不幸な男は異世界で最強になったようです

大島 こうのすけ

17#作戦開始

俺が予定していた1時間まであと10分という時。
結界はまだ街の上の部分を多い被せていなかった。だがあと10分もあれば余裕だろう。
俺がそんなことを考えているとハクアが俺の話しかけてくる。


「ショウタ、聞いたぞ。今回の作戦お前が指揮を取るそうじゃないか」

「ん、まぁそういうことになるのか。そうだハクア、お前は最初から飛んで飛行モンスターをある程度可能なら撃ち落としてくれ。援護射撃する魔法班が楽になる。でもすれ違っていくやつは無視してくれ。あくまであいつがメインだからな」


俺はそういい1時間が経とうとしている今、全体像が見えた魔物めがけて指を指す。
ハクアは静かにコクりと頷く。そして俺たちは降りて作戦開始前の通達と言う名の士気上げに参加する。もちろん士気を上げるのは俺らしい。俺は冒険者達が見ているステージに上がりマイクをとる。


「あーあー、よし。えっと、今作戦の指揮を取らせてもらうトドロキ ショウタです。よろしくお願いします。今作戦は非常に重要になります。街の命運がかかっていますからね」


よし、もうめんどくさい。かたっくるしいのはなしだ。
俺はスイッチを入れて再びマイクを握り直す。


「お前ら!心の準備は出来たな!神様へのお祈りは!?部屋の隅で震える準備はOK!?ま、そんなことさせないけどな!さっきも言ったように今作戦は非常に重要だ!あいつがここに来るだけでこの街が滅ぶ!それかは確実だ!」


俺の言葉にザワザワと観衆がどよめき始める。だが俺はそんなことを機にせず大声で


「怖気付いてるやつはいるか!いないよな!さぁ、冒険者達!剣をとれ!杖をとれ!自分の武器を掲げろ!この街は俺たちのもんだ!絶対に守り抜くんだ!先代のヤツらがそうしてきたように!」


俺の声に反応するように観衆が雄叫びをあげる。これが士気上げというものだ。


「時は来た!今日この時を持って、魔物討伐作戦を実行する!各班リーダーから聞いてるだろうが少しでも怪我をしたらすぐに壁まで戻ってこい!無理なら助けてやれ!深追いはするな!命大事にだ!それじゃ、いくぞぉぉぉ!」


俺の右手が上につき上がるのと同時にまたも士気が上がる。
そして俺たちは所定の位置についた。壁のすぐ側には戦士が8人、割といたもんだ。
壁の上には魔導師とさっき結界を張り終わった結界師たち合計23人、そして俺たち突撃部隊14人だ。これならまず負けることはないと思うが戦場は何が起こるかわからない。気を引き締めて行かねば。


「よし、行くぞ!」


俺の声とともに突撃部隊は魔物に向かって走り出す。
空中にはハクアが天女の鎧を着て魔物に向かっていた。魔物はこちらに気づいたのか黒色の魔法陣が空、地面問わずかなりの数設置される。そこから魔物が次々に湧いて出てきた。


「来るぞ!」


俺は剣を抜刀し『強化』の魔法をかける。そして1人先陣を切って群れに突撃していく。


「エンチャント『深淵』!」


俺の剣に水が顕現し付着する。そして


「『アビスブレイク』!」


横薙ぎにした俺の剣から放たれた1トンの水圧がある水は前方の敵を魔物の足の付近まで吹き飛ばす。負けじとほかの冒険者たちもスキルを発動しどんどん魔物へ近づいていく。
一方で捌ききれなかった魔物は俺たちを抜け壁の元へと向かっていく。だがその殆どが壁の上にいた魔法班に焼き払われたりして絶命していた。
なおも魔物は次々と魔法陣から湧いて出ていた。


「キリがないな!『転身』騎士王の鎧!」


ハクアの体が光り、鎧が顕現する。手にはおそらくブリテン王のアーサー・ペンドラゴンが持っていた聖剣エクスカリバーが握られていた。ハクアがそれを振り下ろすと光の斬撃が空中のモンスターの首を次々とはね飛ばしていった。だが、それでもまだ防ぎきれない。地面と空から俺たちを素通りして言った魔物がついに壁へと押し寄せる形となった。
魔法班の援護射撃もなかなかに戦士達も奮闘して何とか持ちこたえていた。
そんな中やっと俺たちは魔物の足の付近についた。


