスの担当になるとか!!
聞いてないんだけど!?
っていうか上位からだと私じゃん!!


「ルシャーナです。
生まれは農民なので失礼な点があるかもしれませんが宜しくお願いします」


私は簡単に自己紹介をする。
勿論、巫女というのは教えるつもりはない。


「えっと、私はエリアスです!
目標はお姉ちゃんを超えることです!
宜しくお願いします」


うん。
エリーはやっぱり可愛い。
エリーは私が守らなければ……!!

謎の使命感に襲われる私だった。


「ケルヴィンです。
身分の差を気にせずに接してください」


何でケヴィンは私の方ばかりを見ているんだろうね?
きっと気の所為だよね!?
うん!
気の所為だ!
そういう事にしておこう!


「殿…ケルヴィン、ルーシャちゃんに手を出すなよ?」


タナトスも何に張り合おうとしてるんだ!?


「先生こそルーシャ様に手を出さないでくださいね?」


ケヴィンはそれに乗るな!!
というか何で私が手を出される前提なんだ!?
そんな事しようものなら容赦なくリオが魔法を放つぞ!!


「お姉ちゃんは私が守るし…」


エリーも何を言っているのかな!?
私は守られるつもりはないんだけどな!
というか私がエリーを守りたいんだけどね?


「ヴェミニアンです。
えっと…属性は水と土です。
宜しくお願いします…!」


土か。
珍しい…。
他の属性と比べて土属性は極端に少ないんだよね。
まぁ、治癒魔法と結界魔法の使い手も珍しいけど。


「僕はラーテル!
属性は風だよ!
宜しく!!」


元気な女の子だった。
一人称は僕だが女の子だ。
そこは間違えないでもらいたい。


「スヴァト、属性は無。
一応、発現済み。
宜しく」


無属性で発言済みという言葉に私は反応しバッと顔を上げる。
スヴァトと名乗った少年は興味無さそうに座ってしまっていた。
だが、同じ無属性ならばこの苦労を分かち合える……気がした。


「俺はパウルだ。
属性は火だな。
宜しく頼むぜ!」


荒々しいというかなんというか……まぁ、そんな人だった。
一応、要注意人物としておこう。


「私はリマーニと申しますわ。
属性は水と聖。
聖属性は結界魔法ですの。
宜しくお願い致しますわ」


結界魔法とは……また珍しいものを…。
まぁ、私も持ってるけどさ。
でも、どちらかというと苦手なんだよね。
リオが言うにはリオのもつ闇属性と反発しているらしい。
つまりはリオのせいだ。
リオには色々と助けてもらってきたから何も文句は言えないのだけど。


「ランデールと申します。
属性は聖で、防御魔法。
宜しくお願い致します」


リマーニさんとランデールさんは貴族っぽいなぁ。
ランデールさんは剣を持ってたし称号は多分騎士かな?


「ルータスです。
属性は風。
宜しくお願いします」


これで10人全員の自己紹介が終了したのか。

私とエリーとケヴィン以外は皆属性を言っていたため私も属性を言うべきだっただろうか…と思ってしまったが私の属性は言ったらある意味ヤバそうだ。
これは限定しておいた方がいいのかもしれない。

火はまだやる気はないから言わないとして…。
風と水はどちらかを入れておくか。
聖属性はいれておくとして……。
闇は放置でいいね。
あとは無属性を入れたいが…内容的に不味そうだから却下。
って事で土属性をやるか。
風か水なら風の方が便利か。
なら風・土・聖の三属性にしておこう。


「これで全員終わったみたいだね!
じゃあ、ルーシャちゃんの魔法が危険だから場所を移動するよ。
転移水晶起動っと!」 


水晶から光が漏れたかと思えば気付いた時には既に教室ではなく謎の窪みにいた。
多分、魔術師の練習場所として使われているところなのだろう。


「じゃあ、ルータス君から順番に試験の時に使用した魔法を放ってくれるかな?」


つまりは人の魔法を見て学べという事なのだろう。
そこら辺は先生らしいなぁ…などと思っていると詠唱を開始した。


『風よ。
自由を尊ぶ風達よ。
僕の声に答えてください。
僕の魔力を糧に暴風よ 吹き荒れろ』


私の詠唱よりも簡単な言葉だった。
だが、それでも中級の魔法らしく威力はそこそこある。
だが無駄が多く魔法の効力はすぐに失われる。


「風の中級……」

「次は私ですね。

『聖なる光に告げる。
私の魔力を糧に固き守りの壁を隔てよ』」


初級の魔法ではあったものの壁は2つ
その壁により的を押しつぶしているようだ。


「私ですわね。

『清き水達よ
私に力を貸してくださいまし。
水球となりて打ち砕け』」


……威力が……。
あれ、人に向けたらダメなやつだ。
怖っ!?
水球ってこんなクレーターをつくるような威力は無かったよね!?


