不幸な男は異世界で最強になったようです

大島 こうのすけ

19#素材集め

翌日の新聞記事の表面はこうだった。

【怪盗ショット、パーティに現る!貴族に扮した悪魔を見事討伐!?】

....なんだこれ。 
こんな題名とともにスポットライトに照らされた俺が映っていた。いつの間に撮ったんだか。にしてもマスクしててよかった.....

これが朝俺が一番驚いて一番ほっとした事である。

俺は神威を置いて外へ出た。なぜかと言うとそろそろ新しい剣が欲しいのだ。というわけで鍛冶屋と店が併合している場所で剣を見ていた。だが俺が欲しいような剣が見当たらない。

なぜかと言うと、ここにある剣はどこにでもあるような鉄で作られた鉄剣だからである。こんな剣では俺の素振りにするも耐えられない。というわけで俺はおそらく店主であろう50代の男性に


「すいません、この剣よりもっといい剣ありませんか?」


と言ってみた。この剣は値段こそそんなにしないもののかなり内部構造がしっかりとしている。俺が見てもすぐにわかる。


「小僧、名前は?」

「トドロキ ショウタですけど」

「なぜこの剣が一番いいと思った?」

「そうですね、この剣はまず内部構造がしっかりとしているんです。その割にはかなり軽い。おそらく冒険者のために作られたんでしょうね。この強度ならガルラ5匹ぐらいは折れませんね」

「まさか、この剣の本質を見抜く奴がいるとはな。いいだろう、付いてこい」


俺は後ろのドアに消えて行く店主をカウンターを乗り越え追った。その先は加工場へと繋がっていて忙しなく鍛治職人が働いていた。そんな中こちらに気づいて、14歳くらいの少年が走ってきた。


「親方!店番はどうしたんですか?」

「おう、ビスケ、まだ店番は終わってない。剣を持ってきてくれ」

「わかりました!」


そう言うと少年は近くにあった剣を店主に渡す。今度は俺に店主が剣を渡してきた。いつの間に用意されたのかカカシのようなものが俺の15mほど先に立っていた。


「こいつは俺が作った剣だ。こいつらの作った剣はまだまだ未熟でな、さっきの剣と構造が同じになっている。そこなカカシに当ててくみてくれ」

「この剣はどうなっても?」

「ああ、構わない」


なぜ俺がこういったか。それは俺がここに来るまでで試してきた鉄剣はどれも素振りするだけで折れてしまったからである。そのたびに追い出されて結果ここに来て今に至る。

というわけで俺は剣を構え一気に床を蹴る。斜めに振り下ろした剣は綺麗にカカシを両断し、同時に剣の先50cm程が折れた。


「すいません、折れてしまいました」

「いいさ、あんたの腕はよくわかった。これなら大丈夫だ」

「あの....それはどういう?」

「ここに来るやつは冒険者がほとんどだ。あんただってそうだろう?だが、俺は剣を買ってくれるやつはいたが剣を鍛えた奴はいねぇ」

「何故ですか?」

「それはな、お前みたいなやつがいなかったからだ。さっきお前は特に値段は高くもないあの剣よりいいものはないかって聞いてきたよな。俺は驚いた。そいつの本質を見抜くのは無理だろうと思っていたがそいつの本質も見抜いちまった。俺はな、その剣の本質を見抜いた奴にしか剣を打たねぇって決めてたんだ」

「この剣に思い入れがあるんですか?それとも初めて作った剣とか?」

「アホか、職人が始めて作った剣を店先に出すとこがあるかっての。俺もなぜだかわからないがな、その剣がなんかぴったりと来てな」

「なるほど。じゃあ、俺は打ってもらえるんですね?」

「ああ、あんたの腕も確かだ。どうりでこいつがアンタにはなまくらなわけだ。だが今の資源じゃこれ以上の剣が作れねぇのさ」

「じゃあまさか」

「おそらくお前の予想通りだ。ほらピッケルと籠だ。お前は多分採掘って言っても普通に採掘した鉱石じゃ無駄だろうからな!モンスターから取ってこい!」

「え!ええ!?モンスターから取れるんですか!?」

「ああ、実はな....」


俺はそこから長々と鉱石系モンスターの話をさせられおそらく2時間がたった。


「というわけだ。分かったな?」

「ま、まぁ一応は...」

「よし、ならこれも持って行ってこーい!」

俺はその鉱石系のモンスターのリストと生息地が載った紙束を受け取って工場を出ていった。



というわけで俺は今雪山に来ていた。ここまで来るのに1時間半はかかっただろう。『強化』の魔法をかけて走ってきたのだが。寒いかと言われれば寒くはない。体に『火』の魔法をかけているからだ。エンチャントしてしか使えない訳では無い。

目の前には俺より3倍くらいでかい鉱石系モンスター、メタルスコーピオンがいる。こいつからはとても希少らしい鉱石、ダイアモンドメタルが獲れると書いてある。おそらく背中から突出している水晶みたいなやつのことだろう。というわけで


