ラッシュ列伝

ユーサン

漁夫の利と玉の利

頭がズキンズキンと痛む中、微かだがおばちゃんの声が聞こえてきた。「ギブアップなら保健室に行くかい?」現在自分が置かれている状況が理解できないことばかりだが、今ので一つハッキリとしたことがある。このよく分からない状況や人の群れの集団等の不可思議な出来事は日常茶飯事なのである。おばちゃんがまず、「ギブアップ」というワードから当たり前なのが手に取るように分かる。そして、次に目に入ったのは同じように何人も倒れている様子。これは一見なにかのテロでも起きたのかと思うのが普通であるが、周りの人達を見渡す限り逃げる様子は愚か、慌てる仕草ひとつもないのが何よりの証拠だ。その時ふと頭に寒川さんのことがよぎった。「彼女がいない…」彼女は見渡す限りいないのだ。巻き込まれ、この先で倒れていることを思うとグラグラした頭と痺れる体を起こし走ることを決意した。「いくのかい?この先は序章でもなければスタートラインに立てない者達がここにいる。気をつけなさい」この先に、何が待ち受けているのかをおばちゃんの台詞からゾッとすると同時に助けなければならないヒーロー的な何かが使命感的に体を動かした。

1人の小さな少年が廊下を走っていた。
この学校では上履きの色で何年なのか把握でき、少年は青色なので1年生なのが見てわかる。少年は必死に走りひとつの扉の前で立ち止まった。扉の上の看板には生徒会室と書いてあった。
「ガラガラガラ」
「どうした、戸塚?そんな急いで何かあったか?」
「先輩、大変です。彼が…いち…らいさんがあの場にいました」少年は先程の全力疾走と焦りから相当途切れ途切れの言葉になっていた
「会長どうしますか?」さらに1人の女性が少年とは違い、冷静に話していた。
「そうじゃのう、ルシエルとミライの接触が我らにとって吉と出るか凶とでるかは彼に託すしかないんじゃないか?」もう1人癖が強い生徒会長らしき?人物も話していた

見渡す限り横には何か呻いている人達といつも通りの学校風景があった。道のりに関しては変な話転がっている人達を辿っていけばいつか彼女がいるはずだ。どこか自分は彼女が倒れていない安心とどこにも彼女がいない不安でいっぱいであった。体と脳の整理が落ち着いていないのか、まるでスポンジに水を吸収させすぎて、破裂した気分だ。食堂は1階にあり、どうやら2階へ続く階段を上がるようだ。2階に上がるとすぐあたる廊下を左に曲がるようだが、この先は少し広い広間があり、多目的ホールみたいなのが軽くある。その続く廊下の方をみると巨大な人が1人とそれを囲む人達がいた。
「おまいらが周りを囲ったところで意味などないわい!フンっ」自信ありげな声が聞こえるとその巨大な男は手に持っている…あれは風呂などで使う取っ手付きのおけを持っていた。それを囲む人達目掛け振り回すと驚くことに真空派が出来ていた。景色のあいだに1つのよじれが見えることからかなりの威圧を放っていた。それは囲っていた人達に直進し、先程まで巨大な男の周りにいた人達は一瞬にして吹き飛んだ。たが、ただ1人吹き飛ばす、避けた人がいた。「何故、彼女が…」そう、そこには寒川さんの姿があった。俺は走った。必死に何かを受け止めるしかないように前をただ向き、全力で走った。何でもいい。一つでもいいから何かを理解したい。知りたい。「なんでお前がここにいるんだよ?!」俺は彼女に届くように声をだし、走り続けた。口を閉じる頃には広間に足を運んでいた。するとそこにいた彼女は「何故、あなたがいるの?私が蹴り飛ばしたはずなのに」俺は理解するのは愚か、新たな疑問が誕生した。あの時の背中に来た激痛は彼女による蹴り…分からない。

