PROMINENCE

第25話 組手





アポカリプスの中。
大きな城の外に桐咲歩夢の姿はあった。

座禅し、静かに瞑想する。

魔力を練りながら周りに神経を張り巡らせる。


静かに──

ただ静かに──



──チャキッ─


「!!」


  微かな音を頼りに歩夢は飛び跳ね、後ろを振り向く。


ブンッ──


スレスレの所で刀が振り下ろされ空を切り裂く。

「音ではなく気配を感じろ」

目の前のアマテラスからでは無く、後方からの男の声に歩夢は驚き全身を使い高速で振り返る。

ギンッ!!

刀と槍が激しく衝突し、火花を散らす。

「反応は中々だが、それだけじゃああめぇぞ?」

クーフーリンは空いている左手を大きく広げ、構えを取る。

その瞬間、先程まで存在しなかったもう1つの槍が姿を現し歩夢へと襲い掛かる。

「『穿ツ弐又ノ角矛ホーンレイピア』!!」

「シッ!!」



──ガキィン!!


二又の槍は砕け散る。
 咄嗟に歩夢はゲイボルグを受け流し、そのまま斜め上から刀を振り下げ槍を打ち砕いたのだ。

「へっ、初級魔術程度ならあっさりか?」

  まるで楽しんでいるかの様に、飄々とし笑みを浮かべるクーフーリン。
それに相反して、歩夢は肩で息をする。

今ので集中力が切れてしまったのであろう。
足はガタガタと震え、息は絶え絶えである。

「30秒くらいが限界かの」

「神との組手で、そんぐらい生きられりゃあ上出来だろ?」

「限界まで力を抑えたであろうが…」

やれやれと首を振り、アマテラスは歩夢へ刀を向ける。

「本気で魔力を練り続けて30秒。セーブしても5分程でバテてしまうぞ?」

  魔力を練り続けて動くだけでも、集中力等が必要であり精神がゴリゴリと削れてゆく。
それに加えて肉体的疲労もあるせいで、途中で集中が切れてしまう。
その為に特訓を繰り返しているのだが…。

「この1ヶ月、ずっと放出系の特訓とかばっかだったけど。
こんなゆっくり修行していて良いのだろうか」

  刀術を教えて貰ったのもここ最近。
美鈴さんからの宿題は放出系の魔力を極める事。
毎日同じ事を、ただひたすらに繰り返しているだけ。
正直、強くなっている実感は無いんだがけど…。

「魔術は基礎をしっかり覚える事が大切なのじゃ。
美鈴殿の特訓は理にかなっておる」

「いつ敵が来るか判らないなら、1点に集中して特化する方が効率は確かに良いしな」

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