最弱天職でなんとか生きていきます!

黄泉津狐

5話 初テイム

ポツ ポツ
一筋の滴がカムに落ちる。

「うわっ!なんだ水か」

カムは意識を覚醒させる。考え事をしていて、眠りにおちたようだ。

「さて、考え事の続きといこうかな」

これからどうするか、という問題。この小さな洞窟から抜けて、外にいる凶悪な魔物達にバレないようになんとか上に行く道を探さなければならないのだ。ここにいる魔物達はみんなとても強いため、《召喚士》という弱い天職では話にならない。だから倒していくということは論外だ。

「やっぱり逃げながら道を探すしかないよなー はぁ〜憂鬱だ。でも、絶対に生きて帰るんだ!がんばるぞー!」

それからというもの、カムの行動は素早かった。水はあの小さな洞窟にあり、食べ物は近くにあった木に実っていた果物があるため良かった。だが、魔物という障害を潜り抜けながら上に繋がる道を見つけることは難しかった。

「はぁー疲れた。あ、そうだ。あの果物まだ食べてないし食べてみようかな」

その果物は、普通のリンゴと同じ果物に見えた。しかし、食べた瞬間に胸にズキッと痛みが走った。

「ぐっ!?〜〜〜〜〜ッ!!」

痛みはすぐに治り、なぜか身体に力が湧き上がる感覚を覚えた。カムはこの感覚に覚えがあった。だが、何だったのかは思い出せなかった。

「何だったんだ?今のは」

気になるが、何も分からないので眠りにおちるとする。


「今日もがんばろー!」

と、意気込んだのはいいのだが今日は昨日よりも魔物に追われる回数が多い気がする。
なんでだ?

「って!またスライムかよ!今度は小さいけど!!」

以前遭遇した大きいスライムの小さいバージョンだ。ん?このスライムは弱っているように見える。

「一体どうしたんだ?これ食べるか?」

ポーチから例の果物を取り出す。それを見たスライムはこちらに寄って来た。
ムシャ ムシャ  ムシャ ムシャ
お腹が減っていたのか、あっという間に食べてしまった。

「食べるの早すぎだろ…」

スライムはカムにくっついて、おかわりを欲しがるかのようにモゾモゾと動き出した。
小動物のように思えてくる。
果物のストックはまだあるのであげることにする。

「ほら、おかわりだ」

2個目もあっという間に食べてしまった。

「俺も目的があるんだ。じゃあな」

進んでいると、後ろからぷにぷにという音が聞こえてきた。振り返ってみると…

「なんでさっきのスライムがついて来てるんだよ…」

そう。さっきのスライムがカムについて来ているのだ。
カムが立ち止まった途端、肩に登り体をスリスリしてきた。カムに懐いているようだった。

「おい……はぁ、果物はもうやらないからな」

言葉がわかるのかカムの頭に体をぶつけてきた。しかし、液体状の身体のため全然痛くなかった。

「…わかった。あとでやるからそれやめろよ」

スライムはカムの肩で跳ね、カムの頭に登った。
そこでカムは思いついた。

「このスライム、テイムできないかな?」

スライムはカムの頭の上で体をクネクネさせている。その時、突然頭に声が聞こえてきた。

(ネェネェ、アナタニツイテイケバ、オイシイモノタクサン、タベラレル?)

「えっ!?なんだ!今の声は?」

(キイテル?オイシイモノ、タクサンタベラレルノ?)

「…まさかこの声は、このスライムなのか?だとしたらどうして声が聞こえるんだ?」

(ネェ、サキニ、コタエテヨー!)

「わ、わかったよ。いっぱい食べさせてやるよ」

(ヤッター!ジャアワタシ、アナタニツイテイク!)

その時さっきとはまた違う声が聞こえてきた。

テイムが成功しました。魔物をテイムしたのはあなたが始めてです。これからも頑張りなさい。

「今度は何だ!?でも、この声は聞き覚えが……そうか。女神の声だ!それにテイムが成功したって。特に何もしてないのに。果物をあげたからか?」

カムはどうしてテイムが成功したのかわからなかった。前にレナと一緒にテイムをしようとした時と違うところは果物だけだった。

「そういえばこの果物を食べたらなんか不思議な感覚になったけど、それは関係しなさそうだよな。あとこの果物を食べてから、なぜか魔物に追われる回数がいつもより多くなった気がする。この果物には魔物が好む効果でもあるのかな?」

しかし考えはそれ以上出来なかった。前方に大きな獣の魔物が居たからだ。

(ネェネェ、ハヤクニゲヨウ)

スライムを肩に乗せ、獣の魔物がいる反対の方向へカムは走った。



今回は無事に逃げ切って、洞窟に帰ってきた。結局今日も、道を見つけることが出来なかった。しかし、今日は魔物をテイムすることが出来た。

(ネェネェ、ナニカイテルノ?)

「日記を書いてるんだよ。ここは未知だし、いつ死ぬかもわからないからな」

(フーン  ネェネェ、ソレヨリ、ワタシニナマエ、ツケテ)

「たしかに名前が無いと不便だからなー  うーん。じゃあリンでいいか?お前この果物好きそうだし、これリンゴの形してるし」

(ワカッタ。ソレデイイヨ!)

念話のスキルを習得しました

「ん?何だ今のは?」

(コレカラヨロシクネ!ゴシュジン!)







正月や受験勉強などで全然更新出来ませんでした。申し訳ないです。これからもあまり更新出来ません。いいねやフォロー、コメントをお願いします!

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