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片思い

日向葵

48話 好きなのに

「そんなことがあったんだね。」
「はい。」
 私は翔太先輩に田辺からのいじめられていたこと全部話した。
 朝から「好きだ」と言われ迷惑してること、他の男子と一緒になってありとあらゆるからかいを受けたこと。時には涙を流してしまったこと。泣いたことが火種となり更に揶揄われてしまい、登校するのが怖くなったこと。しまいには、女子にまで暴言を吐かれ、仲間外れにされ独りになってしまったこと。誰にも言えない、言ってはいけないような気がして、悶々とした日々を送ったこと。
 その話を真剣に聞いてくれる翔太先輩の横顔に頬を染めていく自分がいるのが、恥ずかしい。…でも、なんて幸せな時間なんだろう。
 シンデレラが継母や姉に嫌がらせを受けた後、魔法使いにより綺麗なドレスを身にこなし舞踏会で王子様と出会いダンスを踊る。でも、0時になったら、その魔法は解けてしまう。急いでたのか、それともわざとかは分からないが、ガラスの靴を置いて、行ってしまう。ガラスの靴を置いていったシンデレラを王子様は忘れずに彼女を探し求め、そしてはれて彼等は結ばれる。
 私はそんなハッピーエンドが大好きだ。
 もし、今みたいに翔太先輩と2人きりが普通になって付き合う時が来たら…。人生の中で大花火が大空にパーっと輝くような眩い奇跡は起こらないだろうか。
 私は翔太先輩を見るなり、胸がキューッと締め付けられる気持ちになった。
(好きなのに…こんなに、こんなに、好きなのに!)
 好きと言う気持ちが揺らぐのは田辺ではなく翔太先輩であることは確信している。
 ならば、言ってしまえば良いんじゃないか?と言う気持ちと、このままの関係が良い、好きって気持ちを自分の中で留めておいて彼に尽くしたいという気持ち…。
それからが、自分の中で葛藤しているのは嫌でも分かる。
(私は一体どうすれば良いの?!)
そんな事を考えていては、心が張り裂けそうになる。
 でも、言ってしまえば最後。翔太先輩は二度と私の前に現れてくれないかもしれない。今の都合のいい時の相談相手の方がお互いのためにはいいんじゃないか。
(でも、それって逃げだよね?)
心の中でチクリと傷んで、血が滲む。
 私の心の中とは裏腹に時は刻々と過ぎていく。
シンデレラが0時に魔法が解けてしまうのと同じで、学校のチャイムが鳴り響く。
「そろそろ帰ろっか?家まで送っていくよ。」
(え?)
私は胸が飛び跳ねそうになった。
ドキドキ、ドキドキと鼓動が高まるのが分かる。
「良いんですか?先輩の帰りが遅く…」
言い終えるより前に、翔太先輩が
「僕の心配より君の方が心配だ。女の子が一人で帰ったら危ないし。ね?」
そう言って私たちは一緒に下校する事になった。
翔太先輩と並んで帰るその時間は幸せすぎて田辺なんかにいじめられてたことなんて、一変に吹き飛んだ。
 (私、シンデレラみたい!)
私たちは、別に踊っていないが、私の心は踊っていた。浮かれてたんだと思う。
(またいつか、こんな日が来ると良いな)
そんなことを思っていた私にはこれから起こる最悪な事件に巻き込まれるなんて予想だにもしていなかったのだった。




「な、なんで?」
 下駄箱のところで翔太先輩を見つけて、声をかけようとした矢先に沼田智奈美の姿を見て愕然とする女子生徒。その他にも翔太先輩と並んで歩く女子生徒を見ていた人物が実はもう2人。
(俺への気持ちをすっぽかしやがって!)
(やっぱり沼田さん…翔太先輩のこと好きなんじゃん…)

 3人のそれぞれの恋の炎は炎上し、じりじりとそれぞれの想いに燃えつき、もう後戻りはできないほどになってしまった。

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