最強になって異世界を楽しむ!
堕天使
「ノクターン、どうしてお前が魔王様が封印されたと知っている? 死んだと聞いたはずだろう」
「魔王様だとわかりにくいし、リート様って呼んだほうがいいっすよ。それで、理由っすよね?」
カプリースは魔王軍の陣地を疾走しながら、ノクターンへ疑問をぶつける。
ロンドやカプリースは前魔王、リートが封印されたことを知っているが、その前に死んだノクターンら知らないはずだ。
「リート様が死ぬわけないっすからね。でも、無力化はされてるっぽいっすし、封印ならされても不思議じゃないっすから」
この世界の魔王という存在は、封印という状態に非常に弱い。
倒すことは難しいが封印ならば可能。
それが魔王リートだった。
「私は情報を集めたっすよ。魔王軍の魔族にも聞いて、リート様を封印したのが今の魔王とその従者の女だってわかったっす。私が人間の味方をしてるのも、リート様を復活させるためっすからね」
「なるほどな。俺とお前とロンドか……3人ならばやれるかもしれんな」
「やれるかも、じゃなくてやるんすよ。お互いにリート様に恩がある身なんすから」
「……そうだな」
元々はリートに恩義を感じていたカプリースも、封印を解くのは諦めていた。
だが、こうして同じ幹部のノクターンが必死に動いているというのに、自分だけ何もしないなどありえない。
それに何よりも、カプリースはリートへ忠誠を誓った。
ここでノクターンに協力しなければそれは外道というものだ。
そうして2人で情報交換も兼ねた話をしていると、目的の場所に着いた。
「久しぶりっす! ロンド!」
「ああ。2人もな」
「エレナという人狼が強くてな。あいつは素晴らしい武人だった」
エレナとの戦闘を思い出すように何度が頷いていたカプリースだが、すぐにロンドの異変に気づく。
「呪いは解けたか」
「優秀な弟子のおかげだ」
ロンドは生身の体の感覚を確かめるように拳を握り、愛剣の塚に触れる。
準備は万端だ。
「さあ、2人とも行くっす!」
「その必要はないわ」
ノクターンが魔王軍の本陣に向けて足を踏み出そうとしたところで、3人の頭上から声がかけられた。
3人が声の方向を見上げれば、そこには黒い翼を広げたエンゲルが3人を見下すようにして空中に佇んでいた。
「あれが従者っすか?」
「エンゲル……本人曰く堕天使だ」
ノクターンの質問にカプリースが答えていると、即座にロンドが行動に移った。
「吹き荒れろ」
刀身が中ほどから折れた愛剣、シュトルムを引き抜いてエンゲルに向けて振り下ろすと、エンゲルの真上から叩きつけるように暴風が襲う。
「せっかちね。慌てなくても逃げないわ」
地面に叩きつけ、そこから追撃を加えようとしたロンドだが、エルゲルは暴風が直撃したというのにまるで何も無かったかのように優雅に降り立った。
「裏切り者の幹部達。遊んであげるわ」
チャラ、と首から下げた幾何学模様の刻まれた紫色の宝石をエルゲルが見せると、ロンドとカプリースの目付きが変わる。
「ノクターン、狙いはあの宝石だ。砕け」
「了解っす!」
カプリースとノクターンもそれぞれ、溶剣と双戦斧を構える。
「援護しよう」
ロンドがシュトルムを振り無数の風の刃をエンゲルに向けて放つと、それを合図にカプリースとノクターンが左右から距離を詰める。
「力の差をその身に刻んであげる」
エルゲルは白く輝く細剣を鞘から引き抜くと、迫り来る風の刃を横薙ぎに一振りするだけで霧散させる。
「ふんッ!」
「はあッ!」
しかし、そのスキにカプリースとノクターンが間合いまで距離を詰め、それぞれの得物を振り下ろす。
「あくびがでる」
