片思い

日向葵

52話 後悔

 沼田さんに、確認もしないであんなこと言っちゃったと、後悔していた。どうしよう。でも、今更ごめんなんて、言いづらいし…。
ただ悔しくてなんか裏切られた気持ちになってあんなこと言っちゃうなんて、余裕ないなー。そう思うと目頭が熱くジワッと涙が出てきちゃう。ごめん。ごめん、沼田さん…。
心の中で呟いていると人とぶつかった。
「ご、ごめんなさい!」
「いや、こちらこそ」
その声に聞き覚えがあった。ふと顔を上げると、自分が恋焦がれてる彼の姿ー翔太先輩が目の前にいた。私は慌てて顔を背けた。
「あ!すみません!余所見してて…。」
「ううん、俺もごめん!あれ?泣いてたの?」
その言葉にハッとしたが、もう遅かった。翔太先輩の言葉で、更に涙が溢れてついにはその場にしゃがみ込んでしまった。
私が泣いているのに困惑してる翔太先輩は、「どうしたの?なんかあったの?」と心配してくれた。私は「友達とっ、喧嘩してっ。」と大まかなのことを伝えた。
貴方のことで揉めたんですなんて言えないから。「そっか。」と言うと、私の頭をそっと撫でて「ちゃんと仲直りしなよ!」と言ってくれた。私はもう顔なんてぐちゃぐちゃになっていたけど、「はい!」と返事した。
私は翔太先輩に付き添われ、座れるところまで行った。たった数分でも、翔太先輩といれた時間がすごく幸せだった。
「落ち着いたかな?俺、こういう時どうしたらいいかわかんないんだけど。」と、困ったように、はにかんだ。その顔も愛おしくて、私の心がキュッと締め付けられるような気がした。
「ありがとうございます。ちょっと落ち着きました。居てくれてありがとうございます!」私が笑顔になったことに、ホッとしてる翔太先輩。
「すみません!何か用事あったんですよね?」
「え?あ、いや。委員会が終わったから、部活行こうかなって。まぁ、君を放って部活なんて行けないし。だから今は部活サボり!」なんてね!と付け加えて、ニカっと笑った。
なんでこの人はキラキラして見えるんだろう。私なんかのために…。
「友達と何かあったかは分かんないけど、きっと話したら分かってくれると思うよ。」私を励ましてくれてるのか、翔太先輩はなるべく明るく言った。
「そうですかね…。私、すっごく悪いこと言っちゃって。八つ当たりです。最低です。本当に…。」
「なんて言ったの?」
「え?」
その言葉に、チクリと痛みが生じた。
でも、私の口から自然と言葉が出てきた。
「私、気になってる人がいて、友達に協力してもらってて…。でも、その友達がその人と帰ってて、ショックで…。でも確認もしないで、嘘つき!って言っちゃって。嘘つかれて、わーってなって…。冷静になれなかった。」
また目頭が熱い。でも、泣いたら先輩が心配するって思ったから涙を流すのを我慢した。
「そっか」
「でも、今更、謝ったって…」
「諦めちゃうの?」
「え?」
「俺だったら謝って仲直りしたいな!もし、君の立場だったとしても俺は謝って、誤解を解きたい。誤解されたままって辛いじゃん?そう思わない?今更っていうけどさ、今ならまだ間に合うんじゃない?」
私は翔太先輩の言葉を自分に落とし込んだ。
まだ、間に合う。間に合うと言うより、ごめんってただ伝えたい!そうだ!伝えたいんだ!
「翔太先輩!私、謝ってきます!翔太先輩の言う通り、誤解されたままでは悲しいですから。」
私は思い切り立ち上がった。今なら言える。ううん、伝えなきゃ!
「話を聞いてくれてありがとうございます!」
お礼を言うと、翔太先輩が「おう!頑張れ!」とエールをくれた。
私は翔太先輩から離れて沼田さんを探しに行くのに小走りに前進した。途中、くるりと振り返って翔太先輩にこう伝えた。
「後でお話しあるので、聞いてくれますか?」

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