不幸な男は異世界で最強になったようです

大島 こうのすけ

29#妖精王アラン戦

開始の合図があり、俺は神威とエンペラーを抜刀する。アランは余裕の表情で人差し指を俺に向けていた。ちなみにどんなことが起こっても、(国王だけ)この戦いが終わると傷が無かったことになるらしい。解せぬ。


「二刀流か、珍しいね。でも、僕には勝てない」


そう言うとアランが軽く俺に向かって指さした。その瞬間高速で飛来してきた『何か』が、俺の左肩を貫いた。


「あ〜惜しかったね〜。もうちょっと下なら即死だったのに〜命拾いしたね、君」


今でもよくは見えない、でも形状からしてそれは槍。俺の血で形状が僅かにだがはっきりとしている所、槍先である。


「ん?気づいたかい?これは風の精の加護を施してあるんだけどなぁ〜」

「なぁ、あんたそれってもしかして」

「それにも気づいた?そう、これは絶対必中の真紅の槍、神槍ゲイボルグ。神が使ってたとされる槍さ」


なるほど、こっちではそれで通ってるのか。
神槍ゲイボルグ。古来、インドの大英雄、クーフーリンが使ったとされている絶対必中の槍。投げた相手の心臓を必ず狙うことでも有名だ。

にしても、ヘラクレスといい、これといい、なんで神話のやつが出てくるかねぇ......
ていうかめちゃくちゃ肩痛い。


「なんでそんなものが僕にあるのかって顔してるね?それはね、僕が作ったからさ。魔力回路からパターン制御まで、すべて自作さ。ここまで良作が生み出せるとは思わなかったけどね!」


何このショタ王、作れるとかもうチートやん。あかんやん、それ作れたらあかんやん。


「さて、それじゃ僕の槍の性質と姿を見抜けたご褒美に風の加護は解いてあげる。それでも殺されることに変わりないけどね」


ゲイボルグの形状がはっきりと見えてきた。全長は約2メートル。真紅色の槍の先からは俺の肩を貫いた時付着した血が滴っていた。

アランがまたも軽く俺に指を向ける。だが二度目は食わない。俺は半身引いてよけ、攻撃を躱す。もちろん追撃なんてのは予想済み。後から飛来してきた槍を剣を使って弾く。槍はそのまま回転してアランの方へ戻っていき、上空で停止した。


「うん、やっぱりさっきのは油断だったんだね、そりゃ無理もないよね。それじゃここからは本気で!ゲイボルグ第3形態『円槍サークル』!」


するとゲイボルグが50cm程の槍になって空中いっぱいに浮遊していた。それらは一気に俺に飛来してくる。俺は乱舞で心臓に飛来したものは弾き、それ以外はすべて避けた。


「ゲイボルグ第5形態『妖精達の踊りフェアリーダンス』!」


さっきよりも一層小さくなった槍の波が俺に飛来した。俺はなんとかフィールド中を逃げ回るがついに槍の波に飲み込まれる。いくつかが胸に突き刺さり、その他すべてが俺の体に傷をつけて行った。波が終わった頃には俺の体はボロボロになり、皮膚の至る所から血が出ていた。


「はぁ....はぁ.....はぁ.....」

「もう死にかけだね、そのまま死んじゃってよ。これでさぁ!ゲイボルグ第6形態『落槍メテオ』!」


どんどんと小さい槍達は俺の頭上に収束していく。もちろん俺の胸に刺さったやつも。そしてまるで巨大な山を浮遊させたかのような大きさの槍が顕現する。刃先は俺に向いており、ざっと距離は10mと言ったところだろう。


「さぁ、終わりだよ。エルフに手を出したことを後悔しながら死んでね」


アランがクイッと人差し指を下に向ける。その瞬間、槍はゆっくりと降下を始めた。
まずい、俺はこのままだと死ぬ。



訳ではない。さっきまでのはじゃれ事だ。雷切ひとつで簡単に吹き飛ぶんだから。
というわけで俺はエンペラーを納刀し、神威を構える。


「行くぞ!神威!」

「了解した」

「剣よ、罪を砕け!『雷切』!」


俺は極限に光る神剣の光線を上に向けて放つ。光線はゲイボルグと衝突するが舐めてもらっては困る。見事にゲイボルグを包み込み、大爆発を起こした。


「何っ!『メテオ』をあんな剣で防ぎきったというのか!そんなことがありえるはずが!でもこれで終わりだ!ゲイボルグ第2形態『光速槍ソニック』!」


再び形を戻して、空中で浮遊していたゲイボルグが消えた。
光速、それは光の速さ、音よりも伝わるのが早いとされている。つまりはコンマ0秒の世界である。だが俺には通じない。

俺は神威を納刀して居合の構えをとる。心臓を狙ったゲイボルグを確かに俺は体を地面すれすれまで倒して避け、丁度ゲイボルグの槍身の真ん中が来た時に抜刀して、槍を叩き切った。
これでチェック。


「ゲイボルグが切れた!?そんな馬鹿な!」

「........あんたは強い、だがそれだけだ。あんたは強さゆえの慢心を持っている。それは古代メソポタミア文明の王、ギルガメッシュと同じだ。だからこうなる、だから負けるのさ」

「なんのことを言っている!僕は!負けない!」

「いいや、あんたの負けだ!」


俺は『強化』で一気に地面をける。一瞬という時の中のでエンペラーを抜刀して懐に潜り込む。相手から見たら俺が瞬間移動しているように見えるだろう。
そしてこれで、チェックメイトだ。


「なっ速.......」

「.......『ジ・エンペラー』!」


俺の二刀流スキルがアランの体を切っていく。どんどんと切り傷が付き、俺が18連撃目を当て後ろを向いて2本を納刀する。その瞬間切り傷から体が膨張し始め、見事に大爆発を起こした。俺は未だ唖然としている審判に視線を向ける。


「しょ、勝者!、トドロキ ショウタ!」


ちなみに名前は伝言済みだ。
これで俺の勝利、様子見にしてはだいぶ傷が付いた。

コメント

  • TNTの部屋

    あれ,,,,ゲイボルグって七つの〇罪に出てたっ武器だっけかなぁ〜

    0
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品