エルゲルは目にも止まらぬ速度の返す一振りでノクターンの双戦斧を弾き、カプリースの溶剣を素手で掴んで止めた。
「なにッ!?」
「うっそぉ」
幹部の中でも怪力を誇るノクターンの振り下ろしを片手で弾き、敵を溶かすとされる溶剣を素手で止める。
そのどちらもが予想できないことであり、2人の反応が遅れる。
「私の攻撃ね」
エルゲルは力を込めていたカプリースを片手で押し返し、2人にそれぞれ手のひらを向ける。
そこから放たれるは光の鎖であり、鎖は2人の肩に深々と突き刺さった。
そして、そのまま地面に叩きつけようと、
「魔法剣」
しようとしたところで、光の鎖が斬られた。
「私の鎖を斬ったの。少しはやるようね」
「俺が相手をする」
「ぐっ、わかった」
「ううー、はーいっす」
折れたシュトルムを風の魔力で覆い、魔法剣とすることで補いながら、ロンドがエンゲルと対峙する。
カプリースとノクターンは自分とエンゲルとの技量差を感じとり、素直に後方へ下がる。
「もう少し俺に力を貸せ、シュトルム」
酷使する愛剣を握りしめ、ロンドが仕掛ける。
対するエルゲルは、細剣の先端をロンドへ向ける。
「この細剣の名前はクリシス。神に仇なす者へ裁きを下すための武器よ」
細剣が一層光り輝いたと思えば、その光がいく筋にも分かれ、多方向からロンドを貫こうと迫る。
複数によるかなりの速度を持った、至近距離からの攻撃は避けられないだろう。
圧倒的な技量が無ければ。
「遅い」
エルゲルの光による攻撃よりも、風をまとったロンドの踏み込みが早かった。
「そんなっ!?」
これにはエンゲルも驚いた様子で、防御を取ろうとするも遅すぎる。
ロンドはエンゲルの胸の中心、紫色の宝石に向けて突きを放つ。
ガギッ!
「なんだと」
ロンドの突きは見事に宝石を捉え砕いたと思われたが、宝石はロンドの攻撃を弾き返していた。
そこへエンゲルがすかさず細剣を振るが、ロンドは後ろへ飛び退いて回避する。
「仮にも魔王を封印するものよ? そんな攻撃で砕けるわけないでしょう」
「ならば、お前を殺す」
笑ってそう言うエンゲルへ、ロンドが猛攻を仕掛ける。
魔法剣による左右上下からの攻撃は、鬼気迫るものがあり、ワタルと戦った時よりも力強い。
が、エンゲルはそれを細剣でゆうゆうと受け流していく。
ロンドも視線や細かい動作によるフェイントを入れるなどして機を伺っているものの、まったく重心がぶれない。
「私とやり合えるなんて、誇っていいわ」
「黙れ」
ロンドは渾身の力を込め、シュトルムを振り上げる。
咄嗟に受け流せないと判断したエルゲルは細剣で防御するが、ロンドの力が上回り、細剣が大きく弾かれ二人共に体勢を崩した。
「やれ!」
そこへ、ロンドの後ろから出るようにしてノクターンとカプリースがエルゲルに迫る。
「双戦斧よ、茨を絡ませ、吸い尽くせ」
「溶断」
ノクターンは双戦斧を、カプリースは溶剣を、それぞれ最高の武器で攻撃を放つ。
普通ならそれを塞ぐ手段など存在せず、間違いなく直撃コースだ。
そう、普通ならば、だ。
敵は現魔王の従者、魔王軍の幹部達を圧倒的に凌ぐ実力を持つ、普通じゃない相手だ。
ノクターンとカプリースの放った必殺の一撃は、エンゲルを包むようにして現れた黒い翼によって阻まれた。
「っ、ノクターン!」
「え」
カプリースがノクターンを後ろへおもいきり押し飛ばした直後、その隣を何倍もの速度でカプリースが吹き飛ばされた。
「あなた達は堕天使の怒りを買ったの」
黒い翼を広げて現れたエンゲルの姿は、先程までとは異なっていた。
手には黒く染った細剣を持ち、黒い翼とカプリースを吹き飛ばしたと思われる太い尻尾が生えている。
何よりも、纏うその雰囲気はノクターンたちに実力差を叩きつけていた。
