片思い
43話 もう1人の恋する乙女
「沼田さん…今何言おうとした?」
目の前にいた人物に私は驚きを隠せなかった。
「…進藤さん、何で?」
彼女の姿を目にした時、血の気がサーっと引いた。
(そう言えば、進藤さんも翔太先輩のこと…)
「ちょっと、沼田さん来て!」
「君!何をするんだ!」
目を潤ませてキッと翔太先輩を睨みつける進藤さん。
「っ!」
その形相に翔太先輩も黙ってしまう。
進藤さんは、私の腕を強く引いて引きずるように歩かせた。足がもつれそうになるのをなんとか避けて姿勢を正しながら歩く。
「痛い!痛いってば!」
進藤さんは、私が痛がるのを無視して人気のないところへと移動した。
掴んだ腕の力を緩ませたと思ったら、再度力を入れてバッと怒りの力で私の腕を払った。
(痛い…)
私は痛い腕を手でさすった。
「…痛かった?」
進藤さんは、私の方を振り向きもせず聞いてきた。
「うん」と短く返事をした。
「痛かった…よね。でもさ、私の痛みに比べたら全然痛くないよねー!」
進藤さんの声はガタガタと全身を震わせながら、強く私に言い放った。
再び恐怖を感じた私はうつむいてしまう。
(怖い…)
重苦しい空気が流れる。
振り向いた進藤さんの顔は誰にも見せられないほどひどい顔だった。怒りと悲しみを物語っている。
「ひどいよ!沼田さん!私の気持ち知っておきながら、コソコソ翔太先輩に会うなんて!」
「違うよ!それは誤解で…」
「誤解?」
「教室に来たら、足音がしてドア開けたら翔太先輩が来てて…」
「は?何で翔太先輩が直々に沼田さんに会いにくるのよ!密かに会う約束でもしてたんでしょ!?違う!?」
進藤さんの感情任せの機関銃攻撃を私は喰らった。
「…違うってば。ほんとに偶然で…」
「偶然?そんなわけないじゃん!私、信じない!裏切った人間をどう信じろっての!」
大声で怒鳴り散らす進藤さんの声を聞き、朝練をしていた生徒たちがこちらに視線を向けた。
「おい、何してんだ?喧嘩か?」
「やめろよ、相手にしない方がいいぜ。」
「朝から修羅場かよー、ウケる。」
「先生呼んだほうがいいかな?」
ヒソヒソと聞こえてくる声に私は田辺やあの5人からいじめられてた記憶がフラッシュバックした。
(もうやめて…。)
泣きべそをかいていた私は進藤さんに何も言えない状況だった。
「ねえ?あの時、翔太先輩に何言おうとしたの?」
進藤さんが息を整えて私に問う。
「あの時…?」
「だって翔太先輩のこと、好きだからって言おうとしたんじゃないの!?」
進藤さんに言われた言葉で、あの時を思い出した。
"だって翔太先輩のこと!"
その後に続く言葉は…。私はハッとして自分の気持ちが溢れそうだったことに気づいた。
"好きだから!"そう、そう言おうとしたかもしれない…。勢いで告白してたかもしれない。いや、100%に近い確率で…。
あんな弱った先輩を目の前にしたら守りたくなる。だからって!
