世界は黄色いユリのようだ

縁呪

7話 理由の過去

    俺が今やっていることはとてもおこがましい事なのだろう。
「ほら...早く言えよ。」
彼女は俯いている。
「なんで....言わなくちゃいけないの。」
そう言い顔を上げた彼女の顔からは先程の笑顔は消えていた。
「それはだな、これから同じ部にいる訳だから理由もわからず地雷を踏むわけにはいかないだろ?分かってさえいればそれに気をつけることだってできる訳だ。」
「あなたと今後話さないってことは出来ないの?」
「いやできねぇだろ。お互い一人ではやることに限度がある。相談なんか特にだ。だから残念ながら常日頃互いの気を使うということをしなくてはならないんだ。わかったか?」

はぁ、自分で言っといて何だが、気を使うの大嫌いって前から思ってたのにな。ほかの言葉が出てこなかった自分の語彙力の無さに絶望するよ。
「そう...ね...。」
納得してくれたようだ。
「でも、私が言うのだからあなたも言いなさいよ。過去のトラウマを。」
「残念なことに黒歴史ならあるがトラウマと言える程までいったものはないな。」
本当はトラウマなんて山ほどあるが人間は嫌なことから目をそらすものだからな。ほとんど忘れちまったよ。

「そうなの?それはそれで凄いわね。まあ、黒歴史なんて知ってもそれを馬鹿にして遊ぶほどあなたとは仲良くないからべつにいいわ。・・・じゃあ話すわね..」

「これは小学四年生のころからのことなの。その頃から私はモテていたの。可愛くて元気な子だったからね。」
いらねーよそんな自慢は。
「それでね、もうその頃から告白してくる輩が出てきたの。当然振ったわ。私にはその気が全くなかったから、でもその告白してきた輩の中の一人に好意を持っていた女の子がいたの。その子は当然私を敵視するわ、だからその子にこう言ったの。『いま私に振られて落ち込んでるから優しくしてあげれば落ちるよ』
・・・と。」
うわー小4からそんなことわかるって怖いなー
「それでそんな事を繰り返し繰り返し送ることになったの。そして中学二年のときにとある男子が話していることが聞こえてきたの。」
『新山さーまじいい女だよな。かわいいし周りからの人気もあって、付き合えたら周りに超自慢してやろーw』
『何言ってんだよwお前もう振られただろww』
「...ってね」


・・・ん?どういうことだ。これは話す必要があったのか。
「そのあと考えたの。そしてわかったの。あっちは私が『いい人』を演じていることを知らない。私の上っ面しか見れない奴ばっかりだったってことに。」
そうか...それなら俺に即答したことやあんなに酷くあしらったことにも説明がつく。
「高校に入ってあなた以外にも告白されたわ。その人達もみんな同じだったわ。一生大事にするとかほかの誰にも渡したくないとか、はぁ、全くわけわからないわ。関わったことないくせに何を言ってるのかと思ったわ。さぁ、これで終わりよ。なにか質問でもある?」

はぁ...わかったぞこいつの正体が。
こいつ.....めんどくさいやつだ。
自分で表面上良くしてるくせにそのいい部分しか見ないやつはダメだってことか。
自分の悪いところや欠点は見せないくせに、その悪いところを見つけて理解して欲しいのだろう。
「あるぞ。お前は表面上いい人を気取っているのになぜ俺の時弱いところを見せた。『もう...あんなことは嫌なの』って言ったよな。それはなんでだ?」
理由は多くて損は無いと思うからちゃんと質問はする。
「卒業して春休みになって気が抜けていたのね。まさか初日から告白してくるなんて思ってなくて気が緩んでいたのかしらね。」

なんだそんな理由か。
「わかった。悪いな話してもらって。」
「はぁ、まったくよ。疲れたわ私も。ではもう帰りましょう。」
そう言いバックをもって廊下に出た。
「じゃあ、また明日ね!」
笑顔でそう言い帰っていった。
なんだあいつ二重人格かなんかか。
それにしてもたいした理由じゃなかったな。
俺からしたらそう思うだけであいつからしたら相当なことだったんだろう。
そう逃伊崎愛人は考えた。

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