「簡単に死ねるとは思わないように」
「魔王様だとわかりにくいし、リート様って呼んだほうがいいっすよ。それで、理由っすよね?」
カプリースは魔王軍の陣地を疾走しながら、ノクターンへ疑問をぶつける。
ロンドやカプリースは前魔王、リートが封印されたことを知っているが、その前に死んだノクターンら知らないはずだ。
「リート様が死ぬわけないっすからね。でも、無力化はされてるっぽいっすし、封印ならされても不思議じゃないっすから」
この世界の魔王という存在は、封印という状態に非常に弱い。
倒すことは難しいが封印ならば可能。
それが魔王リートだった。
「私は情報を集めたっすよ。魔王軍の魔族にも聞いて、リート様を封印したのが今の魔王とその従者の女だってわかったっす。私が人間の味方をしてるのも、リート様を復活させるためっすからね」
「なるほどな。俺とお前とロンドか……3人ならばやれるかもしれんな」
「やれるかも、じゃなくてやるんすよ。お互いにリート様に恩がある身なんすから」
「……そうだな」
元々はリートに恩義を感じていたカプリースも、封印を解くのは諦めていた。
だが、こうして同じ幹部のノクターンが必死に動いているというのに、自分だけ何もしないなどありえない。
それに何よりも、カプリースはリートへ忠誠を誓った。
ここでノクターンに協力しなければそれは外道というものだ。
そうして2人で情報交換も兼ねた話をしていると、目的の場所に着いた。
「久しぶりっす! ロンド!」
「ああ。2人もな」
「エレナという人狼が強くてな。あいつは素晴らしい武人だった」
エレナとの戦闘を思い出すように何度が頷いていたカプリースだが、すぐにロンドの異変に気づく。
「呪いは解けたか」
「優秀な弟子のおかげだ」
ロンドは生身の体の感覚を確かめるように拳を握り、愛剣の塚に触れる。
準備は万端だ。
「さあ、2人とも行くっす!」
「その必要はないわ」
ノクターンが魔王軍の本陣に向けて足を踏み出そうとしたところで、3人の頭上から声がかけられた。
3人が声の方向を見上げれば、そこには黒い翼を広げたエンゲルが3人を見下すようにして空中に佇んでいた。
「あれが従者っすか?」
「エンゲル……本人曰く堕天使だ」
ノクターンの質問にカプリースが答えていると、即座にロンドが行動に移った。
「吹き荒れろ」
刀身が中ほどから折れた愛剣、シュトルムを引き抜いてエンゲルに向けて振り下ろすと、エンゲルの真上から叩きつけるように暴風が襲う。
「せっかちね。慌てなくても逃げないわ」
地面に叩きつけ、そこから追撃を加えようとしたロンドだが、エルゲルは暴風が直撃したというのにまるで何も無かったかのように優雅に降り立った。
「裏切り者の幹部達。遊んであげるわ」
チャラ、と首から下げた幾何学模様の刻まれた紫色の宝石をエルゲルが見せると、ロンドとカプリースの目付きが変わる。
「ノクターン、狙いはあの宝石だ。砕け」
「了解っす!」
カプリースとノクターンもそれぞれ、溶剣と双戦斧を構える。
「援護しよう」
ロンドがシュトルムを振り無数の風の刃をエンゲルに向けて放つと、それを合図にカプリースとノクターンが左右から距離を詰める。
「力の差をその身に刻んであげる」
エルゲルは白く輝く細剣を鞘から引き抜くと、迫り来る風の刃を横薙ぎに一振りするだけで霧散させる。
「ふんッ!」
「はあッ!」
しかし、そのスキにカプリースとノクターンが間合いまで距離を詰め、それぞれの得物を振り下ろす。
「あくびがでる」
エルゲルは目にも止まらぬ速度の返す一振りでノクターンの双戦斧を弾き、カプリースの溶剣を素手で掴んで止めた。