私は自分にそんなエネルギーがあるなんて信じられなかった。でも、あったのだ。
私は進藤さんの目を見てこう言った。
「違うよ。」と。私は自分にも進藤さんにもそして、恋焦がれてる翔太先輩にも嘘をつくことになった…。
嘘の始まり
「違う?」
「うん。」
まだ私を信じられない進藤さんは、私を疑いの目を向けた。
「じゃあ、何で沼田さんは翔太先輩と…」
会ってたかって聞きたいのね、分かったわ。
私は進藤さんの言葉を遮ってこう言った。
「翔太先輩、告白されたんだって。」
これは嘘じゃない。
「え?」
「それでね、告白されたけどどうしようって悩んでたの。」
これも嘘じゃない。
「それで?」
「でね、私が言いたかったのは…」
「言いたかったのは?」
少し大人ぶって私は進藤さんを見て
「だって私、翔太先輩のこと応援してますから。」
目の前にいた人物に私は驚きを隠せなかった。
「…進藤さん、何で?」
彼女の姿を目にした時、血の気がサーっと引いた。
(そう言えば、進藤さんも翔太先輩のこと…)
「ちょっと、沼田さん来て!」
「君!何をするんだ!」
目を潤ませてキッと翔太先輩を睨みつける進藤さん。
「っ!」
その形相に翔太先輩も黙ってしまう。
進藤さんは、私の腕を強く引いて引きずるように歩かせた。足がもつれそうになるのをなんとか避けて姿勢を正しながら歩く。
「痛い!痛いってば!」
進藤さんは、私が痛がるのを無視して人気のないところへと移動した。
掴んだ腕の力を緩ませたと思ったら、再度力を入れてバッと怒りの力で私の腕を払った。
(痛い…)
私は痛い腕を手でさすった。
「…痛かった?」
進藤さんは、私の方を振り向きもせず聞いてきた。
「うん」と短く返事をした。
「痛かった…よね。でもさ、私の痛みに比べたら全然痛くないよねー!」
進藤さんの声はガタガタと全身を震わせながら、強く私に言い放った。
再び恐怖を感じた私はうつむいてしまう。
(怖い…)
重苦しい空気が流れる。
振り向いた進藤さんの顔は誰にも見せられないほどひどい顔だった。怒りと悲しみを物語っている。
「ひどいよ!沼田さん!私の気持ち知っておきながら、コソコソ翔太先輩に会うなんて!」
「違うよ!それは誤解で…」
「誤解?」
「教室に来たら、足音がしてドア開けたら翔太先輩が来てて…」
「は?何で翔太先輩が直々に沼田さんに会いにくるのよ!密かに会う約束でもしてたんでしょ!?違う!?」
進藤さんの感情任せの機関銃攻撃を私は喰らった。
「…違うってば。ほんとに偶然で…」
「偶然?そんなわけないじゃん!私、信じない!裏切った人間をどう信じろっての!」
大声で怒鳴り散らす進藤さんの声を聞き、朝練をしていた生徒たちがこちらに視線を向けた。
「おい、何してんだ?喧嘩か?」
「やめろよ、相手にしない方がいいぜ。」
「朝から修羅場かよー、ウケる。」
「先生呼んだほうがいいかな?」
ヒソヒソと聞こえてくる声に私は田辺やあの5人からいじめられてた記憶がフラッシュバックした。
(もうやめて…。)
泣きべそをかいていた私は進藤さんに何も言えない状況だった。
「ねえ?あの時、翔太先輩に何言おうとしたの?」
進藤さんが息を整えて私に問う。
「あの時…?」
「だって翔太先輩のこと、好きだからって言おうとしたんじゃないの!?」
進藤さんに言われた言葉で、あの時を思い出した。
"だって翔太先輩のこと!"
その後に続く言葉は…。私はハッとして自分の気持ちが溢れそうだったことに気づいた。
"好きだから!"そう、そう言おうとしたかもしれない…。勢いで告白してたかもしれない。いや、100%に近い確率で…。
あんな弱った先輩を目の前にしたら守りたくなる。だからって!
私は自分にそんなエネルギーがあるなんて信じられなかった。でも、あったのだ。
私は進藤さんの目を見てこう言った。
「違うよ。」と。私は自分にも進藤さんにもそして、恋焦がれてる翔太先輩にも嘘をつくことになった…。
嘘の始まり
「違う?」
「うん。」
まだ私を信じられない進藤さんは、私を疑いの目を向けた。
「じゃあ、何で沼田さんは翔太先輩と…」
会ってたかって聞きたいのね、分かったわ。
私は進藤さんの言葉を遮ってこう言った。
「翔太先輩、告白されたんだって。」
これは嘘じゃない。
「え?」
「それでね、告白されたけどどうしようって悩んでたの。」
これも嘘じゃない。
「それで?」
「でね、私が言いたかったのは…」
「言いたかったのは?」
少し大人ぶって私は進藤さんを見て
「だって私、翔太先輩のこと応援してますから。」
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