「なんで蹴飛ばしたの?何故そんな目をするの?」彼女の目は酷く軽蔑するかのような目つきでこちらを見ていた。付け加えるなら、お前は誰だというような目つきを巨大な男もこちらを見ている。「取り込み中わりぃがお前どいてくんね?」巨大な男は先程のようにおけを振り回そうとしていた。来るとおもい足に力をいれ、手を前にやろうとしたが、手は間に合わずもろにお腹に衝撃波みたいな感覚を受けた。「ほぅ。吹き飛びはしたが、よく受け止めたな。だけど、もう1発打ったら終わりだな」
やばいやばいやばい。確かに足を崩すことは無かったがこれは非常にまずい。次、もろに喰らうと流石に死ぬ。俺は考えた。この一瞬。全神経を脳に、伝達系を全て集中させ、アドレナリンがバリバリでてきた。そしてでてきた答えが男の性格から読み取れる心理的攻撃。論理的思考が頭で完成させられた。「おい、たかがヒョロい男1人に一撃決めたからってなにいい気になってんの?逆に受け止められたってことは大したことないんじゃないのか?ミノタウロス」幼稚な言葉だが、今は1秒でもいいから時間が欲しい。情報を・俺にアドレナリンをぉぉ!
「ミノタウロス!?おまい、俺に言ってはいけない言葉を…おまいは1度死んだ方がいいな」返って怒らせたのか時間は稼げたものの彼のテンションはMAX!テンションスキルのひとつでも飛ばしてきそうであった。そうすると、ミノタウロスは先程のように真空派を造りその風に乗るかのように飛び膝蹴りをかまそうとしていた。馬鹿かよ。衝撃波みたいな一撃食らうだけでも最悪なのに体制や力も抜けた瞬間に膝蹴りは反則。そんな戯言をほざいていると一つの光がみえた。その光は一直線に天井を目掛けてアーチのように線が出来ていた。これは飛ぶしかないのか?天井に向かって…。 やるしかないか…。
この人生初めての記録更新。そして初めてめいいっぱい天井目掛けて飛んだ。そしてオーバーヘッドのように足を天井の方にできるだけ向けた。「?!、なんだ、その瞬発力は」俺もミノタウロスも驚きを隠せない。よく男の姿がみえる。これなら腹付近に一発蹴りを入れられそうだ。光の線がまた、アーチのごとくでてきた。お次は天井を足で蹴り、体重と重力を使い倒せと言っているらしい。その通り行動するとミノタウロスは「フンっそんな攻撃避けられないだと?対策済わい」おけの凸の部分をこちらに向けて振り落とす気満々のようだった。
「お相手はこちらよ」
なんとミノタウロスの視界を利用し、後ろからなんと彼女が…寒川さんがタックルかのような蹴りを入れた。
ミノタウロスは体制を崩し、その隙にこちらも蹴りを一発いれた。「ぐはっ。まさか、2対1でやるとは…」ミノタウロスはかなりの予想外な動きと攻撃をくらい、よろめいていた。「ありがとう、寒川さん。」全て寒川さんのおかげであった。「でも、どうしてここに?」
彼女への質問と同時にもう1人男性が寄ってきた
ミノタウロスではなく…あれはユウの姿であった。俺はもうおどろかない。「ルシエル、俺の可愛い後輩をここまでやってくれたは…」ん?ユウの怒っている姿を初めてみた。やっぱり驚いていいよね?だってもうわっけ分からない。「すまんなっ、ミライよ。俺はまだお前に話してないことだらけだ。終わったら隠れ家で話そう」
隠れ家ってなんだよ。それに、話してないことってなんだ、これ以上おれのスポンジの脳を破壊しないでくれ。
「漁夫の利ってのはこれのことを言うんだな。美農田のやつももう少し周囲に警戒せんといかんな。制空権だぞ、制空権っ!」俺に言わせてみればユウが何故上の立場的にいるんだ。漁夫の利よりも玉の立場・玉の利を俺は知りたい

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