最強になって異世界を楽しむ!
小夜曲vs魔女
アラベスクを討ち取ったノクターンたちとは対照的に、セレナーデとの戦闘は不利なものとなっていた。
「人間も魔女も、等しく死ね」
「ぐぁっ!?」
「退け!退け!」
「うわぁぁぁ!」
セレナーデの魔法は広範囲に及び、対峙している魔女だけではなく人間にも甚大な被害を与えていた。
レイやリナもセレナーデを止めようとはしているのだが。
「くっ、スペル」
「お前の手は知っている」
リナが禁忌の技術でセレナーデを止めようとするが、すかさずセレナーデが浮遊している剣を向かわせ、それを遮る。
魔法陣を展開しようとしている魔女たちも同様で、決め手となる高威力の魔法を使わせてもらえていない。
「転移っ!」
リナもやられっぱなしではなく、転移の短剣を6本使ってセレナーデの魔法を消そうとしている。
「面白いギミックだが……子供騙しだな」
それも、セレナーデには通用しない。
初見では魔法を消されたセレナーデだが、すぐにその短剣が転移をさせているのだと気付き、6本の短剣全てを警戒するようになった。
6本の短剣は広範囲に散りばめていて普通なら対処は困難なはずだが、セレナーデには10本の剣と魔法がある。
リナを抑えることなど、造作もなかった。
「全員退いて!」
魔女も人間もセレナーデを止められないでいると、魔女たちの中心からそう声がかかる。
言われるがままに周りの魔女や人間が退くと、声を出した魔女、レイとセレナーデが睨み合う形になった。
「ボクがやるよ。皆は離れてて」
「だ、だが!」
「里長がああ言うんですから、心配ないですよ」
残ろうとする人間を魔女がそう言って離れさせる。
リナもその場から離れ、2人の周りから人がいなくなる。
「セレナーデ、本当に戻る気はないんだね」
「あるわけないだろう」
「そう……なら、殺すよ」
「へぇ」
レイは魔法陣を展開し、セレナーデが妨害するよりも早く魔法を完成させる。
そうして作り出されたのは、100を超える大量の紫色のナイフ。
「いくよ」
レイが上空のセレナーデへそのナイフを一斉に放つ。
流石に数が多いようで、セレナーデは受けるようなことはせずに下降して避ける。
レイがナイフを操りセレナーデを追わせていると、ナイフの1本が途中にあった木に突き刺さった。
すると、木はみるみるうちに腐っていき、ボロボロと崩れていく。
「やっぱり毒魔法か」
セレナーデが全てのナイフを避け、レイは1度自分の周囲にナイフを集める。
「掠れば死ぬよ」
そして、今度は大量のナイフをいくつかに分け、全方位から囲むようにしてセレナーデへ放つ。
レイの使う毒魔法は強力で、触れるだけで絶命するような毒を相手に与える。
「ふぅん」
全方位から迫る毒のナイフを、セレナーデは魔法と10本の剣を巧みに操り弾き返す。
しかし、どれだけ弾いてもレイはその度に毒のナイフを作り出し、セレナーデへの攻撃を絶えず繰り返す。
「チッ、しつこいな」
セレナーデは苛立ちを露わにして舌打ちすると、剣のうち2本をレイに向けて放つ。
「無駄だよ」
2本の剣は、レイが目の前に作り出した毒の剣によって防がれる。
「ボクの魔力はセレナーデよりも多いよ。このままやっても、ジリ貧なだけだ」
既に200を超える毒のナイフを作り出しているにも関わらず、レイの顔色は健康そのものだ。
魔力が欠乏している時は顔色が真っ青になるため、その様子が全く見られないレイは、魔力にまだ余裕を残しているということになる。
圧倒的な魔力量と毒魔法の強力さ故に、レイという魔女の強さはある。
味方を自分から離したのは、万が一にも巻き添えを無くすためだ。
「これで終わりだ」
レイは一時的に毒のナイフを倍の数作り出し、烈火の如くセレナーデを攻め立てた。
そしてついに、ナイフの1本がセレナーデの右腕を捉えた。
「うっ!」
セレナーデは短くうめき声を上げると、その場に落下していく。
こうなった以上助かる方法はないと、レイは毒のナイフをセレナーデを囲むようにして集め、注意深く近づいていった。
「毒はすぐに回るよ」
