PROMINENCE

第2話 冷徹な

  冷たい。

暗い意識の中で、何かが頬に触れている。

「き…ろ…」

  微かに何かが聴こえて来る。

そして次の瞬間、覚醒しかけていた意識が猛烈な腹部の痛みで現実へと引き戻される。


「げほっげほっ…げほっ」


  身体の中の空気が一気に抜け、新しい空気が身体へと入って来る。

それは若干温く感じられ、体中の寒さを少し和らげてくれる気もした。

  そして、頬の冷たさの原因が地面に顔を埋めていたせいだと要約理解出来たのだ。

「起きたか新入り」

「あ…んたは?」

ジャラッ!!

  目の前に居る無精髭の男性に、先程まで朦朧としていた意識を集中させ問おうとしたが。
何かに腕を引っ張られ、地面に尻餅を着いてしまう。

「っ、 なんだこれ? 鎖?」

「気い付けろ。あんまり音を鳴らすと見張りに気付かれるぞ。」

  男の言葉に、要約自分が置かれた立場を理解する。

鎖に手錠という拘束具と、薄暗く周りが鉄の部屋。

「閉じ込められた…?」

「正解だ」

  男はしゃがんでいた体制から立ち上がると、中々の高身長だった。

優に190近くはあるであろう。

顔は痣だらけで、髪はボサボサ。

長く監禁されていたのであろう。

烏丸  啓吾からすま  けいごだ。宜しく」

  にこやかに語り掛けて来る。

この人は信用出来るのか?状況から考えて同類っぽいけど。

「…桐咲 歩夢です」

  何とか、横たわった状態から座る事に成功した。

さっきは咄嗟とっさに引っ張られたからだと思っていたけど、身体の節々が動き辛く力が入りにくい。

「あんまり動くな。深呼吸して横になれ」

「えっ、何で?」

  烏丸さんの言葉の意味を理解出来ずに問い掛けると、少し間を置いて応えてくれた。  

「…変な薬品とか吸ってしまっていたら事だからな。
少しでも身体から出しとくんだ。」

  成程、確かにそうかもな。
俺は言われた通りに横になり、何度か呼吸を深く吸う。

  少しずつ楽になった様な感じはしたが、まだ力が入り辛い。



ガチャッ。



  重いドアが開く音と共に、外の光が差し込む。
眩しくて目を細めて開けた人を見ると、その顔には見覚えがあった。

少女達を誘拐していた犯人の1人だ!!


「よぉ、被験体。目が覚めたか?」

  不気味にニヤリと口角を上げ、男は俺の前に歩み寄る。

ドンッ!!

その瞬間、左肩に強烈な痛みが走る。

「ぐぁっ?!」

  痛みで蹲りうずくま、地面を転がる様に距離を取る。

俺が距離を取った事で、もう1度蹴りを入れようとした男の足は地面を蹴り上げてしまう。

「うぉぅ?! この糞ガキィ!!」

  危ねぇ。もう少し遅かったら左肩外れてたかも知んないぞ。

「ちっ、連行する前に少し遊んでやろうと思ったが。
骨の2〜3本は覚悟して貰おうか。アァ?」

  男はそう言うと、俺の胸ぐらを掴んで持ち上げる。

軽々と持ち上げるその腕は熊の様に太かった。

こりゃあ、小学生じゃ抵抗出来ないハズだ…。
てか、大人でも対処し切れないだろ。

「この…熊野郎!!」

  何とか蹴りが男の腹部に当たる。
しかし、それは大して効果は無かったらしく。
男の怒りを余計に買っただけの様だ。

「一般人のクセに、この俺様に抵抗してんじゃ…ねぇよ!!」


ドスッ!!


  重たい衝撃が腹部を襲う。
まるで鈍器で殴られてるかの様に硬く重い。

「喰らいやがれ!! 『氷塊の一アイス・ド・ブロ』ぶぅ?!」

  刹那、男は後ろに急に引っ張られるかの様に倒れ。
俺は地面へと放り捨てられる。
てか、この短い間にどんだけ地面に頬擦りするんだ俺。

  咄嗟に目を瞑っていたせいで何が起こったかは分からなかったが、男の方を見遣るとそれが何故起こったのかを理解した。

「烏丸さん…!!」

  いつの間にやら背後に回っていた烏丸さんが、男の首に手錠から延びている鎖を引っ掛け、後ろへと引っ張り上げたようだ。

その勢いで男は手を離し、後ろへと吹っ飛んで行ったのだ。


「大丈夫かい歩夢?」

「何とか…」

「そうかい。取り敢えず此処から脱出しよう」

「いや、でもこれ…」

  ジャラリと音を鳴らし、今も尚手錠から延びている鎖を見せると、烏丸さんは笑顔で何かを取り出す。

それは、銀色に輝くシンプルな飾り気の無い鍵であった。


「ついでに盗んどいたんだ」

  得意気に言うと、鍵穴に鍵を入れ少しガチャガチャといじくる。

カシャンと音を立て、手錠はスルりと手首から離れて行く。



「さぁ、今の内に行くよ!!」


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