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新聞部の推理人

神木孝弘

浜岡高校の秘密

 「悠斗。お前はどうするんだよ。新聞部は?」
 「ごめんごめん。しばらく図書委員と漫研の掛け持ちだから参加できそうにないわ」
 「お前って奴は……もういい!」
 
 入学して初めて迎える月曜日の放課後。誰もいないはずの1年C組の教室から聞こえる声は、拓人の声だった。
 拓人はスケジュールに余裕を持たせ今学期末の新聞の制作を開始しようと計画していた。その最初の編集会議に悠斗を呼ぼうと電話をかけたのだが、あっさりと断られてしまった。
 拓人は既に新聞の特集記事になりそうなネタを探し出し、今回の会議で提出する予定だった。
 部室へ向かう彼の背中は、少し寂しそうに映った。

 「おはよう」
 「遅いですよ。10分遅刻です」

 部室のドアを開けると同時に聞こえてきたのは、結衣の少し大きな声だった。

 「10分くらいいいだろ。それじゃあ会議始めよっか」
 「よくありませんけど、始めましょう」

 長机二つとパイプ椅子四脚ならんだ小さな部室だ。
 パイプ椅子の上にはノートパソコンが二台。そして家庭用のプリンター一台が置かれている。壁際にある棚にびっしりと詰まっているのは、恐らく授業で使う資料かなにかなのだろう。

 「それじゃあ会議を始めるとして……結衣さんはなにかいい案はありませんか?」
 「呼び捨てでいいですよ。そうですね。では、浜岡高校七大事件について調べるのはどうです」
 「まぁやっぱりそれしかないよな――」
 
 ――浜岡高校七大事件
 それは浜岡高校創立から現在までにおいて、発生した七つの事件のことだ。
 それらの事件は、暴動など様々な事件が有り、現在でも生徒の間で語り継がれている。
 ほとんどは1960年代から1970年代初頭に発生した教職員と生徒の間の論争が原因とされるものが多い。

 「暴動がほとんどなんだけど、ひとつだけほかと違う事件があるの」

 結衣の言うとおりこの事件は七件中六件は暴動と暴行などだ。しかし、一件だけではあるが生徒も教員も誰も知らない事件がある。
 それはいつしかタブーとされ、生徒の間では内容は知らないが禁句扱いされている。
 そして語り継がれなくなったその封印された事件は、浜岡高校都市伝説の一つとして様々なうわさが立っている。

 「それってつまり都市伝説の中から取り上げるのか?」
 「違います。私たち新聞部はこのタブーの事実を調べるべきだと思います」

 この事件がタブーとして扱われたのはもう何十年も前の話。現状生徒の誰も知らない話を掘り返すのは先輩方からしたらいい気持ちはしないだろう。
 しかし、それらの歴史すべてを知ることも生徒としての義務なのかもしれない。

 「私は気になるんです。この事件を調べなきゃいけないんです」
 「まぁ新聞部だし出来ることには限界はあるけどやるだけやってみよう」
 「そんな限界に縛られちゃダメなんです」

 結衣は突然立ち上がり拓人に向かってそう叫んだ。
 彼女の目は本気だ。それだけこの事件が気になるのかは俺には知るすべはない。
 ただひとつ言えることは……結衣はこの事件解決しない限り納得しない。

 彼らたちは次の日から早速この事件を調べ始めることにした。
 まずは手始めに今現在まで伝わっている六つの意見についてまとめることとなった。

 1,浜岡高校第一期暴動
 この事件は浜岡高校に最初に起きた暴動だ。この暴動は当時の校長が時間割を六時間から七時間に変更し、更に体育祭を中止にして学業に専念させることを目的に変更をしたことに生徒が起こした反対運動だ。
 学校側との話し合いの場が設けられた一週間後までこの運動は続けられ、最終的にこの計画は白紙になった。

 2,浜岡高校殺人未遂事件 
 この事件は前述の事件で生徒と教員の口論となり、生徒が手に持っていたハサミで教員を刺した事件だ。その教員は命はとりとめたもののその後教員を退職している。

 3,学校行事中止事件
 この事件は前述の第一期暴動事件の翌年に発生した事件で当時の校長が前年の反省として文化祭と体育祭を中止にした事件だ。この時は当時の校長により徹底的な暴動抑制が行われ、警察まで介入させた。

 4,浜岡高校第二期暴動事件
 第一期暴動事件の後任の校長が「生徒を甘やかせると足をすくわれる」と発言したことに端を発する事件だ。この発言を聞いた教職員は学力向上の名目のもと、学校行事をすべて中止に追い込もうとしたことに生徒が反対した事件だ。
 この事件も最終的には生徒と学校の間で話し合いの場が設けられ決着をした。

 5,校舎放火事件
 前述の第二期暴動事件の最中、生徒の一人がいたずらのつもりで校舎脇にあったゴミ集積場に火をつけた際特別棟に引火、全勝した事件だ。
 この事件をきっかけに学校から話し合いが持たれたが、学校側は警察に介入させなかった。
 
 6.校内暴行事件
 前述の暴動事件のやり方に反対した反対グループの生徒の一人が校内で暴行を受け重傷を負った事件

 7,不明

 これが浜岡高校七大事件の伝えられている内容全てだ。

 「こうやってホワイトボードに書いてみると結構あるなぁ」
 「この中にきっと答えはあるはずなのですが……」

 拓人は少しホワイトボードを見つめるとあることに気づいた。

 「おい。六番の事件なんだけわかっているのはこれだけか?」
 「はい。クラスのみんなに聞いてみたんですけどこれしかわからなくて……」
 「クラスねぇ……ところで話変わるけど結衣って何組だっけ?」
 「B組です。けど今はそんなことどうでもいいんです!」

 この事件を並べてわかったことは一つ、結衣がB組だったという事実だけだ。
 
 「この暴動に関する資料とかはないのか?」
 「探したんですけどほとんどありませんでした」
 「正直ミステリーはあまり好きじゃないからなぁ……」
 「けど考えなきゃダメですよ」

 少し弱音を吐くと、結衣はとても迫力のある勢いで迫ってくる。
 逃げ道はないということだ。
 この事件を解明しないと新聞はできない。
 残り三ヶ月のタイムリミットが始まった。 

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