ナイフが当たったセレナーデの右腕には、毒々しい紫色の模様が浮かんでおり、それは今も少しづつ広がっている。
その周りには浮かんでいた剣が地面に転がっている。
「ぐ、うぅぅぅぅ」
セレナーデはうつ伏せになって右腕を抑え、悶え苦しんでいる。
レイの毒魔法にここまで対抗できるのは、セレナーデの魔力量も桁違いに多いからだろう。
それでも、死を免れることだけはない。
せめて楽に殺そうとレイが毒のナイフでセレナーデを串刺しにしようとする。
「……なーんてな」
口角を吊り上げたセレナーデが、剣の1本をレイの心臓目掛けて放った。
「なっ!?」
咄嗟に右に避けたレイだったが、剣はかなり速くレイの左肩を貫く。
すぐに剣を引き抜いて後ろに下がったレイだが、その左腕にはかなりの量の血が流れており、動きそうにない。
「どうして……」
「どうして? 決まってるだろ」
セレナーデの右腕に浮かんでいた紫色の模様は、ゆっくりと小さくなっていき、やがて完全に消える。
「解毒魔法だよ。毒を解毒する。何の不思議もない」
セレナーデはこう言っているが、そんな簡単なものではない。
レイは毒魔法に特化した魔女で、毒の強さは使用者の魔力の大きさと練度に比例するため、レイの毒魔法が解毒されるなど、今まで1度も有り得なかった。
たとえ魔女でも、よっぽど魔力に差がなければ解毒などできるわけないのだ。
レイが知る限り、セレナーデと自分の魔力量には大きな差があったはずだ。
人間から魔女になったのだから当然だ。
マリーのように特別でなければ、禁忌の魔女の魔力量は決して多くはないはずだ。
「お前、まさか私が昔と同じとでも思ったのか?」
自分を囲む毒のナイフを再び浮遊した10本の剣で蹴散らし、レイを嘲笑しながら歩みを進めていく。
「お前たち魔女と人間を殺すために、私は努力した。今ではお前を圧倒的に超える魔力量を手に入れた。お前に勝ち目はないんだよ」
「いや、状況は変わってない!」
レイは弾かれた200本の毒のナイフを操り、全方位からセレナーデへ向かわせる。
セレナーデが解毒をするならば、それ以上の速度で毒を与えればいい。
やることは同じだ。
全方位からのナイフをセレナーデが捌ききれないことは変わらないのだから。
「勝ち目はないって言ったのがわからないのか?」
ニヤリと笑ったセレナーデがそう言うと、次の瞬間レイが目を疑うことが起きた。
200の毒のナイフが全て、ピタリとその場で止まったのだ。
「お前たちの間違いは2つだ。1つは私との実力差を見抜けなかったこと。そしてもう1つは」
セレナーデが右手をレイへ向けると、毒のナイフがそれに呼応するように矛先をレイに向ける。
こんな魔法は存在しない。
つまり、
「私の禁忌の技術を知らなすぎたことだ」
禁忌の技術だ。
セレナーデの禁忌の技術は相手のゴーレムなどの魔力で作り出した生命体を操る。
そう思われていたが、それは違う。
厳密には、相手の魔力で作ったものを操る、だ。
消費魔力はもちろん多いが、今のような場面では必殺のものになる。
「さあ、死ね」
セレナーデがレイに向けて毒のナイフの全てを一斉に放つ。
「スペルブレイク!」
「リナ!」
だが、そうはいかないとばかりに、リナが横から毒のナイフを禁忌の技術によって消し去る。
もしレイの毒魔法が味方に当たったら、と心配して近づいていたリナだが、それが幸をそうした。
「そうだよな、お前がいるならそうくるだろうな」
レイの眼前に剣が迫る。
セレナーデは最初にリナを見た時から、こうなることがわかっていた。
セレナーデとリナの禁忌の技術は相性が悪い。
だからこそ、殺すのは自分の剣で。
毒のナイフと共に放っていた剣が、レイの顔を貫こうと。
「させるかぁぁぁぁ!!!」
レイと剣の間に人影が割って入る。
その人影は持っていた剣でセレナーデが放った剣を弾く。
剣は1本だけではないため、その後も剣が人影に迫るが、少し遅れて来たもう1つの人影が、その巨大な盾で残りの剣を弾いた。
「なんだ、お前たちは」
「王都兵士長、アルマだ」
「エリヤ、鍛冶師だ」
