共成学園2年5組の日常

紗希

第一話 友達

 私は宮下咲良。今日から高校二年生になる。クラスは二年五組。
 今日から私の華の高二生活が始まる…‼と、思っていたんだけど。私には友達がいない。
 
 一年生の時、キャピキャピしてる女子グループに入ろうとしたが、でもそのテンションに付いて行けなかった。
 まぁ私はそんな完璧美女って訳でもないし、友達もいないので今どきの流行とかもよくわからない。

 時々、独りぼっちの私を気遣っているのか、話し掛けてくる人もいた。でも、癖でしゃべり方がぶっきらぼうになってしまい、誘いを断ってしまった。



 私は小学四年生の時から、クラスの人からいじめを受けていた。話し掛けようとしても無視される、物を盗まれる、机に悪口を書かれる、ゴミを投げられる…………たくさん酷い事をされた。何故だろう、意味が分からなかった。
 でも一人だけ、心を開ける友達がいた。
 高城果林ちゃん。その子は私と好きな物が同じだったり、性格もよく似ていた。
 私は果林ちゃんと毎日一緒に登下校して、ほぼ毎日遊んでいた。果林ちゃんと居られるだけで、私はいじめられているのを忘れられるほど幸せだったんだ。

 でも、そんな幸せな日々は終わりを告げた。
 ある日の放課後、いつものように果林ちゃんと一緒に帰ろうとして、話し掛けた。
「果林ちゃん、一緒に帰ろ~」
 私がそう言うと、いつもは笑顔で「うん!」と言ってくるのだけれど、その日は違った。
「ごめん、ちょっと用事があって…」
「え?!そしたら今日は遊べないの?」
「うん……ごめんね!ばいばい!」
 と言って、そそくさと走って行った。
 用事なら仕方ないと思って、その日は一人で帰った。 
 いつもの帰り道を、うつむいて一人で歩く。すると前方から聞き覚えのある声が聞こえた。
 
 果林ちゃん。果林ちゃんが、私をいじめていた連中と帰っていた。会話が聞こえてくる。どうやら下校後にそいつらと一緒に遊ぶようだ。
 
 腹が立った。今思うと、何だ、そんなことか。と思う。でも、たった一人の私の友達を横取りされて、物凄く苛ついた。無視しようとしたが、身体は先に動いていたようだ。私はそいつらの方へ駆け寄って、
「お前らみたいな最低なクソ野郎に果林ちゃんと話す資格なんかねーよ。私に二度とそのブスな顔見せんな!この世から消えろ!」
 語彙力が無いなりに、知っている悪口を全部吐き出した。バカバカと言いながら、そいつらを殴った。弱かったけど、殴ったら流石に泣いた。

 その時、私は我に帰った。こいつらを泣かせた罪悪感と、怯えているが、奥に冷たさを背負った果林ちゃんの視線が突き刺さった。そして、果林ちゃんは何も言わずにその場を立ち去った。

 友達が、いなくなった。

 励ましてくれる人などいない。気付けば私は、人と話す事がなくなった。私はもう汚い言葉しか吐けなくなっていたようだ。
 小学五年生の時も六年生も、中学の時も一人。高校に入学して、友達を作ろうとしても、ついしゃべり方がぶっきらぼうになってしまう。私に近寄る人は誰一人いなかった。



 こんなことがあって、それから私は今も友達がいない。朝学活まで時間があるし、話し相手もいないので本でも読もう。
 
 私は持ってきたお気に入りの本を鞄の中から取り出した。
 その時。私は後から視線を感じた。何だろうと思い振り返ると、本を持っているショートヘアの女子生徒が
いた。あの人は確か…下条さんとかいったっけ………

 ・・・メッチャコッチ見テル。

 目が合った。すると、こちらに近寄ってきた。
「何」
 勇気を振り絞って私は言葉を発した。その声のトーンは低かった。テンションが低い奴だなとか思われてるだろう。自分でもそう思う。
 すると彼女は、
「本、好きなの?」
 と聞いてきた。私は、驚いた。人が話し掛けて来てくれた!しかし、昔からの癖で、またぶっきらぼうに、
「別に」
 と返した。やってしまった。やっと人に話し掛けてもらえたのに、友達が出来ると思ったのに。
「ほぇ~」
「あんたは?本好きなの?」
「うん‼ねー、その本何ていうやつ?」
 そう言って彼女は私の本を覗き込んだ。
「赤毛のアンだ!面白いよね!私も好きだよ、コレ。宮下さんこういうのが好きなんだね!」
「えっ…ああー、まぁ…好きかな」
 嬉しかった。私なんかに興味を持ってくれてる人がいる。
「宮下さんの下の名前は何て言うの?」
「………咲良」
「咲良ちゃん?サクラちゃん!私、下条彩愛!アヤメって呼んで!今日から友達!よろしく!」
 
 
 私に、友達ができた。単純に、嬉しかった。
 
 この嬉しさは何年ぶりだろうか。嬉しさのあまり、声が出ていた。
「友…達……?私の?」
「そうだよ?どうかしたの?」
「いや、何も………」
 すると、彩愛はクスッと笑った。
「ふふっ、咲良ちゃんは面白いね‼これからもよろしくね‼」
「よ、よろ…しく…………」



「よろしく、彩愛」


 彼女は満面の笑みを浮かべた。
 私と彩愛は、朝学活の時間まで好きな本について語りあっていた。

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