オッサンラブ
一章 2
「おはようございます」
「あぁ、よい」
朝一緒になったら気まずいと思ったけど、よく考えたら部長は社用車で出勤だ。
随分高待遇だけどそれくらいこの会社に貢献しているのだから、私もそれについては特に文句はない。
むしろ今となっては非常にありがたい。
だから、私と部長は今会社でいつも通りに挨拶を交わした。
本日初対面。
昨日の衝撃的な事件以来だ。
部長は今日もパリッとしていて、愛想がない。
昨日の一件はなかった事にするらしい。
結局、一日中部長は“部長”で、特におかしな点はなかった。
昨日のはニセモノだったのだと言われた方が合点がいく。
辞めたいと常日頃思っていた仕事だけどハリが出た気がする。
恋愛でないのは非常に残念だけどそれはしょうがない。
だって、あのダサさと今のギャップ。
逆だったら恋に落ちていたかもしれないけど、完全にマイナスポイントだ。
「お先に失礼します」
さっさと帰る事にした。
引越しの片付けだってまだ終わってないし、家の近くにあると言うセレクトショップもチェックしたい。
流石高級マンションのある街だけあって、店のセンスもいいのだ。
帰り際、フロアに目をやると一番奥に居る部長と目が合った。
「あぁ部長超かっこいい!」
目が合ったとキャッキャする同僚に呆れた視線を送る。
まさかの事実をチクリたくなったけどやめた。
気心の知れた同僚だけど何となく秘密にしておきたかった。
何度も言うが、断じて恋ではない。
子供の頃に裏山でこっそり育てた犬のまぬけな顔を思い出した。
そう、私は観察したいのだ。あの珍獣を。
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