アルマとエリヤが、セレナーデの前に立ち塞がった。
「人間も魔女も、等しく死ね」
「ぐぁっ!?」
「退け!退け!」
「うわぁぁぁ!」
セレナーデの魔法は広範囲に及び、対峙している魔女だけではなく人間にも甚大な被害を与えていた。
レイやリナもセレナーデを止めようとはしているのだが。
「くっ、スペル」
「お前の手は知っている」
リナが禁忌の技術でセレナーデを止めようとするが、すかさずセレナーデが浮遊している剣を向かわせ、それを遮る。
魔法陣を展開しようとしている魔女たちも同様で、決め手となる高威力の魔法を使わせてもらえていない。
「転移っ!」
リナもやられっぱなしではなく、転移の短剣を6本使ってセレナーデの魔法を消そうとしている。
「面白いギミックだが……子供騙しだな」
それも、セレナーデには通用しない。
初見では魔法を消されたセレナーデだが、すぐにその短剣が転移をさせているのだと気付き、6本の短剣全てを警戒するようになった。
6本の短剣は広範囲に散りばめていて普通なら対処は困難なはずだが、セレナーデには10本の剣と魔法がある。
リナを抑えることなど、造作もなかった。
「全員退いて!」
魔女も人間もセレナーデを止められないでいると、魔女たちの中心からそう声がかかる。
言われるがままに周りの魔女や人間が退くと、声を出した魔女、レイとセレナーデが睨み合う形になった。
「ボクがやるよ。皆は離れてて」
「だ、だが!」
「里長がああ言うんですから、心配ないですよ」
残ろうとする人間を魔女がそう言って離れさせる。
リナもその場から離れ、2人の周りから人がいなくなる。
「セレナーデ、本当に戻る気はないんだね」
「あるわけないだろう」
「そう……なら、殺すよ」
「へぇ」
レイは魔法陣を展開し、セレナーデが妨害するよりも早く魔法を完成させる。
そうして作り出されたのは、100を超える大量の紫色のナイフ。
「いくよ」
レイが上空のセレナーデへそのナイフを一斉に放つ。
流石に数が多いようで、セレナーデは受けるようなことはせずに下降して避ける。
レイがナイフを操りセレナーデを追わせていると、ナイフの1本が途中にあった木に突き刺さった。
すると、木はみるみるうちに腐っていき、ボロボロと崩れていく。
「やっぱり毒魔法か」
セレナーデが全てのナイフを避け、レイは1度自分の周囲にナイフを集める。
「掠れば死ぬよ」
そして、今度は大量のナイフをいくつかに分け、全方位から囲むようにしてセレナーデへ放つ。
レイの使う毒魔法は強力で、触れるだけで絶命するような毒を相手に与える。
「ふぅん」
全方位から迫る毒のナイフを、セレナーデは魔法と10本の剣を巧みに操り弾き返す。
しかし、どれだけ弾いてもレイはその度に毒のナイフを作り出し、セレナーデへの攻撃を絶えず繰り返す。
「チッ、しつこいな」
セレナーデは苛立ちを露わにして舌打ちすると、剣のうち2本をレイに向けて放つ。
「無駄だよ」
2本の剣は、レイが目の前に作り出した毒の剣によって防がれる。
「ボクの魔力はセレナーデよりも多いよ。このままやっても、ジリ貧なだけだ」
既に200を超える毒のナイフを作り出しているにも関わらず、レイの顔色は健康そのものだ。
魔力が欠乏している時は顔色が真っ青になるため、その様子が全く見られないレイは、魔力にまだ余裕を残しているということになる。
圧倒的な魔力量と毒魔法の強力さ故に、レイという魔女の強さはある。
味方を自分から離したのは、万が一にも巻き添えを無くすためだ。
「これで終わりだ」
レイは一時的に毒のナイフを倍の数作り出し、烈火の如くセレナーデを攻め立てた。
そしてついに、ナイフの1本がセレナーデの右腕を捉えた。
「うっ!」
セレナーデは短くうめき声を上げると、その場に落下していく。
こうなった以上助かる方法はないと、レイは毒のナイフをセレナーデを囲むようにして集め、注意深く近づいていった。
「毒はすぐに回るよ」
ナイフが当たったセレナーデの右腕には、毒々しい紫色の模様が浮かんでおり、それは今も少しづつ広がっている。
