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片思い

日向葵

1話 出会い

朝から男子に冷やかされ、女子から冷たい言葉を浴びせられてから私の1日はスタートした。
授業はボーッとしてて受けてるけど内容が頭に入って来ない。
なぜなら問題の田辺が隣の席だからだ。隣の席から熱い視線が嫌でも伝わってくる。
ジロッと私が睨むと目があったと勘違いして大袈裟に顔を覆い隠す。
(どうでもいいけど、マジでウザいわ…)




そもそも何で田辺がこんなにも私にからかい始めたのかというと、ある噂が噂を呼んだ。
ー沼田智奈美は田辺亮介が好きらしいーというとんでもないデマが…。
その噂を流したのはなんと、田辺亮介本人らしいという噂もある。つまり、田辺亮介は自分が注目されたいがために私を利用した。
私、沼田智奈美は田辺とは全く喋ったこともないしそもそもそんなに接点がない。私が唯一、田辺との接点があるとしたら落ちた消しゴムを拾ってもらい、お礼を言ったことくらいだった。
お礼を言われた田辺は、自分に好意があると多大なる勘違いをしたんだろう。




大袈裟に顔を覆い隠す田辺に呆れて(はぁー、バカなの?)と私は心の中でため息をついて、先生の話に集中させた。
キーンコーンと授業の終了を告げるチャイムが鳴った。
(終わった。ある意味解放される…)
「では、授業を終わります。来週、小テストするから、復習しとくように」と先生が言うのをブーイングする声が飛び交う。
私はそんなブーイングを言ってああだこうだと喚く人たちを潜り抜け教室へ出た。
(はー、やれやれ。終わった…相変わらずしつこいなー。他の女子にやればいいのに)と思い、トイレから教室に戻ろうとした時だった。
「ちょっと、話あんだけど。」
私?何でしょうと言おうとしたが、その前に連れて行かれてしまった。
着いたら体育館の裏。5人の女子たちが私を囲い、「調子乗ってんじゃねーよ!」「お前みたいな地味なんか最初から遊びなんだよ!」など言われ暴行を受けた。
足で蹴られ、投げ飛ばされ、最後には砂をかけられた。
「汚ー!笑笑」、「マジウケるー!」とケラケラ笑っていた。
それでも何もしない私。抵抗しないのが気に入らない私に怒りが奮闘するのか、胸ぐら掴んで「大人しくしてればいいんだよ!」と捨てゼリフを吐き、私を更に投げ飛ばした。
頭がボーッとする。何度も投げ飛ばされ何にも考えられなくなっていった。
ゲホゲホと咳をして、私は体制を整えようとするが力が入らない。勝手に頬に涙がつたってきたのが分かった。
(や、やめてよ。もうこんなとこ、早く消えたい。誰か、誰か助けて!)と私が心で叫んだ。
「おい!ここで何やってんだ!」と誰かの声が聞こえた。私を囲っていた5人の女子たちは「ヤバ!早く逃げよう!」とその場を離れていった。
私はぐちゃぐちゃになった髪を手で整え、泣いてる顔を見せまいと下を向いて教室に戻ろうとした。だが、身体に力が入らず、その場に倒れた。
倒れた私に駆け寄り、身体がふわりと浮いたように思えた。
「君、大丈夫?」
目を開けると、見知らぬ男子の顔があった。私の手を取ってくれたが私は彼にもたれかかるようになってしまった。私の身体を支えて彼はこう言った。
「さっきの人たちにやられたの?名前は?あいつら、俺、知ってるやつだから、先生に伝えとくな!」
そう言って私を負ぶって保健室まで連れて行ってくれた。
保健室について、養護教諭は私をみて驚いていた。どうしたの?とその男子生徒に問ている姿をみて私の記憶は途切れた。



次に目を開けたら、もう午後の1時を回っていた。飛び起きようとするが痛い…。
(あれ?足、手当てされてる。なんで?)
気づけばここどこだっけ?と自分がどこにいるのか分からなかった。
(えーと、確か体育館の裏に連れて行かれて…それで…)と記憶を辿っていたら、ベッドの傍に見知らぬ男子生徒が顔を埋めて寝ていた。
(この人誰?なんでいんの?)
私が驚いていると、養護教諭が顔を覗かせた。
「目覚めた?大丈夫?びっくりしたわよ、その子があなたを負ぶってきた時は!何があったか言えそう?」
私はその言葉にだーっと涙が出た。もう止まらなかった。久しぶりに声を上げて泣いた。
わーわー泣いてる私をみて更に驚いて養護教諭は「辛かったのね」とティッシュ箱を渡してくれた。
私が頷き少し泣き止まなきゃと落ち着かせようとした時、ギュッと誰か抱きしめた。 
私を負ぶってくれた彼だった。私はびっくりして、ぴたりと涙が止まった。養護教諭はその空気を読んだのか、その場をそっと離れた。
私は恥ずかしくなって離れようとするが男子の力は強くて離れてくれなかった。その後、そっと私を離した彼はやっぱり見知らぬ人だった。その人は「ごめんね、痛かった?」と私に詫びた。私は視線をそらし、コクっと頷いた。そして、「でも、ありがとう」と小声で言った。ボソっと言った言葉だからどうせ聞こえないやと諦めていたが、「ううん、あ、そうだ。このこと先生に伝えといたから。」
その言葉で私は何があったのか全部記憶が蘇り、ばっと彼に振り向いた。
「何で?何でそんな勝手なことしたの?良かったのに…。私さえ我慢すれば済むことじゃん!なのに何で…?」
その言葉に彼は、「お前バカだな。あんな奴らをなんでかばうんだよ?」と少し怒っていた。
だってまた私が嫌な目に遭うじゃんと言いかけた時だった。
彼はまた私をギュッと抱きしめ、「もしまたあんなことあったら、俺を頼っていいからさ。な?」と言った。
私はなぜか彼にはすんなり受け入れられた。「うん」と言った自分の声に驚くこともなかった。
私は彼の温もりが心地よくてずっと抱きしめてほしいと思った。
初めて会ったばかりなのにどうしてこんなにホッとできるんだろうと私は内心思い、彼の温もりに浸っていた。

これがあなたとの出会いだったね。

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