双子の大神

緋想山 黒乃

序章 道のり

 すっかり陽が落ちて仕舞った山を、二匹の大神おおかみはしっていた。銀の美しい毛並を持った大神で在った。一匹が ふゥ、と溜息を吐くともう一匹は静かに云った。
くれない、休んで居ては着かない。約束付だっただろう。」
なァ、と続け様つづけざまに云うと、紅と呼ばれた大神はいやそうな顔で返した。
「そうは云っても、ずっと奔ってンだよ?もう疲れた...」
後どの位?しつ、と紅はいた。漆は、後貮山ふたやま越えれば良い、と返すと、紅はもっと遣る気を失くした。

 三日前、弐人ふたりは白装束に狐の仮面を着けた、秘書官の前に居た。
「良いかイ、弐人共。此の文このふみを『名久井村なくいむら』を住んでいらっしゃる、緋想丸殿のところへ届けておイで。龍神王様りゅうじんおうさまからと云えば、判るかラ。ついでに、御言葉も貰っておいデ。」
龍神王に直接的な繋がりを持つ『龍王』に手紙を届ける仕事である。しかし、『龍王』は龍神王と同じ地位の神遣いであるがゆえ、手紙一つ届けるにも上級遣いが運ぶ筈である。紅と漆は未だ遣いに成ったばかりである。
「ですが、御狐様おきつねさま私達わたくしたちは遣いに成ったばかりで...」
「良いんたヨ。これは龍神王様からのめいなンだ。大丈夫たかラ。」

と、云う風に任されたのである。
「龍神王の頼みじゃァ、拒否は出来ないよなァ」
溜息交じりに紅は云った。漆は呆れた顔で、様を付けろ、注意した。
何て話している内に、名久井村近くの山迄やままで来ていた。其処そこには小さなやしろがポツンと、在るだけだった。

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コメント

  • 白黒さん

    やあ。M.Yだよ。(文章つくるの下手だからよろ(*´꒳`*))
    てか、文章つくるのうますぎwでももうちょい簡単な漢字使って欲しいわ(;´д`)これからもちゃんと更新してね〜 でわノシ
    p.s 小説書けないから、今度手伝ってくだしい

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