その周りには浮かんでいた剣が地面に転がっている。
「ぐ、うぅぅぅぅ」
セレナーデはうつ伏せになって右腕を抑え、悶え苦しんでいる。
レイの毒魔法にここまで対抗できるのは、セレナーデの魔力量も桁違いに多いからだろう。
それでも、死を免れることだけはない。
せめて楽に殺そうとレイが毒のナイフでセレナーデを串刺しにしようとする。
「……なーんてな」
口角を吊り上げたセレナーデが、剣の1本をレイの心臓目掛けて放った。
「なっ!?」
咄嗟に右に避けたレイだったが、剣はかなり速くレイの左肩を貫く。
すぐに剣を引き抜いて後ろに下がったレイだが、その左腕にはかなりの量の血が流れており、動きそうにない。
「どうして……」
「どうして? 決まってるだろ」
セレナーデの右腕に浮かんでいた紫色の模様は、ゆっくりと小さくなっていき、やがて完全に消える。
「解毒魔法だよ。毒を解毒する。何の不思議もない」
セレナーデはこう言っているが、そんな簡単なものではない。
レイは毒魔法に特化した魔女で、毒の強さは使用者の魔力の大きさと練度に比例するため、レイの毒魔法が解毒されるなど、今まで1度も有り得なかった。
たとえ魔女でも、よっぽど魔力に差がなければ解毒などできるわけないのだ。
レイが知る限り、セレナーデと自分の魔力量には大きな差があったはずだ。
人間から魔女になったのだから当然だ。
マリーのように特別でなければ、禁忌の魔女の魔力量は決して多くはないはずだ。
「お前、まさか私が昔と同じとでも思ったのか?」
自分を囲む毒のナイフを再び浮遊した10本の剣で蹴散らし、レイを嘲笑しながら歩みを進めていく。
「お前たち魔女と人間を殺すために、私は努力した。今ではお前を圧倒的に超える魔力量を手に入れた。お前に勝ち目はないんだよ」
「いや、状況は変わってない!」
レイは弾かれた200本の毒のナイフを操り、全方位からセレナーデへ向かわせる。
セレナーデが解毒をするならば、それ以上の速度で毒を与えればいい。
やることは同じだ。
全方位からのナイフをセレナーデが捌ききれないことは変わらないのだから。
「勝ち目はないって言ったのがわからないのか?」
ニヤリと笑ったセレナーデがそう言うと、次の瞬間レイが目を疑うことが起きた。
200の毒のナイフが全て、ピタリとその場で止まったのだ。
「お前たちの間違いは2つだ。1つは私との実力差を見抜けなかったこと。そしてもう1つは」
セレナーデが右手をレイへ向けると、毒のナイフがそれに呼応するように矛先をレイに向ける。
こんな魔法は存在しない。
つまり、
「私の禁忌の技術を知らなすぎたことだ」
禁忌の技術だ。
セレナーデの禁忌の技術は相手のゴーレムなどの魔力で作り出した生命体を操る。
そう思われていたが、それは違う。
厳密には、相手の魔力で作ったものを操る、だ。
消費魔力はもちろん多いが、今のような場面では必殺のものになる。
「さあ、死ね」
セレナーデがレイに向けて毒のナイフの全てを一斉に放つ。
「スペルブレイク!」
「リナ!」
だが、そうはいかないとばかりに、リナが横から毒のナイフを禁忌の技術によって消し去る。
もしレイの毒魔法が味方に当たったら、と心配して近づいていたリナだが、それが幸をそうした。
「そうだよな、お前がいるならそうくるだろうな」
レイの眼前に剣が迫る。
セレナーデは最初にリナを見た時から、こうなることがわかっていた。
セレナーデとリナの禁忌の技術は相性が悪い。
だからこそ、殺すのは自分の剣で。
毒のナイフと共に放っていた剣が、レイの顔を貫こうと。
「させるかぁぁぁぁ!!!」
レイと剣の間に人影が割って入る。
その人影は持っていた剣でセレナーデが放った剣を弾く。
剣は1本だけではないため、その後も剣が人影に迫るが、少し遅れて来たもう1つの人影が、その巨大な盾で残りの剣を弾いた。
「なんだ、お前たちは」
「王都兵士長、アルマだ」
「エリヤ、鍛冶師だ」
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