片思い

日向葵

63話 無力

 なんかむしゃくしゃする!
 園崎が告ったやつに会ってみた。
 確かに好青年って感じのイケメンで女子にモテそうな人だった。盗み聞きした(?)時にも思ったが、女子の気持ちを察して、傷つかない様にそっと包み込む優しさがある。そんな印象を受けた。話口調も穏やかで俺とは正反対なタイプ。こりゃー、園崎じゃなくても、他の女子も好きになってたりして。何で同じ人間でもこうも違うものだろうか。俺は自分と比べて落胆してしまったが、つい強がってどうでもいいやと思い直した。
 今回はその優しさこそが、園崎の心を静かにズタズタにしていってしまった。
でも、これが現実だよな。
 園崎、あんなに意気込んでたのにな。
 俺とは違うけど、同じ失恋者同士として居た堪れない気持ちになった。

報われて欲しい。

 その想いが高まってあんなことしちまったけど。それでも、あの好青年な先輩は首を横に振った。綺麗事でも偽善でもない。濁りのない透明なほど真っ直ぐで正直な気持ちを俺にもぶつけた。

そう。意地悪で言ってるんじゃない。ただただ素直な気持ちを言ったまでだ。

…でも、何だろう。俺の中で腑に落ちないのは。
無力感。
脱力感。
敗北感。
 頭に浮かんだ言葉に何トンの重さを感じる。
 俺は何もしてやれない、情けない奴だ。園崎にも。失恋した者同士が傷の舐め合いなんて柄でもないことなんて…。
『一緒に泣こうね!』
ふと脳裏によぎった園崎の言葉にハッとした。俺は泣けないかもしれないけど、一人で泣いてるんなら…。
柄じゃないけど、上手く言えないけど。
今出来ることと言えば…!
 俺は気がつけば走っていた。先に行った園崎を見つけ出そうと俺は懸命に走った。今なら間に合うかもしれないと思ったら走るスピードが加速した。途中自動販売機を見つけた。ポケットに手を突っ込むとチャリンチャリンと小銭を取り出した。ボタンを押しそれを手に俺は、園崎を探しに走り出した…。

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