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片思い

日向葵

8話 翔太先輩と昔話

待ち望んでいた昼休みはもう10分も過ぎていた。
沼田智奈美は走って約束したあの場所へと向かっていた。昼食も食べていないが、翔太先輩に会いたい一心だった。
着いた!あ!
桜の木を眺めている男子生徒こそが彼だった。

「翔太先輩!」
名前を呼ばれて振り向く翔太先輩は約束したあの場所で待っていた。
「お、遅れてごめんなさい!」
走ってきたとは言え、もうとっくに昼休みに入っていた。
「どうしたの?待っても来ないから心配したよ。なんかあった?」
(心配してくれたんですね、私のこと…)
ドキッ。
鼓動が跳ね上がる。
何だろう?動悸が…
ああ、走ったからかー…
それもあるけど…違うような…

「担任の先生に呼ばれてて…あ!あのー、実は…」
私は翔太先輩に事の経緯を説明した。
園崎さんを除く4人は謝ってくれた事に翔太先輩は「そうなんだ。良かったね」と言ってくれた。
だが、園崎さんは相談室から出て行ってしまい謝らなかったことに関しては頭を悩ませてしまった。
「園崎さんは私のことが嫌い…みたいなんです」
私は下を向いて静かにその言葉を発した。
翔太先輩はふぅーと息を吐き、「そっかー」とだけ呟いた。
「華恋は素直になれてない…かー」
何気なく言った翔太先輩の言葉に私は驚いた。
(今、華恋って言った?もしかして2人って…)
私は怪しい雲行きを感じつつ、翔太先輩のことを見た。
「華恋に言ったんだけどなー。素直になれよって。あいつ、小さい頃から突っ張ってるからな〜。はぁー、やれやれ」
翔太先輩はやや呆れつつ空を眺めて園崎さんの話をした。
「華恋とは華恋が小さい時からの付き合いでね。まぁ、幼馴染っていうのかな。俺にとっては妹みたいなもんでさ」
淡々と話をするが私は耳を塞ぎたいようなでも、聞かなきゃいけないような複雑な気持ちになった。
「家が近くてガキの頃はよく遊んでたなー。近くに公園があってよく行ってたんだよ、俺と華恋と礼治で!」
(礼治…ああ、もしかして園崎さんのお兄さん…そうなんだ。)
昔話をする翔太先輩は陽気に、でもどこか切ない様子だった。
「そんで、その公園で遊んでた時、華恋がボールをある女の子に間違えて当てちゃってさー。もう、当てられた子は大泣き!俺も大泣きされて驚いたわ〜。でも、華恋はその子をただ見てるだけだったんだ」

あ!何となくわかる気がする。

「当てられた子の母親がついに現れて、華恋にごめんは?って俺と礼治が説得するんだけど、ボーッと突っ立ってる方が悪い!って言ったんだ。」

あ〜、それもわかる気がする…

「俺はわざとじゃなくてもボールが当たったんだからちゃんと謝れって言ったら、ムスッしてさー。だから、代わりに俺と礼治が謝ったんだ。そしたら、当てられた子の母親は優しくて、ちゃんと見ていなかった私の不注意でもあるから気にしないでねって言ってくれたんだ。いい人だろう?」
どや顔する翔太先輩でもあり、少年のように笑う翔太先輩に私もふふっと笑った。
「でも華恋は一切謝らなかったんだ。私は悪くないの一点張りで!」
翔太先輩は大袈裟にため息をついてこう続けた。
「だから、素直になれ!お前なら出来るだろう?って言ったんだけど…ダメだったか〜。俺の言葉なら届くと思ったんだけどなー。」
翔太先輩は残念そうにまた大きなため息をついた。
そうだったんだ。昔から園崎さんは変わってないんだー。
「そうなんですか…」と私は翔太先輩に言い、「俺からで悪いけど、ごめんねー」と謝ってきた。
「いえいえ!先輩は謝ることしてないですよ!その、園崎さんとは…今も付き合い深いんですか?」
私はよそよそしくもでもはっきり伝えた。
「華恋?うーん。近頃は俺も礼治も忙しくて前みたいに一緒につるんでどっか行くこと減ったなー。でも、何で?」
翔太先輩はキョトンとした表情で私に尋ねた。
「いや…仲良しなのかなーって。名前で呼んでるくらいですし…」

(これじゃあ、なんだか私がヤキモチ妬いてるみたいに聞こえる?恥ずかしいっ!!)

私は内心ジタバタしながらも翔太先輩の言葉を待っていた。
「それは幼馴染だから。ほら、礼治だって先輩だけど、呼び捨てだし、俺!あ!でも、学校内ではちゃんと先輩って呼んでるけどね!じゃないと礼治、怒るからさ〜!おい、俺は先輩だぞっ!ってな」カラカラと笑う翔太先輩につられて私も笑ってしまった。

(そうなんだ…幼馴染だからかー)
私は内心ホッとした。

もしこれで、「実は俺の彼女!」とか言われたら一気に失恋になるとこだった。
私を見るなり翔太先輩は「華恋のこと、よろしくなー。本当は悪い子じゃないからさ。」と言われたが私は複雑だった。
私は嫌われるのに…と内心呟いたのを翔太先輩に見破られた。
「多分、嫌われてるって思ってんのは華恋も同じかもよ?気にしないで。」と言われて少し気がほぐれた。

(お互い嫌われてるって思ってんのは辛いな…)

私は園崎さんの見方が若干変わったような気がした。

キーンコーンカーンコーンと予鈴がなった。

「あ!やば!予鈴鳴っちゃったね!戻ろっか?」
翔太先輩と話をしてるとあっという間に時間が経ってしまい、ちょっと寂しくなった。
そんな私を気遣ったのか、歩き始めた足をピタッと止めてある紙を差し出した。
そこには翔太先輩の名前と電話番号、メールアドレスが書いてあった。
「俺のケー番とメアド書いといたから、いつでも連絡して!じゃあ、ここで!」
言いたいことだけ言って翔太先輩は前と同じで校内に消えていった。
私は今何が起きているのか現状把握するだけでいっぱいいっぱいだった。
(え?うそ!?先輩とメール出来る!また話せる!やったー!)
飛び跳ねるほど嬉しくて、さっきまでの雲空があっという間に晴天になった。

舞い上がっている私を遠目に鋭い視線を浴びせる人がいたとも知らずに…

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