双子の大神

緋想山 黒乃

序章 漆への脾肉と黝髪

丁度其の頃、漆のところには黒乃と呼ばれる子が来ていた。何か神妙な顔をして尋ねた。
「私は黒乃。大神様?御爺様は神界に逝ったら戻っては来れないでしょう。」
心底驚いた顔に成ったが、すぐに元に戻り云った。
「何故、そんな事を知っている?」


今日こんにちは、漆さん。お出掛けですか?』
一人の先輩遣いが尋ねた。私は表情を変えずに答えた。
『あの莫迦ばかまたやらかしたみたいで...』
ふゥ、という溜息と共に云った。相手は、
何時いつもの尻拭いですか。遣いは二人で一組ですからね。』
其れが無ければ漆さんは高位に成ってたはずですよ、脾肉ひにく交じりに云う。あァ、そんな事判ってるさ、と思いながら
いえ、そんな事有りませんよ。』
と、返した。


訊いた所で何が如何と云う事は無いが、一応訊くだけ訊いてみる事にした。黒乃は、だって、と続ける。
「だって、人間が神界に逝くのはながい時間がかかるって御爺様云ってたもの。」
確かに、そう云うと黒乃はかなしそうな顔に為るとまた話を続けた。

コメント

コメントを書く

「文学」の人気作品

書籍化作品