「きしゃぁぁぁぁ!」

「おいおい、いきなりなんだな」


俺はメタルスコーピオンの尻尾の攻撃を避けピッケルに『超硬化』の魔法をかける。ちなみにこいつの尻尾にある毒針は、スズメバチが2回同じとこを刺して起こるアナフィラキシーショックと同じ効果を持っているらしい。つまり刺されば即死というわけだ。まぁ当たらなければどうということはないが。

俺はピッケルでメタルスコーピオンのクラブを思いっきり殴る。その瞬間、クラブが一瞬にして粉々になり無くなる。


「きっ、きしゃぁぁぁぁ!」


おそらく痛がっているメタルスコーピオンの脳天に、飛び上がった俺はピッケルを思い切り振り下ろす。水晶以外の体全体にヒビが入り、そこから紫に似た液体が噴出した。その後、1分くらいしてから動かなくなった。おそらく絶命したんだろう。


「なんだ呆気ないな。それじゃ失礼して」


俺は残った水晶に向けてピッケルを突き立てる。ボロボロと鉱石が落ちてきて、気がつけば足の踏み場がないくらいになっていた。それら全てを籠に入れると不思議と重みがない。籠を見てみると鉱石がなかった。どうやらこの籠は空間倉庫のような役割をしてくれるらしい。

というわけで水晶を一欠片も残さず採掘した俺はメタルスコーピオンの亡骸の対処に悩んでいた。そんな時どこからかドラゴンの声がした。


「グォォォォォ!」

「なんだあれ」


いかにも硬そうな鱗を纏ったドラゴンがこちらに向かって飛来してくる。メタルスコーピオンと同じくらいの体長だろう。俺はいったん後に下がって様子を見ることにした。ドラゴンはメタルスコーピオンの亡骸に着地して食べ始めた。モンスターリストの写真とドラゴンを照らし合わせてみる。

あのドラゴンはプラチナドラゴン。メタルスコーピオンを捕食するらしい。そしてこいつからも希少なブラチナが取れるらしい。こいつの翼がそうなんだそうだ。というわけで俺の目の前に立った魔物獲物はすべて狩り尽くす。(ちなみにこいつは竜族ではなく魔族らしい)

俺は『強化』の魔法で地面をける。一気にドラゴンの近くまで行った俺は飛び上がりドラゴンの顔に向けてピッケルでぶん殴った。


「グォッフゥ!」


不意打ちされたプラチナドラゴンは頬の部分をへこませて倒れた。すぐに起き上がろうとするが俺が地面につくより先にドラゴンが倒れたためもう一回振りかぶって、起き上がろうとした頭に思いっきり叩き込んだ。頭にヒビが入るがまだ絶命はしないようだ。そのまま飛び立とうとする。


「逃ぃがぁすぅかぁ!」


俺は『強化』をかけた自分の腕で今出せる一番の腕力でピッケルを投げる。ピッケルはプラチナで出来ている翼の部分を突き抜け、反対側の翼も撃ち抜く。俺は翼の空気抵抗を失って地面に落ちたプラチナドラゴンに拳を握り思いきりぶん殴った。拳は腹部に吸い込まれ腹部をへこませた。

どんな種族だろうと腹部は急所の一つであるため、俺はそのまま連続で殴り続ける。10発目くらいで鉄が軋むような音が聞こえ、11発目大きく振りかぶって叩き込んだ俺の一撃は腹部を撃ち抜き穴を開けた。その後すぐにプラチナドラゴンは動かなくなった。
というわけで絶命したのである。俺はメタルスコーピオン同様にピッケルで翼の部分を全て掘り籠に入れる。やはり重みもなければ姿形もなかった。

俺はここで最大の難点に気がついた。この2匹をどうするかである。手っ取り早いのが燃やすということだが素材は高く売れるというし、どうしようか。
ここで俺はひとつ思いついたことがあった。そう、こいつらを籠に入れてみるのだ。
即実行ということで入れてみた。


「まじかよ.....」


手始めにメタルスコーピオンを放り込んでみると綺麗に放物線を描いて籠にボッシュートした。そのまま姿かたちも無くなったが。というわけでプラチナドラゴンもボッシュートして帰ることにした。『移動』で帰ろうとしたその時


「ん?なんだあれ」


地響きとともに大きな影がこちらに近づいてくる。猛吹雪より、姿を現したのはオリハルコンタートル。別名『鉱石山の亀』なぜこんな名前が付いているのかといえば、この亀は甲羅の上に鉱石が沢山あり、山が形成されているためである。が、おそらく自生しているのだ。主にオリハルコンが取れるらしいがそれ以外にもダイアモンドメタルやプラチナを始め、とても希少な鉱石が山ほど取れるらしい。

というわけで俺はオリハルコンタートルの上に飛び乗り鉱石採掘を始めるのだった。




1時間半くらいたっただろうか。俺は最後の鉱石を掘り終えて籠に入れた。相変わらず重さもなければ形もない。ひとつの小島みたいな広さだったが全て掘り抜いてやったぜ。山のような形だったものは今や真っ平らになった。


「じゃあな亀公!ありがとよ!!」


俺はオリハルコンタートルから飛び降りて『移動』で街に帰る。飛び降り際に亀が半泣きになっていたような気がしたが気にしない。

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