「俺だな!

『猛々しく燃え盛る火焰よ
燃やしつくせ』」


……いやいやいや、燃やしつくしちゃ駄目でしょ!?
いったい何を考えてこの魔法にしたんだ!?


「……。

召喚サモン』」


その言葉の意味を理解すると同時に1匹の黒い獣がでる。
ブラックウルフとも呼ばれる魔物だ。
多分、契約した魔物を呼び出す能力なのだろう。


「あ…僕の番か!

『自由を尊ぶ風達よ。
僕の声に答えて!
僕の魔力を糧に弓を作り出せ』」


彼女は風でつくりだした弓矢を射った。
矢は緩く弧を描く事なくただ真っ直ぐに的へと飛んでいく。
そして、的に当たったかと思ったその瞬間、的が粉々に砕け散った。


「えっと…じゃあ……。

『大地よ僕の言葉に答え、発動してください!』」


…物凄くカットした詠唱だ。
私も風か水なら出来るんだけどなぁ……。

ヴェミニアンの言葉に答えるように土が隆起し的を破壊した。


「では……。

『今一度木々の理を解き放て』」


ケヴィンの無属性は『解放』だ。
的が木で作ってあったのもあり木々の理と言ったのだろう。
…それは分かるが、何故他の属性を持っているくせに無属性を使うかなぁ!?
暴走したらどうするつもりだったんだ!
いや、暴走はしないって分かってたのかもしれないけど!!


「あ、私だ!
お姉ちゃん、行ってくるね!」

「うん、行ってらっしゃい、エリー。
応援してるよ」

「うん!
頑張る!!」


…やはりエリーは可愛い。
さすがは私の癒し……。


「お姉ちゃんも見てるし…頑張ろう!

『自由なる風と猛々しく燃える炎よ。
私の願いを聞き届けて!』」


……エリーの放ったのは火と風の合成魔法。
火は風に吹かれ、更に高く燃え上がり的を燃やし尽くした。

エリーが終了したという事は私ね番だろう。
だが、私はこの前に使った魔法でいいのだろうか?


「ただいま、お姉ちゃん!
次、頑張って!」

「おかえり、エリー。
行ってくるね」


なんて会話をしながら前に出るが、一応、タナトス…もとい先生に尋ねることにした。


「あの…以前使用した魔法、ですよね?
威力は下げますか?」

「下げないで放ってみて!」


…一応、聞いたからね?
だから、文句は無いよね?
いいはずだ…。
じゃあ、詠唱を始めるとするか。


「じゃあ、やりますか……。

『風よ。
自由を尊び気高き風達よ。
私の声に答えて。
私の魔力を糧に鋭き風の刃を作り出し
人間ではないものを切り裂け』」


やはり、私が詠唱を終えると風が巻き起こり的を含めた物が切り刻まれていく。
前回と威力も同じためか的は風がかすっただけでいともたやすく砕け散った。

見ていた私すらこの威力が怖いと思った。


「お、お姉ちゃん!
やりすぎ!
やりすぎだからぁぁ!!」

「ル、ルーシャちゃん……。
まさかここまでの威力とは思って無かったんだけど……」


エリーと先生は顔を引き攣らせていた。

…だから私は先生に尋ねたというのに。


「威力を下げるか、ちゃんと聞きましたよ?」

「…まさかここまでの威力とは思って無かったからね!!」


だ、そうだ。
私は悪くないと思うのだが?


「さすがはルーシャ様です!
建物を壊しただけの事はあります!」


ケヴィン…それ、褒めてないよね!?
地味に傷つくんだけど!
遠回しに威力調整すら出来ない奴って言われている気がする……。

だが、ケヴィンの表情を見ると本当に称賛しているように見える。

そして、再び教室に戻ってくるとその日は解散となった。

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