PROMINENCE

第8話 生還


  外に出ると日は暮れていた。




  何とか國信田達との戦いから逃げ延びた歩夢と烏丸は、敵を薙ぎ倒しながらも出入口まで辿り着き外へと出たのだ。

  そして逃げる為の手段として車を確保する為に、横に備え付けてある自動車庫へと足を運んでいる最中である。


「遅かったな」


「!?」


  急に後ろから声がした為、歩夢は驚いて振り向きながら構えを取った。

しかし声の主は直ぐ傍に居たらしく、そのまま勢いでぶつかり尻餅をついた。

「痛てて…」

「すまんな。大丈夫か?」

  指し伸ばされた手を咄嗟に掴んでしまってから後悔したが、その手は優しく歩夢を引き起こしてくれた。

「あっ、ありがとうございま…?!」

  お礼を言おうと顔を上げると、目の前には大きな髑髏の仮面を被った高身長な男がそこに居た。


「すまないな。驚かせてしまった」

  少し焦った動きをしながら、髑髏仮面はゆっくりとマスクを外す。

  金髪で美形な顔があり、マスクを外したせいで美声が明らかになった姿がそこにはあった。

「真人!!無事に脱出出来たのか!!」

「あぁ、他の奴等も各自別ルートで逃走している」

  嬉しそうに肩を組み、烏丸は真人と呼んだ人物の胸板を軽く小突く。

それを受け入れてる辺りから、随分と親しい関係なのだと歩夢は理解する。

「アポカリプス…開いてしまった様だね?」

「あぁ、すまん。止められなかった…」

「仕方が無いよ…実は違う支部でも、何件か実験で発動された形跡と証拠を入手した。
今から逃げながら説明する。車に乗ってくれ」

「解った」

「えっ…?」


  そう言うと、真人は駐車場から車を出し扉を開け二人を乗せる。

歩夢は話に付いていけず混乱していたが、半ば無理矢理乗せられ連行。


  廃墟の門を抜けた所で、真人は懐から何やらボタンのついた筒状のモノを取り出し。
それを何の躊躇も無しに押した。





ドカァァァァァァァァァァァァァン!!!!




  大きな音と衝撃が後ろから響き渡り、3人が乗っている車を激しく揺らす。


「なっ!?」

「真人、お前随分と派手にやったなぁ」

「入口潰しとけば追手も直ぐには来れないでしょ?」

  得意げに鼻を鳴らし、真人はバックミラーで後ろを確認する。

助手席に座っていた烏丸と、後部座席に座っていた歩夢も後ろを振り向き確認をする。

  確かに、先程出て来た門は土煙を上げて崩れていた。

それを見た烏丸は「ざまぁねぇな」と高らかに笑い。

それに釣られて真人もケラケラと笑い出す。

「さて、積もる話も有るだろうが。それはまた明日にでもしようか」

  車を走らせながら真人さんは事件の話に触れるのを止めた。

確かに、今日1日で散々な目にあったし。

体中から力が抜けるかの様に怠い。


「魔力を使い過ぎたな。
取り敢えず家まで送ってくれ」 

「了解。家まで案内よろしくね? えっと…」

「桐咲 歩夢です…」

  疲れを意識し始めたら、喋るのすら辛く感じて来た…。




暫く海岸沿いを走り、町方面まで戻って来るとそこからの道先を軽く説明する。


「しかし、追手が来ねぇのは気持ち悪いな」

「来ないのでは無いよ、来れないんだ。
今この車は特別な術式を組み込んであるからね」

「『追尾遮断魔術アウトダッシュ』か?
中々古い魔術だろ?見付からないのか?」

「そうでも無いさ。逆に新しい魔術や魔法と違い、下準備が面倒な分 安定して持続効果がある。」


  二人の会話を朦朧としてる意識の中、何とか聞き取っていると。

目的地に着いたらしく、車は停車する。

「中々な豪邸だねぇ」

「ありゃ、ホントすげぇ大きさだな」

  二人は車から出ると、大きな屋敷に面食らった顔をする。

俺も車から何とか降りると、入口の前に立ちドアを開ける。

「中まで入れるかい歩夢くん?」

「何とか…。中に入って行きませんか?」

「いやいや、一人で入れるなら大丈夫。オレ等も今から寄る所があるからね」

  一応、恩人なのだから礼くらいはと思ったんだけどな。

烏丸はメモを取り出し、歩夢に渡すと周りをキョロキョロと見渡す。

「明日にでも挨拶に来るよ。これ連絡先ね」

  中を覗くと烏丸啓吾と書かれ、電話番号が記載されていた。

「分かりました。今日は休みますね」

「それが賢明だね」

  真人さんはそう言いつつ肩に手を添えて、体制が不安定だった俺を支えてくれた。

「ありがとうございます」 

「それじゃあ、また」

  二人は一瞥して車に乗ると、軽く手を振りながらその場を後にする。




俺は家の中に入ると、直ぐに布団に入り爆睡してしまった。




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