「よし、『複写コピー』!『拡散ワイド』!」


俺達の背中に魔法陣が2つ顕現しその魔法陣から翼が出現する。


「うぉっ!?背中に翼が!!」

「なんだこれ!俺浮いてるぜ!」

「あんたらの背中にハクアの翼を模したやつ複写した!これであいつの頭まで行くぞ!」


俺たちは一気に胴体をすり抜け頭まで飛び上がる。そして


「よし、一気に......」


俺が叫ぶのと同じくらいに魔物の腕が俺を吹き飛ばさんとばかりに向かってきていた。


「うぉっと!危ねぇ!」

「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」


俺が避けた時、注意していなかった他の冒険者が魔物の群れの中に放り込まれる。それに気づくと同時にハクアが魔物の群れに突っ込んでさっきの冒険者をなんとか引き上げたいた。さすがは戦天使。飛行能力が違う。


「やばいと思ったやつは降りて下のヤツと戦ってくれ!」


俺の言葉に俺とハクア以外のやつが下へと降りていく。
おいおいお前ら、マジかよ.....
俺が顔に手を当てているとハクアが


「ショウタ!来るぞ!」

「うぉっ!危ねぇなこんにゃろ!」


俺はまたも間一髪でなんとか避けた。


「人が落胆してた途中だろうがぁぁぁ!」


俺は半ギレ状態で魔物の目に剣を思い切り突き立てる。痛がったのか目元を抑えようとしたのか魔物の手が来たため剣を抜き離脱した。


「ギャァァァァァ!」


魔物はそんな叫びをあげながら腕を振り回す。
この腕の速さが早いのなんの。
何とか避けた俺達は片目を潰した魔物に対してどうするべきか考えていた。


「ハクア、30秒もたせれるか?」

「分からんがどうしてだ?」

「最大火力の雷切でアイツごと吹き飛ばす」

「それでは残った冒険者たちはどうするんだ!まさかここで死ねとは言わんだろうな!」

「安心しろ。今から『移動』をちょっと離れたとこに設置する。そっから街に戻ってくれ。ていうかその言い方だとお前は残るみたいな言い方だな」

「じゃないと誰がお前をキャッチするというんだ?どうせ最大火力と言っておいて全魔力解放するのだろう?安心しろ。私は範囲外になんとか逃げてそこから全速力でキャッチしに来る」


くそ!この戦天使、できる!


「わかった。頼んだぞ!」


俺達は痛みから回復した魔物の腕の振り回しを避け俺は魔物の遥か頭上、ハクアは魔物の前に移動する。


「ここからは私が相手だ!『転身』雷双の鎧!」


ハクアの体が再び光り、周囲にイナズマが走る双剣と鎧を顕現させた。


「はぁっ!!」


ハクアの双剣の素早い連撃が魔物が振り回した腕に刻まれる。
同時に周囲に走っていたイナズマが腕から内部に入り、体を少しの間痺れさせる。
ハクアはすぐさま下で戦っている冒険者たちに『移動』が設置されている場所を指さし


「あそこまで走れば街に帰れる!急げ!」

「でも、まだ魔物は残っているぞ!」

ショウタあいつが何とかする!だから急いで走れ!死にたいのか!」


ハクアの気迫に押され冒険者たちは戦闘をやめ急いで『移動』の設置されているところまで走る。最後の1人が入ったところで『移動』が閉じた。
 その間実に20秒ほど。
ハクアは見送っていたために後ろに警戒していなかった。麻痺から放たれた魔物は足でハクアを蹴り飛ばした。だがそのおかげで雷切の範囲からは出られたようだ。ここまでで10秒。計30秒。遥か上空にいた翔太の準備が完了する。


「神威!全力で行くぞ!!」

「全く、主はいつも無理をする。だがそこが我の気に入った所でもあるのだがな」

「全魔力解放!剣よ、罪を砕け!」


剣が光り輝き、空に魔物を包み込むほどの特大魔法陣が展開される。こちらに気づいた魔物が手を伸ばし俺を捕まえようとする。
ーーだが、もう遅い。


「『雷切』!」


瞬間、音もなく光が走る。次の瞬間魔物を光の柱が包み込み、激しい轟音とともに大爆発を起こした。
その爆風は壁まで届いており壁の上に立っていた魔導師たちが尻餅をついた。
光の柱が消えてなくなった後には魔物の姿は欠片もなく巨大なクレーターのみが残っていた。もちろん眷属として召喚された魔物は消え失せて。
そこまで確認したところで俺は下に落下していく。なんとも言えない浮遊感が俺を襲う。

おそらくハクアがキャッチしたのだろう。そこで俺の意識は暗転した。ただ、露出が少し多い鎧の胸にキャッチされた俺の顔が気持ちよかったのを覚えている。



補足
災害級の魔物は全長10m~30mまでのものがおり、今回は23メートルほどのものでした

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