世界は黄色いユリのようだ

縁呪

6話 人それぞれ

      知らなかった

   この言葉はなんとも都合のいい言葉だと思う。「そんなこと気づかなかった」「聞いたことない」とかしらを切るのに便利なことだからだ。だけどほんとに知らなかったことだってあるのだ。
   実際いま俺はその状況下にある。昨日初めて女の子を泣かしてしまった。いやこれまでにもあったかもしれないが忘れているだけかもしれない。だから今考えているのだ。放課後どう謝ろうか.....よし決めた。  
    「昨日は泣かせてごめんな。これから仲良くしてくれないか?」よしキタコレ。しっかりと謝った上にこれからの関係を持つというなかなかいい線いってると思う。
    今は普通にしているがなかなかに気まずいな。こういう時どうしたらいいんだろう。
    そう考えているとクラスの後ろの方が何だか賑わしい。なんか聞いたことある名前がいた。岡山是留舵くんだ。周りには5人ほど集まっている。
     「いやいやまじありえねーって」
     「いや、あるから!マジあるあるだから!」
     「まぁそれも一理あるかも。てかやっぱやなぎがおかしいよ。」
     「えー!!美奈も反論すんのかよー....」
      などどよくわかんない話をしているのは....誰だっけ。
確か反論されたのが柳灯狼やなぎとうろうであるあるいってるの井原莉佳子いばらりかこ。んで美奈と呼ばれるポニーテールよりショートが似合いそうな少女は河頼美奈かよりみな。その横で愛想笑いしているちょい太めのやつは赤鬼修斗あかぎしゅうと。そして気を使ってオロオロしている茶髪のは茎根凛花くきねりんか。あ、覚えてた。
      楽しそうにしているように見えるが顔色伺って動いているやつが2人いるな。大変だなーあーやって気を使うの。気を使うのは嫌いだな。使う相手いないけど。
     今更ながらこのクラスは4つほどのグループにわかれている。岡山くんがいる所。アニオタの集まり。いーな俺も混ざりたい。運動部のやつでうるさくてウザイ所。あとは俺1人。1人だとグループじゃないね。3つだ。
     この環境にいるのはなかなか辛い。
     少し周りを見渡すとあの女はいない。もういった様だ
     俺はクラスを抜け部活に行くことにした。


     相談室のドアの前で大きく深呼吸をする。
      ・・・よし。
    ガラララ....
    最初に目に入ったのは髪をかきあげて本を読んでいる新山莉織だった。太陽の光がいい感じに入りすごく.......きれいだ。クラスではうるさい奴が
   すると気がついたようでこちらに目を向けた。
   俺だとわかった途端目を鋭くし睨んできた。
   ・・・そりゃそうですよね。ごめんなさい。 
   脳内で謝りそんなこと気にしないように新山から離れた席に座った。そして俺も本を読み始めた。
   静かだ。普通なら昨日なんで怒ったのかとか聞くものだろう。だがそれを聞いて昨日の二の舞になるのはごめんだ。だから待たせてもらう。


   10分程経っただろう。
   新山莉織がチラチラこっちを見てくるようになった。多分何か言いたいのだろう。
   「はぁ...何か用か。」
    ため息混じりでそう聞くと
    「....昨日のことなんだけど」
     俯きながらそう言葉を発し話を続ける
     「ごめんなさい。急に怒ったりして。少し昔のことと重なってしまってカッとなってしまったの。だから忘れてくれないかな。」
      彼女はする必要のない反省をしている。心が痛い。
     「やめろ。謝るな。元はと言えば俺があんなことしなければ良かっただけなんだから。気にしないでくれ。」
      そう言うと彼女は顔を上げて俺の顔を見てニッ、と笑った。
     「じゃあお互い忘れよう。それでいいでしょ?」
      普通ならここでうんといって仲直りすればいいのだが
残念ながら俺は普通じゃないらしい。というか友達作りを諦めた俺はなにをしようが俺の勝手だろ理論に入ってしまっている。だからデリカシーとか過去のトラウマなんて気にしない。だからこう言った
       「よくない。お前に何があるのか教えろ。」
  
      

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