「なにッ!?」
「うっそぉ」
幹部の中でも怪力を誇るノクターンの振り下ろしを片手で弾き、敵を溶かすとされる溶剣を素手で止める。
そのどちらもが予想できないことであり、2人の反応が遅れる。
「私の攻撃ね」
エルゲルは力を込めていたカプリースを片手で押し返し、2人にそれぞれ手のひらを向ける。
そこから放たれるは光の鎖であり、鎖は2人の肩に深々と突き刺さった。
そして、そのまま地面に叩きつけようと、
「魔法剣」
しようとしたところで、光の鎖が斬られた。
「私の鎖を斬ったの。少しはやるようね」
「俺が相手をする」
「ぐっ、わかった」
「ううー、はーいっす」
折れたシュトルムを風の魔力で覆い、魔法剣とすることで補いながら、ロンドがエンゲルと対峙する。
カプリースとノクターンは自分とエンゲルとの技量差を感じとり、素直に後方へ下がる。
「もう少し俺に力を貸せ、シュトルム」
酷使する愛剣を握りしめ、ロンドが仕掛ける。
対するエルゲルは、細剣の先端をロンドへ向ける。
「この細剣の名前はクリシス。神に仇なす者へ裁きを下すための武器よ」
細剣が一層光り輝いたと思えば、その光がいく筋にも分かれ、多方向からロンドを貫こうと迫る。
複数によるかなりの速度を持った、至近距離からの攻撃は避けられないだろう。
圧倒的な技量が無ければ。
「遅い」
エルゲルの光による攻撃よりも、風をまとったロンドの踏み込みが早かった。
「そんなっ!?」
これにはエンゲルも驚いた様子で、防御を取ろうとするも遅すぎる。
ロンドはエンゲルの胸の中心、紫色の宝石に向けて突きを放つ。
ガギッ!
「なんだと」
ロンドの突きは見事に宝石を捉え砕いたと思われたが、宝石はロンドの攻撃を弾き返していた。
そこへエンゲルがすかさず細剣を振るが、ロンドは後ろへ飛び退いて回避する。
「仮にも魔王を封印するものよ? そんな攻撃で砕けるわけないでしょう」
「ならば、お前を殺す」
笑ってそう言うエンゲルへ、ロンドが猛攻を仕掛ける。
魔法剣による左右上下からの攻撃は、鬼気迫るものがあり、ワタルと戦った時よりも力強い。
が、エンゲルはそれを細剣でゆうゆうと受け流していく。
ロンドも視線や細かい動作によるフェイントを入れるなどして機を伺っているものの、まったく重心がぶれない。
「私とやり合えるなんて、誇っていいわ」
「黙れ」
ロンドは渾身の力を込め、シュトルムを振り上げる。
咄嗟に受け流せないと判断したエルゲルは細剣で防御するが、ロンドの力が上回り、細剣が大きく弾かれ二人共に体勢を崩した。
「やれ!」
そこへ、ロンドの後ろから出るようにしてノクターンとカプリースがエルゲルに迫る。
「双戦斧よ、茨を絡ませ、吸い尽くせ」
「溶断」
ノクターンは双戦斧を、カプリースは溶剣を、それぞれ最高の武器で攻撃を放つ。
普通ならそれを塞ぐ手段など存在せず、間違いなく直撃コースだ。
そう、普通ならば、だ。
敵は現魔王の従者、魔王軍の幹部達を圧倒的に凌ぐ実力を持つ、普通じゃない相手だ。
ノクターンとカプリースの放った必殺の一撃は、エンゲルを包むようにして現れた黒い翼によって阻まれた。
「っ、ノクターン!」
「え」
カプリースがノクターンを後ろへおもいきり押し飛ばした直後、その隣を何倍もの速度でカプリースが吹き飛ばされた。
「あなた達は堕天使の怒りを買ったの」
黒い翼を広げて現れたエンゲルの姿は、先程までとは異なっていた。
手には黒く染った細剣を持ち、黒い翼とカプリースを吹き飛ばしたと思われる太い尻尾が生えている。
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